表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
♯ソラノート  作者:
旅の始まり
6/45

二日目 商店街と魔道具と杖と契約と


「この先には色々なお店が並んだ通りがあるんです」


 先ほどの建物を離れ、しばらく歩いていると少しずつ元気を取り戻したみたいで、再びリリィちゃんに村の案内を続けてもらっています。


「お店ですか……?」


「はいっ! 結構色んなお店があって、基本的にそこでなんでも揃えられるんです……!」


 話を聞きながら歩いていると確かに少し遠くに建物が並んでいる場所が見えてきました。

 多少は人通りがあるようで、幾人かの人が歩いています。

 


「……あっ、見えてきましたよっ! あそこです!」


 一つ一つは決して大きくはないですけど、結構な数のお店が並んでいました。

 確かにこれなら、そこらへんの街にも匹敵しそうなくらいの設備かもしれません……。


「……ええと、服に食べ物、雑貨、確かに色々と揃っていますね……」


 昼も近づいてきたからか、開いてるお店も結構あります。

 お店の上に大きく何の店なのか書いてあるため私のような旅人でも直ぐに分かるようになっています。

 お店の中でお客さんを呼び込んでいるところもあれば、お店の中に誰もいなくて呼び鈴が置いてあるところ等いろいろあるみたいです。


「すみません、ソラさんっ、ソラさんの分の日用雑貨も揃えちゃいたいので、少しここら辺を見て回ってもいいですか……?」


「はい、大丈夫ですよ。集合時間とかは決めた方がいいですか?」


 私もどうせなら一通り見て回りたかったのでちょうどいいです。

 といいますか、そんなものまで用意させちゃっていいんでしょうか……。

 本当にリリィちゃんには頭が上がりません……今はお金も少ないのでご厚意に甘えることになりそうですけど。


「そうですね……では、お昼にまたここでお願いします」


「分かりました、それでは」


「はいっ、また……」


 それだけいうと、手慣れたようにタッタッと駆け足でお店の中へと入っていく。

 さて、私も何かないか見ていくとしましょうか……。


「全部見て回る程時間もないですし、何軒か寄るところを決めてからの方がよさそうですね……」


 とはいえ、お金に余裕があるわけでもないですし、ちゃんと考えて買うか決めないと……。


「服は、欲しいですよね……」


 旅をすることになり持ってきたのは、今、私が来ている私服と遠出をする時用のローブ(汚れても良いやつ)と寝間着だけですし……。

 あっ、ちゃんと洗濯はしてますよ。魔法で水を生成して魔法で風を当ててっていう作業を毎回夜のうちにしちゃってます。余裕があるときは乾かすのは外で、風に当ててですけど。

 魔法に頼りすぎとか思われても使えるものを使うのは当然だと思うので、私は特に気にしません。使えるものは使うのです。


「……ん? あれなんですかね……?」


 様々な店を見て回っていると店と店の間にかなり古そうな上へと続いていく階段がありました。どうやら家具屋の上へと続いているようです。


「ここだけ看板がないですね……」


 いかにもなくらいに怪しいですけど、だからこそ気になります。ちょっと覗きに行ってみますか。

 階段は人一人が入るのがギリギリな狭さになっていて、周りを店の壁に囲われていて、屋根のせいで日さえ入ってこなくて暗いです。


「ほんとに何かあるんでしょうか。私の気のせいとか、もしかして下がお店でこっちが住居とかっていうこともありますかね……」


 もしそうなんだとしたら、謝らないとです。

 靴が階段に当たる度にカッカッという音が足を通じて伝わってくる。

 階段を昇っていくと、そこには木でできた簡素な扉が一つと……。


「こんな場所にあったんですね。看板……」


 扉の上には取って付けたかのような、看板がかけてありました。

 こんな場所にあったんだとしたら、ほとんどの人は気づかなさそうです。でもお店であってくれてよかった……。


「……随分とボロボロですね、えっと魔……?」


 掠れちゃってて魔としか読めませんね……魔ってなんでしょう……? ポーションとか魔石とかでも売ってるんでしょうか? とりあえず、使えそうなものが売ってそうですし、入って見ますか。

 重々しい雰囲気の扉を開けていく。鍵などはかかっておらず開いているみたいです……。

 扉が開かれると、鈴のような音が店内に響く、入ったことを報せるものですかね。


「失礼します……」


「おっと……珍しいね……お客さんかい?」


 店へと入ると右のほうから女性の声が聞こえてきました。

 ……店の人ですかね、よかった人がいて。

 声のする方を見てみると、二十代くらいの茶髪の女性が小さな机を挟んだ先で椅子に腰かけていました。


「えっと……私、旅をしていて、昨日ここにきました。ここはお店でいいんですよね?」


「んっ? 外に書いてあっただろう?」


「ほとんど掠れて読めませんでしたよ……」


「ありゃっ……それはすまないねぇ……じゃあ改めて、ここは魔導具を取り扱っている店【クレアーレ】んで、あたしがその店主のカネレ・クレアーレさ」


「クレアーレさんですか」


「あんた、あれだろ? ……えーっと、あのーリリィが言ってたやつだ」


「ソラ・グレイシアです。ソラでいいですよ」


「あぁ、そうだそうだ、確かにそんな名前だった。んで、ソラは何しに来たんだい?」


「ちょっとお買い物をしようかと思いまして、少し見てもいいですか?」


「おう、まぁゆっくり見てってくれ」


「はい、ありがとうございます」


 それだけ言うと、クレアーレさんは机の上に高く積まれている紙束から一枚取り出して、それに目を通していく。お仕事に関係しているものでしょうか。とりあえず、好きにしてよさそうですしお店の中を見て行ってみましょう。魔道具屋なんてものは私の村にはありませんでしたからね。どんなものがあるんでしょう。面白そうなものがあったらいいんですけど。


「石を付けたものを空に浮かばせる……石!? なんですかこれ無茶苦茶便利じゃないですか……! えっと(※最大五十cm)まぁそうですよねぇ……」


 適当に見て回っていると、様々な気になるものがあって目移りしてしまいます。

 五十cmでも全然使えますね……値段は、二百金貨っ!? さっ……すがにこれは無理ですね……。


「好きな調味料を出すボトル、あぁなるほど、中に入っているものを出すことができるんですか……」


 なんか偏ったものが多いがしますけど……。

 こんなにたくさんの魔道具が置いてあるなんて、魔道具屋……便利ですね。


「結構高いのが多いです……」


 あっ、でもこのボトル安いです。一つ一銀貨で買えるみたいです。とりあえずこれ、一つ買いましょうか……私は料理はまぁ、あれなんで使えませんけど、リリィちゃんが喜びそうです。それに旅を再開したらちょっとした調味料でも役に立ちそうですから。


「魔石もあるんですか……」


 見る場所を少し変えて、店の奥へと進むと様々な種類の魔石が置いてありました。

 滅多に見ない特大サイズに極小サイズまであります。

 ……思っていたよりも凄いですね、ここのお店。


「……なぁ、ソラは魔法使いかい?」


「えっ、はい、魔法使いですけど……」


 この国の魔法使いの名称は区分わけされていて、正式に国に認められた魔法使いは魔導師と呼ばれるようになり、認められなくても、魔法を上位魔法まで使うことができれば、魔法使いとして名乗ることが許されます。基本的にそれ以下の人達は魔法を使える人っていうだけで名称はありません。

 私は面倒くさい試験などは受けていないので、魔法使いのままなんですけど……。


「なら、いいもんがある、ちょっと待ってておくれ」


「えっ、はい」


 魔法使いかどうか聞くものってなんでしょうか? ていうか、私そんなお金ないんですけど、大丈夫ですかね……変な物出されても買えませんよ?

 どうやら魔法使いは稼ぎが楽みたいで、お金持ってる印象が強いらしいですけど……。

 クレアーレさんは奥にある部屋に入ってすぐに、なにやら大きな箱を持って戻ってくる。


「これは一体……?」


「この店は私の曾祖父が建てたものなんだがね? これは、その当時からずっと置いてあるもんでね。まぁ、ちょっとした訳ありなんだ」


 訳ありって……結構とんでもないもの押し付けられそうになってますか私? 少なくともそんな時からあって今まで残っている時点でまともな物ではなさそうです。


「中身、見せていただいてもいいですか?」


「ん、今開けるから待ってな」


 クレアーレさんは箱の蓋を開け、中から白い布に覆われた棒状の何かを取り出す。


「杖、ですか?」


「ああ、しかも、国宝級の魔道具さ」


「国宝級……!?」


 国宝として認められてるものなんて、王様が持ってる杖とか迷宮の最奥(さいおう)にあるって言われてる武具とかですよ!?

 こんな小さな村においてあるなんていうのは初めて聞きました。


「まぁ、確かに効果はすごいんだがね。如何せん副作用が……」


「……とりあえず、効果とか見させてもらいますね」


 手に取って杖の入っていた、箱を漁る。大抵の場合はこういった魔道具には詳細が書いてあったりします。迷宮から取れたばかりのものは鑑定が必要になってきますが、魔道具屋といわれるくらいですから、そこは大丈夫でしょう。


「あ、ありました。これですね……」


 一枚の紙を手に取って、広げる。武器などでもそうですが、店では分かる情報としては基本効果(スキル)付与効果(エンチャント)、金額などの情報は紙にまとめてることが多いんです。


「ええっと、効果は……」


【叡智の杖・スキエンティア】

 所持者の魔力を消費することで知識を得る、不確定なものや存在しないもの、世界の理から外れるものなどの知識は得られない。得る知識によって消費される魔力が変わる。但し、知識として知っていても自身が理解し得なければ意味を為さない。

・呪い属性持ち

 効果を使うと起こる。その者の欲望を解放する。どれほどかは不明。

・永続付与効果

 悪事を働こうとしたものに天罰を与える。


価格0


「えっ…?」


 何ですかこれ!? 効果おかしくないですか? 国宝どころか持っていただけで色んな所から狙われそうな代物じゃないですか!? てか呪われます!? 明らかに値段もおかしいですよね!?

 いろいろと言いたくなるようなことが多すぎて……これ一体何なんです。


「あっ、あの……これ……」


「まぁ待て、言いたいことは分かる。だがまず説明させてくれ。……まずなぜこんなものがうちにあるかだ」


 確かに効果をみて少し混乱していました。仕方がない気がしますけど……これみて混乱しない人いないですって。


「簡単に言うとだ、使える奴がいねぇんだよ……この杖を。そこに書いてある通りなんだが、まず、かなりの魔力が必要なんだ。だから、基本的には魔法使いか元から魔力が純粋に高いやつしか使えねえ。だが、そういうやつに限って、自分の欲に素直だったり、悪いことに使いたがっちまってな。今までもいろんな奴の手に渡ってきたが、全部返品されてきたのさ」


「国が持ってると、天罰が国の関係者にいくらしくてな。国からも捨てられたかわいそうな杖さ、あぁ天罰っつっても別に死ぬわけじゃあないから安心しな」


 今一瞬すごい顔したのを私は見逃しませんでしたよ? 死なないってこと以外の不確定要素が多すぎます。不安しかないんですけど。


「でも、それをなんで私に? というか他の国とかにわたってても危険ですし処分すればよかったのでは?」


「そりゃそうだ、それができたらそうしてるだろうよ」


「できないんですか……」


 魔道具の中でも限られたものにしかない不壊の能力でもあるんですかね。

 流石ににそれはやばすぎません?


「んで、あんたを選んだ理由なんだが、まぁ言っちゃえば勘だな。お前ならこの杖を使える気がしてよ」


 ……えぇーそんな勘なんかで言われても天罰とか嫌ですよ私っ……。

 どうなるか分かったものじゃないですか。


「不安しかないですね……まぁそれはとりあえずいいとして、天罰ってどうなるんですか?」


「確か、呪いの効果の発動。あと、杖から電流と衝撃が来てはじかれるとかだったと思うぞ? それでも使おうとしたやつは焼かれたらしいが」


 ……なるほど、そうなるのを防ぐためか何かで布で覆っていたんですか。

 弾かれるだけならまぁなんとかなりますかね。無理に使おうとしなければいいんですから試すくらいなら何とか?


「それじゃあ、最後に……この杖を使えた人はいたんですか?」


「ああ、いたらしいぜ。一人だけな」


「わかりました、じゃあそれ触ってみてもいいですか?」


「大丈夫だが……使えたやつとかは聞かなくていいのかい?」


 気にならないわけではないですが、そこまで興味ないですし……使える人がいるなら、まぁそれで不可能ではないと証明されたわけですから。


「はい、それじゃ失礼します」


 スルスルと布をはがし、その物の姿をようやくお目にかかることができる。

 それは、一見ただの木製の杖、先端の宝石による装飾はプロが作ったとしか思えないほどに美しい。

 ですけど……。


「綺麗ですけど……完成されてないみたいな……? なんでしょう……とにかく変な感じが……」


「変? この杖を見て、んな感想言ったやつは初めてだな……。やっぱお前さんには素質があるのかもしんねぇな。」


「そうだったらいいんですけどね……」


 普通に持つ分にはだれでもいけるみたいです……まぁでも、こんなの持ってたら知らず知らずのうちでもなんかしら、考えちゃいますよね……。使う条件は魔力を流し込んで何か聞きたいことを聞くでしたか。

 とりあえず、何を聞いてみましょうか。






「私に……あなたのことを教えて?」


(了解したよ、新しいマスターさん)


 突如頭の中から声が聞こえると同時に杖から青白い光が溢れ店の中を覆いつくす。

 急な光に反射的に目を瞑ってしまいました。すぐさま目を開けると、光は弱弱しく杖の先端で光っているだけでした。


「今の光は一体……!?」


(俺様の声聞こえてるー? 聞こえてるかなー? 契約できたっぽい? おーいマスターさーん?)


 ……幻聴じゃなかった!? 頭の中に直接声がします……疲れているんですかね。


(あ、よかった聞こえてるね。いやーよかったよかった。契約するのもだいぶ久しぶりでさぁ)


 あ、これ、この頭の中から声がするの結構気持ち悪いです……あなたは誰なんです?


(さっきから言ってるじゃん? まったくさーマスターは理解力足りてないんじゃない?)


 何一つとして言ってないじゃないですか!? こんなんで分かる人なんていませんよ!? っていうか私さっきからしゃべってないと思うんですけど。なんで会話通じてるんです!? いやそもそも、これ通じてるんですか?


(仕方ないなぁーまぁ、マスターの最初の質問だ。しっかりと答えることにしようか)


 私のことは無視ですか……そうですか……。


(んなこたないって今説明してやんよ。まず俺様は、マスターが今持ってる杖【スキエンティア】まぁ長いし適当に省略して呼んでくれていいよ。んで、次に俺様を作ったのは、基本的に全知全能の神で。俺様はその全知の能力だけを持ってる。けど俺様は基本一人じゃなんもできなくてな、今みたいに、契約を交わして魔力とかもらって、その代わりに俺の力で知識とかをあたえるって感じだな。あ、ついでに言っておくと、俺様は人間どもが作った魔道具なんかとは違うから。全くの別物だから、そこんとこよろしく)


 ……長いです、簡単に。


(ひっでぇ、このマスター自分で聞いたくせに! 俺様は神の杖。お前と契約したからこれからよろしく)


 それでよし、それで? 理解はしましたけど……。


(納得はできないってか……強情なマスターなこった)


 言わなくてもわかるのは便利でいいですね……。

 でもですよ。そもそも、私契約なんてしてないじゃないですか。

 強制的に契約完了はおかしいと思います。


(確かにその通りだ、でもな、残念ながらマスターはもう契約しちまってんだよ。ほら、覚えがあんだろ?)


 覚えなんてないですよ……?


 …………あっ。


(だーいせーいかーい! 俺様に魔力流して、質問をしただろ? それ自体が契約になってんのさ。まぁ、俺様の方からも了承しないとだし、他にも条件はあるんだけどね。いやぁそれにしても気づいてくれるとはねぇ、マスター思ったよりかは博識かねー。それと契約完了でマスターと俺様の魔法で紡がれた縁みたいなもんがあるんだけど、それがつながったからこうして話せるわけ)


 ……だとしても、私の方からしてみたら、そんなの半強制じゃないですか? こっちそんなつもりなかったですし。


(うーん、まぁそういわれちゃぁそうなんだが、別に俺様がこの契約方法決めたわけじゃねえからなぁ。それに俺様と契約できるなんて多分この一生に一回とない奇跡だぜ? それに、俺様の方だってもう何年も動けてないし、魔力ももらえてねぇしで困ってんだよ。この契約はおたがい助かるんだよ。な?)


 うぐっ、確かにそうですけど、ほら、あなた呪いとかついていますし。


(ああ、あれか、あれなら大して心配いらねぇと思うぞ? だってもう発動してるしな、マスターそんな体に影響ないだろ?)


 えっ、あれもう発動してるんですか? 確かに影響ない……んですかね? てか、何が解放されたんです?


(やっと納得していただけたか、まぁ今回のは内容的にもほんの少しだけ食欲を解放させたぞ? 一応今後も問題ない程度にするつもり。マスターに負担かけるようじゃ神器として名折れだしな)


 食欲……ですか、いわれてみれば、お昼時でしょうし少しおなかがすきましたね……?

 ……ってこれだけなんですか? もっとなんか色々とあるのかとおもってたんですが。


(まぁ簡単な内容だったしな、得るのが困難な情報ほど魔力と解放される欲の量は増えていくぞ。)


 なるほど……でもですよ……。


******


「おいっソラっ! 大丈夫か!」


「えっ……!?」


 頭の中で会話をしていたところに別のところからの声が聞こえてくる。どうやら、隣にいたクレアーレさんみたいです。頭の中での話をしていたせいで気が付きませんでした。


「ク、クレアーレさんっ? どうしたんですか?」


「どうしたじゃないよ! 杖が光ってからあんた杖の方向きながら固まってたんだよ!?」


 あ、外からみたらそうなるんですか。それは周りから見たらだいぶやばい人でしたね。よかった声出さなくて……。


「すみません、心配かけてしまったみたいで」


「いや、まぁソラが無事ならそれでいいんだが……?」


「えっと、なんか一応、私、この杖使えるみたいです」


「本当かい!? あっ……いやぁやっぱあたしの目に狂いはなかったってこったね」


「それで……この杖って……?」


「あぁ、もらってってくれていいよ。どうせあっても使えないんだ。それに杖だってずっと放置され続けてたんだ。使ってもらいたがってるんじゃねぇか?」


「はは、そうですねーー。すみません、それじゃあご厚意に預からせてもらいます。」


 言えませんよね。杖もそう言ってましたーとか確実に痛い子じゃないですか……。


「あと……それじゃあこれも一つお願いします」


 忘れないうちに、ボトルも買ってしまいましょう。流石に無料の杖だけもらっていくのは私の良心が許してくれません。


「ん、まいどあり。ソラ、あんたのことは気に入ったかんね。またいつでも来てくれよ」


「はい、また来ます。ありがとうございました」


 カラーンという鈴の音と共に扉を出る。

 ……はぁ、なんかどっと疲れました。


(……いやぁマスターはほんと外面だけはいいんだなぁ)


 ……中身がダメな人みたいに言わないでください。


(事実じゃねぇか、記憶見せてもらったけどひでえもんじゃねぇ……)


 捨てますか……この杖。


(まって、待ってください。それは勘弁してください。お願いですから)


 買わない方がよかったですかね。どう処分しましょう。


(おいおい、そんなこと言わないでくれよマスターー)


 とりあえず黙っておいてくれませんか? これ結構気分が悪くなってくるんです。


(それは頑張って慣れてくれとしか、ところでマスター、急がなくていいのかい? もう昼になるが、あのリリィとかいうの待たせてんだろ?)


 前言撤回です。あなたはこういったことにおいては結構役に立ちますね。そういうことだけしていてください。


(そいつはできねぇ相談だな。〈にしてもまったく……普通万能の神器をそんなことに使うか? まぁだからこそ俺様と契約できたんだが〉)


 さて、行きますよ。リリィちゃんを待たせるわけにはいきません。私と契約したんです。高くつきますからね。覚悟してください。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ