二十日目 金貨と買い物とカメラと今の勇者と
あっぶねぇぇ!!!
時間ぎりぎりに完成しました。ちょっとやばかった。
車に関しては秘密ということで諦めてもらいました。マッカーターさんが言うには、これの情報だけで一生遊んで暮らせるんじゃないか、って。それはいいんですけど、確実に国に色々使われる未来が見えるので丁重にお断りしましたが。
車に乗っていた在庫の確認を終えるとその場でマッカーターさんは大きな布袋を取り出し、私に手渡してくる。
受け取ると、ふいに手が下に引きずり込まれるように下がっていく。
見た目以上にその袋は重たく、たくさんのものが入っているようです。
中身を空けてみると、すべてが金貨。数えたわけではありませんが、恐らく百六十枚あります。
なんでわかるかって、血判は絶対ですから、流石にマッカーターさんもそんなことで首を飛ばしたくはないでしょう。
「確かに受け取りました。それでこれの搬入といいますか、積み込み作業はどうしましょうか」
「わたくしたちが持ってきたものが、そこそこ売れれば空いたところに入れられるかと、まぁ毎回盛況ですしそんな心配はいらなさそうですけど」
馬車を見ると、様々なものがあるのが見受けられた。服や、食べ物、ここらへんでは取れない魚もあります。あとは、道具。鋸や鍬、斧や剣など。
冒険者用の装備などもあります。
これは、私も一回、一通りみてみたいです。借金負ってるのに考えなしに行動しているからこんなことになるんでしょうけど。
「リリィちゃん、センちゃん。お待たせしました。とりあえず用事に関しては終わりましたよ」
袋を両手で抱えて、そのまま二人がいたところまで戻る。
これ持って走るの結構辛いです。腕が外れちゃいそうなくらいに重くって……。
「お疲れ様です。途中からとても楽しそうでしたね……」
「楽しかったです。それでこれが手に入ったお金です」
袋を持って、リリィちゃんの前へと降ろす。
いやぁ重かったです。
「え、ソラさん? なんですかこれ、わたしには金貨に見えるんですけど……」
「……? そりゃ金貨ですから?」
「なんでこんなにたくさん金貨があるんですか!? いっても数枚の金貨なはずですよね……?」
「契約と一緒にふんだくってきちゃいました♪」
笑顔でそんなことい言ってみる。だって儲からないと意味ないですから。
そんな私をみてリリィちゃんはひたすらに震えている。村の資金でこれくらいを扱ったことはあると思うんですけど、そこまで気にすることですかね?
「こ、こんなにたくさん貰えませんよ!?」
「え、もらって貰わないと困っちゃうんですけど……」
村の資金から使って作ったクッキーを売って手に入れたんですから、これリリィちゃんのですし。
私これ持つの辛いですし。
「ソラさん!」
「は、はい!?」
しばらく黙っていたリリィちゃんがいきなり大きな声を上げると、びっくりして震えてしまう。
私何かやらかしてしまいましたか!?
「こんなにも受け取れませんが、受け取ってしまったものは変えようがないですから……これ、半分ソラさんが使ってください」
「……はい?」
「これはお願いじゃありません。命令です。そもそも、ソラさんのおかげで手に入ったんですから、ソラさんがもらうべきです」
いつにもなく強めな口調で、しかし、顔は優しいいつものリリィちゃんのまま袋を手に取り、私に差し出してくる。
「いえ、でも、これは村のために」
「もちろん半分はちゃんと村のために使います。ですから残り半分は、ソラさんはお金足りてないみたいでしたし、受け取ってください」
「でも……」
「……いいですから」
ふぅっと、ため息をつき、そのまま真剣な顔つきから笑顔へと変わる。
いつもの、私が好きなリリィちゃんの私が好きな顔。
「もらってください。今まで色々と助かっているんですから、ね?」
……ああ、やっぱりリリィちゃんは卑怯です。その顔で言われたら何も言えないのに、そんなの頷くしかないじゃないですか……。
本当に私は駄目ですね、わかっていてもリリィちゃんに勝てません。
「わかりました」
「はいっ!」
それだけ聞くとリリィちゃんは立ち上がり、袋を抱えているのとは逆の手で私の手を掴む。
「それじゃあ、さっそく行きましょう? 折角色々あるんですから、一緒に見て回りましょう」
柔らかくも力強いその腕に引かれて私は立ち上がる。
「センちゃんも、行きましょう。面白いものいっぱいありますよ」
「うん!」
そのまま三人で順繰りに馬車から取り出された品々を見ていく。
最近は、私もリリィちゃんも忙しくて、こんなことは久しぶりです。
******
お昼の時間が終わり、日も沈みだしたころ、ようやく人ごみはほとんど消え、そこに並んであった商品もほとんどが消えていた。
あのあとも断続的に人が来て、途切れることなくいろいろなものを買っていきました。
これは好機と、私は買い物を終え、クッキーの搬入を終えた私は帰りに使ってもらおうとテンシを使っていました。
結局、商人さんからはリリィちゃんはお魚、センちゃんは人形のようなもの。私は本と一つの魔道具。
センちゃんが買ったものはよくわかりませんでしたが、センちゃんはとても喜んでいました。
私が買ったものはかなり希少な魔道具で、情報を取り込み保存するというもの。もっと簡単に言いますと、まるで一寸の狂いもない絵を描いたみたいにその場の景色を保存し、魔力を流すことでいつでもそれが見られるというもの。名称は確か【カメラ】といいましたか。
リリィちゃんたちもそのままマッカーターさん中心に商人さんたちにお礼だけして、そのまま私が送ってきました。現在はテンシを使ってくれた人たちを降ろし終え、そのまままた商店街へと向かっているところでした。
「いい買い物が出来ちゃいました。この魔道具聞いたことはありましたが、まさか取り扱っているとは……」
これも迷宮からとれるものの一つで今のところ十個くらい見つかっているというのは知っていましたが、まさか手に入るとは思いもよりませんでした。
本当に感謝しなくては、これがあるだけでしたいことがたくさんできます。
日が沈むのを眺めながらもテンシを動かして商店街へ向かい続ける。
既に日は半分ほど沈んでおり、大きな太陽の光が私の目に直接刺さってくる。辺りは陽で照らされて薄い黄色がかった赤色で染め上げられている。
そんななか風に揺れる影がとても幻想的に見えてくる。
さぁ、最後にやることだけやりませんと。
******
車を走らせ、再び商店街へと戻ってくる。そこには、帰る準備をしているマッカーターさんたちの姿がありました。
「お疲れ様です。マッカーターさん」
「おや、ソラさん戻ってきたんですか?」
「はい、最後にご挨拶をと思いまして、本当に色々とありがとうございました」
「こちらこそありがとうございます。それでまさか挨拶だけのために戻ってきたわけじゃないですよね?」
流石、商人こちらの腹のうちはバレてしまっているっぽいです。
「ちょっとお話をさせてほしくてきたんです。別に何か企んでいるとかはないですから安心してください」
「お話……ですか、こんなわたくしでよければ構いませんよ、どうせ今日は急ぐ必要なくなりそうですから」
既に日が落ちていることもあってか、どうやら少し走らせた後は野宿だという。せっかくだから宿に泊まっていけばいいのにと言っても、なるべく早く帰らないといけないからと断られてしまいました。
商人というのも大変そうです。
「それで何か聞きたいことでも?」
「ええ、まぁ、マッカーターさんは王都から来ていらっしゃるんですよね?」
「はい、ここ以外にもいろんな村に行って商売はしていますが基本王都で活動してます」
「でしたら、”セイ・グレイシア”という名前に心当たりはありませんか?」
その名前を聞くと、目を見開き、こちらの顔を見つめる。
「やはり、あなたは彼のご家族か何かですか?」
「はい、セイ・グレイシアは私の兄にあたります。ということはやはり知っているんですか」
「知っているも何も、あそこまで有名な方、知らない方がおかしいかと、入ってきて数日でSランク冒険者にまでなり上がって、王様も直々に出てきたくらいですから」
……やっぱり王都にいるんですね。知っていましたけどやっぱり兄はすごいです。
「グレイシア家は一体どうなっているんですか? あそこまでの勇者を出したかと思えば妹まで……」
「私なんて兄の足元にも及びませんよ、っていうか今、なんて言いました?」
恐らく聞き間違いだろう。多分そうに違いない。
「え? グレイシア家がとんでもないと……」
「そのあとです、あと」
「あと? あそこまで飛びぬけた”勇者”を出したかと思えば妹さんまでとんでもないな、と」
あれ、聞き間違いじゃないじゃないですか。ははは、は?
「兄が勇者? 何を言っているんですか?」
「え、お聞きになられていないので? 彼、王都で勇者の資格である紋を手に入れたんですよ」
「……え?」
知っています。勇者は生まれたときから勇者である資格をその体に宿すと。そう、生まれたときからな筈です。その紋は途中で手に入るものではないはず……。
「何を言っているんですか、その紋は……」
「先天性のものって話ですよね。それくらいはわたくしも存じていますが、実際に見てしまっては何も言えません。彼は冒険者ギルドでそれを宿しました」
「じゃあ、なんですか? 兄は勇者になったと?」
マッカーターさんは何を言っているんですか。そんなわけないじゃないです。だって兄は普通の人ですよ。そんな真剣な顔したまま、変なこと言わないでくださいよ。
「はい、実際、それで現在も活躍していますから」
「じょ、冗談はやめてくださいよ……」
「冗談でこんなこと言わないですって、むしろあんなに有名な話なのに聞かされていない方がびっくりですよ。聞きませんでした? 彼最近魔王の幹部の一人を倒したらしいですよ」
「初めて聞きました。え、本当に嘘じゃないんですか……」
確かに兄なら何とでもなる気はします。魔王の幹部どころか魔王だって倒せちゃいそうですから。
でもそれとこれとは違うじゃないですか、だって勇者なんてのは皆のあこがれの存在です。唯一魔王を倒すことができるといわれ、数十年、数百年に一度のみ現れる伝説の存在ですよ!?
それが君の兄でしたっていわれて納得する方がおかしいですって。
「はい、いい加減信じてくださいよ。王都のことですしこの村にいたら確かにわからないかもしれませんね」
「そうですか……ありがとうございます。」
「いえ、それで聞きたいことというのはそれだけなんですか?」
「はい、とりあえず兄の所在が聞ければいいなー程度でしたので、時間取ってしまってすみません。ちょっと自分の中で整理したりしたいので私はこれで、またこの村に来た時はよろしくお願いします」
「はい、今後もあのクッキーお願いします」
なんてことでしょう。兄の名前やっと出てきたそうです。
主人公より早くから出てはいたというのに。




