二日目 冒険者達と胸と喧嘩と説教と
はい、ご飯食べるまでにどんだけかけてんだって感じなのに肝心のところはカットになりました。申し訳ないです。そして、昨日は投稿できなくてすみません。今日はかけたんで許してください。
「ごちそうさまでした」
あのあとルーシーさんにご飯を作っていただきました。
肉、魚やパンなど、どれもとてもおいしかったですが、一番おいしいかったのは野菜と豆でしたね。
どれもこれも美味しくてついおかわりまでしてしまいました。やっぱり食事はいいです。
昨夜からずっと食べてはいますけど、野宿をしていたときの、あのほとんど量もなく、温かくもない保存食はもうこりごりです。
「……そのごちそうさまっていうのも、なんかの習わしかなんかなのかい?」
「そうです。これも兄から教えてもらったもので、食材や作ってくださった方たちに感謝をするというものらしいです」
ついでに、いただきますについても聞かれました。やっぱり不思議なんでしょう。
まぁ、私だってよくわかっていないですし。
「へぇ、感謝を言葉で表すのか……それはいい風習だねぇ。私も真似をしてみようか」
「面白そうだな」
「面白がってやるもんでもないだろう」
あれ、思ったよりも反響があります……?
兄が広めようとしてたのに、私の村では私と兄しか使わなかったのに……。まぁ、広める良い手伝いになったと思えばいいですかね。
「まぁ、ということでとてもおいしかったです。ルーシーさん。ありがとうございました」
「わたしも久しぶりに食べましたけど、とてもおいしかったです」
「こちらも、おいしそうに食べてもらえて嬉しかったよ。それでお代だが」
あ、忘れてました。私ただでさえそんなお金がないのに……足りるとは思いますけど、今後の金策とかも考えないといけないですね。
「ざっと二銀貨だな」
「二銀貨ですね……」
結構苦しいですが、あれだけおいしいものをいただいたんです。この出費は仕方ないです……。
なにかないですかね? お金を稼げる方法……。
「ちょっと待ったー!!」
袋からお金を取り出そうとすると、タクさんがいきなり立ち上がる。
「な、なにかありましたか?」
「さっきは俺のせいで迷惑かけたからな。ここは俺のおごりってことでどうだ? もちろんリリィの分も払う」
「さっきのことなら別にいいですよ? 別に迷惑だとは思っていないですし……」
びっくりはしましたけど……。
「いや、俺にも漢の意地ってもんがある。好きな女困らせといて、何もなしじゃそれこそ漢として終わっちまう」
「……では、今回はお願いしてもいいですか? 実は私、今はあまりお金に余裕がなくて……」
「任せろ、まぁこんなもんなら冒険者の俺には余裕だしな」
……やっぱり冒険者っていうのは儲かるんですか。どんななのか少し気にはなりますね……。
「ただし、これで今回のことはチャラってことでお願いしますよ? あんまりそれについて言われても困ります」
「おう、流石は俺の見惚れた女は違うぜ」
親指を立ててすっごい笑顔をしてくる……いや、ほんと恥ずかしいんでそういうのやめてください……。
真正面から見惚れたとか言われたら誰だって照れると思うんですよ。
ルーシーさんとか笑ってますし。
******
会計を済ませ、席を立ち出口へと向かうと後ろから声を掛けられる。
「あの……ソラさんですよね?」
「はい、ソラですけど、あなたは……?」
話しかけてきたのは、少しおどおどした二十代くらいの緑を基調とした髪で目を覆っている女性。
何よりも目につくのはその体からぶら下がっているひたすらに自己主張をしている二つの”もの”でしょう。しかも、ローブのような服装でただでさえ大きい、その主張を増やしているという……。
……なんって柔らかそうな、今すぐにでも飛びつきたいです。いや、ダメです。私が今やろうとしているのは、全世界の男の人が我慢してきたこと。
今は堪えるのです私……。
「初めまして……! えっと……私は、すぐそこのギルドで受付をしています。ユワと申します……。あの、私……新しく人が来たって聞いて……気になっちゃって……すぐそこにいるって聞いて……それで……」
両者目が合わないような顔の向きのまま会話を続ける。確実に周りから見たら変な二人組になっています。しかしですよ。これはダメです……目を合わせて話すことができないです。いや、まぁ目が隠れているんでどちらにしろ無理なんですけど……。
「ユワさんですね……ちょうどよかったです。私、今村の方々への挨拶とかもしていたんです……。旅人のソラです。お願いしますね」
「は、はい! お願いしましゅっ!?」
あ、見事なくらいに舌噛みましたね……痛そうです……。
ユワさんは見事に何かの芸なのではと思わせるくらいに舌を噛んでうずくまってしまいました。
「……大丈夫ですか?」
「大丈夫です……」
「とりあえず、落ち着いてください。えーと……水でいいですかね?」
コップを一杯カウンターにいるルーシーさんからもらうとユワさんの元へと行く。
水を作り出し、手渡すとおずおずとしたままそのコップを受け取ってくれる。
「水の創造。はい、これ飲んで一旦落ち着きましょう」
「……すみません。ありがとうございます」
「少しは落ち着けましたか?」
「……はい、ありがとうございます。すみません……初対面の人だとどうしても……慣れてきてもそんな変わらないですけど……」
「それで……私に何か用でもありましたか?」
「……は、はい! そうなんです!! えっとみたところソラさんは魔法使いのようでしたので……ぜひ、冒険者になりませんか!?」
前かがみになって、腕を前にする。そのせいでか、ただでさえ強調されて止まないものが、勢いよく、弾むようにこちらへと迫り、揺れる。いやぁすごいです。つぶれて変形しちゃってます。これほどのものはめったに拝めなさそうです。いいものを見れました。つい、手が勝手に伸びてしまいそうです。
「冒険者ですか?」
私、魔法使いとはいっても別に冒険がしたいわけでも、魔物と戦いたいわけでもないんですよね……。
むしろ、安全に暮らしてたいです。緊急事態ならともかくとして。まぁそれでも、戦うのは好きですよ、運動になりますし。
「私は…………」
「んな嬢ちゃんには無理だ」
断ろうとした瞬間、後ろから急に遮るように声が聞こえてくる。
「……誰ですあなたは? 無理かどうかなんて分かんないじゃないですか……?」
振り返ると、かなり屈強な、精悍な顔立ちをした亜人と呼ばれる人種。肌全体が赤色をしており、顛には小さな角が生えている。 たしか、”オーガ”でしたかね? そんな名前の種族が立っていました。
「見りゃわかるさ、どう考えても戦闘向きの身体じゃねぇだろ。多少魔法が使えるだけじゃあこの世界は生きていけねぇんだよ」
「残念ながら、私はこれでもこの世界生き残ってきたんですよ。むしろ、昨今は魔法が使える人のが強いんです」
「んなもんは知ってらぁ、俺がいってんのは、嬢ちゃんみたいな舐め切ってる奴には無理だって話だ。お前みたいなのは、リリィみたく大人しくしょうもない仕事をしてりゃいいんだよ」
な る ほ ど 。
どうやらこの人は一度痛い目を見ないとわからないようですね。全力で後悔させてあげませんと……。
私の周りからはどす黒いオーラが出ていて、口角を上げ、笑っているように見えるのに、その顔はまったく笑っていなくて、簡単に言っちゃえば殺気を纏ってたでしょう。
しかし、仕方がありません。悪い子にはお仕置きが必要ですから……。
「あなただって、”多少”身体が大きいだけじゃないですか? むしろその身体だと早い魔物に”一瞬”でやられちゃいそうですね」
「……いいだろう相手してやる。外出ろや」
「恥かいても知りませんよ?」
ちょうどいいです。冒険に出てからあまり運動もしてませんでしたし、自分がどれだけ戦えるのかを知るチャンスでもあります。
普段だったらこんな挑発乗ってあげたりはしませんけど、今回に関しては別です。私の感に触るようなことを言ったこのオーガが悪い。相応の報いは受けてもらいましょう。
「ちょっと待ってください! ソラさん! トールさんも!! 一回冷静になってください!!」
リリィちゃんが全力で止めにかかるが、互いに一歩も引かない。それどころかソラはその覇気をより強く纏わせ、その眼には光がなくなっていた。
トールというのは多分、このオーガの名前でしょう。まぁそんな興味ないですけど。
「あっちが喧嘩売ってきたんです」
「あの女が喧嘩吹っ掛けてきたんだ」
「そういうことではなくー!」
******
「殺しはなし、それ以外はあり、動けなくさせるか、寸止めくらいだ」
「構いません」
「なんで二人ともそんな好戦的なんですか!? 考え直してくださいソラさん!! 相手はこの村で二番目に強いトールさんですよ!?」
ふむ、一応そこそこ強いんですね。まぁ、どんな奴でも変わりありませんけど。
むしろこの小さな村で二番目なんですか……どれほどの実力かはわかりませんけど、その一番の人の方が気になりますね。
「リリィちゃんこれだけ持っててください」
そういって、杖を渡す。戦いには向かないですから、じっとしててください?
(あいよ、俺のマスターなんだからあんな奴に負けんなよー?)
まさかあなたがそんな挑発をしてくるとは……もちろん負ける気はありませんけど、あとで覚えててくださいよ?
「そういえば、名前言ってなかったのかさっきから嬢ちゃんが言ってるが、俺はトールだ。今からお前を倒す男の名だ覚えておけ」
「私はソラです。そうですね私は優しいですから、せっかくですし今から倒される相手の名前憶えてあげますよ」
トールさんの顔が少し強張る。こんな簡単な挑発に乗って冷静を保てないのはどうかと思いますね……。
それでもしっかり周りを見てるから油断してるとこっちが足を掬われそうですけど。
「少しくらい聞いてくださいよ!」
「安心してくださいリリィちゃん。私これでも強いですから」
そういった途端、少し卑怯かと思われそうですが、相手が戦闘態勢をとる前に仕掛けにいく。いくら力がなくても速さなら体格的にもトールさんに負けることはそうそうないでしょうから。戦闘は先手必勝に限ります。
「穿て! 氷の槍!!」
魔法を唱え空中に槍を作り出していく。空中に待機させた槍は、私がその力を奮うと相手の四肢へと目掛けて凄まじい速さで放たれます。
が、その全てをトールさんの持っている大きな両手剣で薙ぎ払われてしまう。
体格のわりに動けるようですし反応が早いですね……。
「いきなり仕掛けてくるとはなぁ!! 嬢ちゃん!! なら次はこっちからだ!!」
体勢を低くし剣を持っている右手を除く全ての手足を地へとつける。こちらが身構えると、勢いよく地面を蹴ってそのまま突進してくる。明らかに剣を持って動けるような速度ではなく、すぐに距離を詰められれしまう。
ちょっ!! なんでそんなおっきな剣持っててそんな早いんですか!!
「くっ、出現せよ! 氷の壁!」
咄嗟に地面に手を付けて魔法を唱える。すると地面から氷で出来た厚さ一メートルはある壁が私の前に現れる。トールさんが振った剣は氷にはじき返され、氷にひびを作り出しました。
私は、入ったひびを見て驚きながら、相手の次の動作に備えます。
思っていたより動けそうですし、まずはあの剣をなんとかしないといけませんね……。
「ちっこれだから魔法使いってのは! ちょこまかとしやがって、うぜぇ!」
トールさんは両手で剣を構え、左足を軸にして、勢いよく剣を回転させて氷の壁を粉々に粉砕する。周りに飛び散った氷の破片がトールさんに刺さることはなくその強靭な肉体に跳ね返されてしまいました。
予想外の行動をされ一瞬身体が硬直してしまう。ですが、すぐさま切り替えて、次の行動へと移る。
そんなのありですかっ!? ……ですがっ動きが止まったのなら考えるより先に仕掛けるしかないです!
「まずは……速さで勝つ……。付与効果! 爆風!!」
身体に魔法をかける。付与自体が上位魔法なうえ、後で来る疲労がやばいんですよねこれ……。
でも、さすがにそんなこと言ってられませんから!!
高速で一つ一つ慎重にトールさんの斬撃を回避していく。ですが、いくら早くなっても、決定打が与えられなければ意味がありません。
「足が速くなったくらいで俺を止められるよ思うなよ!」
「まだまだこんなものじゃないですよ! 燃え爆ぜよ! 炎の爆弾!!」
「んなっ……もん効くかぁ!! うっ!?」
手に火炎の魔球を生成し、それをトールさんの顔面目掛けて投擲する。いくら速くなっても、投擲速度自体が早いわけではなく、空いていた左手で弾かれてしまう。ですが、それがこちらの目的通り。
魔球はトールさんの手に当たった瞬間に光輝き、周りを吹き飛ばす爆弾へと変わります。
大きな音と共に爆発すると同時、私はおもいきり高く飛び上がり、爆炎に紛れて上からトールさんの肩へと飛び乗り、隠していた短剣を取り出しその首もとへと突きつけました。
「……ふぅっ、流石に反応できなかったようですね。これで、私の勝ちです」
「ちっ、女のくせになかなかやるじゃねぇか……だが勝利は譲らねぇ!!」
そう言うと、トールは手首に隠してあった短刀で私の剣を持っている手を切り裂こうとしました。
しかし、その刃は私の手に届くことはなく、私のもう片方の腕によって止められました。最後の手段であったのだろうそれを止められたトールさんは戦闘の意思をなくしたのか腕を上げて降参を意を示しました。
「……どうして今のに反応できた? 少なくとも元からわかってなきゃ無理だったと思うが?」
「すみませんね。実は私、とても便利なもの持ってたんですよ。おかげさまで助かりました」
「けっ、そうかい、今のも防がれたとなっちゃ俺の完敗だ。さっきまでの発言は訂正する」
「わかってくれたんならいいんです。それと、私も訂正します。どうやったらそんな早く行動できるんですか。あれですか、頭まで筋肉で詰まってるからですか」
「はっ、まだ喧嘩してぇのか、てめぇこのやろう」
「冗談ですよ。さすがにもう魔力が残ってないです」
「二人とも!! 怪我はないですか!?」
魔力を使い過ぎで重たい身体を起こすと、遠くから見ていたリリィちゃんが駆け寄ってくる。
「もう! 二人がいきなり喧嘩し始めるから、わたし心配で心配で……」
相当不安だったんでしょう。肩を震えて、さすがにやりすぎました。いくら頭に血が上っていたといえリリィちゃんをこんなに不安にさせてしまうとは……。
「ほんとにすみません……でも、見ての通り、怪我はないので安心してください」
「俺も少しやりすぎたな、いや、まぁ手加減する予定だったんだがな? とてもじゃないができなくてな……俺も怪我は特にねぇな、うん」
「怪我がなければいいってわけじゃないんです! もっと自分を大事にしてください!」
「「だってー」」
「二人してだってじゃないですよ!! 二人には今からお説教ですからね!!」
「「そんなぁ!!??」」
Qソラの思考が完全におっさんのそれでは?
A万乳引力には勝てなかったよ。