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劣情 〜結ばれたい女〜

作者: いつみゆう

オレは姉が鬱陶しかったんだ。


何でもかんでも干渉してくるし、世話を焼こうとするんだ。


頼んでもないのに勉強を教えようとしてきたり、勝手に部屋を整理されてたり……。


……整理された後、隠してたエロ本が机の上に乗ってた時もあった。


メモ書きまで置きやがってよ。


「私で◯いてくれないの?」


……勘弁してくれよ。


一階に降りると姉が怒った顔で言うんだ。


「机の上に何か書いてあったでしょ?」

「ちゃんと見てくれた?」

「私はいつでも……いいのに」

……怒った顔って言ったけど、心の奥底で何か期待しているような目をしている。


何回この顔を見たことか。


気持ち悪い……。

誰か助けて欲しい……。

早く大人になってこの家を出て行きたい……。


ずっとそう思ってたね。


でも……最近、姉の事が気になってしょうがないんだ。

姉の事を考えると胸が……。


そんな自分に嫌気がさしているんだ。


相談に乗ってくれるかい?



◇ ◇ ◇


姉とは6つ歳が離れているんだ。

歳が離れた姉弟でね。


姉は子供の時、赤ちゃんだったオレを見て、何があっても守るって決めたらしいよ。


それは嬉しい話なんだけど。


……ただ、いき過ぎてんだよ。


友達と鬼ごっこして転んで膝を擦りむいた時なんかは、涙を流してたし……。


「大丈夫?お姉ちゃんが守るって決めたのに……」

って。


普通そんな事で涙流すか?


おかしいだろ?


……これだけで終わりではなかったんだ。


しばらくして、友達はオレを遊びに混ぜる事を拒むようになったんだ。


オレは仲間外れにされたと思って、悲しくなってそいつらを問い詰めた。


「なんでこんな事をするんだ」

「なんで仲間外れにするんだ」

って。


そしたらよ。


「お前の姉ちゃんにきつく言われたんだ。次に私の弟に怪我させるような事があったら……

…………"殺す"って」


オレの友達、ひどく怯えてたよ。


オレは姉への怒りが込み上げてきて、家に帰ったら姉に問い詰めた。


「オレの友達になんて事言うんだ!

なんでそんな事を言ったんだ!」

って。


姉は無表情でオレの手を取って言ったんだ。


「私の宝物に傷をつけるヤツは死ねばいい」


……当時オレは幼かったけど、コイツが異常な事言ってるって分かったね。


その時の顔の"怖い"こと"恐い"こと……。


恐ろしさを感じた後、友人を失った悲しみが込み上げてきて……。

「お姉ちゃんのせいで友達がいなくなっちゃった」

って泣いてしまったんだ。


そしたら姉はオレを抱き締めて、

「私が友達の"代わり"もするから大丈夫」

って言ったんだ。


……怖かったよ。


だって、抱き締めた後、オレの目を見つめたんだけど……。

満面の笑みだったんだから。


笑顔の人間ってこんなに怖いんだって思った。


てかよ、なんでそんな思考が出来るんだ……。

自分で友達を奪っておいてさ……。



一番恐ろしかったのは彼女が出来た時だ。


姉が出かける予定の日にあわせて、彼女をオレの家に連れて来ることにしたんだ。


え?

なんで連れて来るんだって?

自殺行為じゃないかって?

そんな姉ならキレる事くらい分かるだろって?


恋って言うのは人から冷静な判断を奪うもんなんだ。


いつも彼女の家におじゃましてたから彼女に

「あなたの家に行ってみたい」

って言われちゃってさ。

浮かれちまってたんだ


オレはなんとか姉と両親がいないタイミングを見つけ、家に連れて来たんだ。


「私を連れて来れない事情があるんだと思って心配してたんだよ。今日は家に連れて来て貰えて嬉しい」

って喜んでたね。


オレの部屋でおかしを食べながら昔の卒業アルバムなんか開いちゃったりして。


彼女はとても嬉しそうだった。

連れて来て良かったって思った。


するとだ。


ドアを勢いよく開ける音が聞こえた。

ドアが壊れたんじゃないかと思った。


オレは瞬時にドアを見た。


「姉ちゃん……?」


心臓が止まるかと思ったよ。


なんで姉がここにいるのか。


なんでいたのか後々聞いたんだけど、心に胸騒ぎがしたから帰って来たんだって。

なんかの能力者か。


ビックリしたけどそれだけじゃない。


だってさ……。


顔がよ。

鬼の形相って言うのか?


人殺しそうな顔してたんだよ。


オレと彼女はその場に固まっちまった。


姉はオレの彼女の腕を掴むと

「帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ帰れ!」


って言いながら追い出そうとすんだよ。


オレは止めようとしたんだけど、

「お前は動くな!!!!」


って怒鳴られたんだ。

そして動けなくなった。


え?

彼女を助けなかったのかって?


……無理だよ。


お前もあの場に居てみろよ。

本当にとんでもねぇ顔してたんだぞアイツ。


人間、殺されるって思ったら動けなくなるんだな……。


泣きながら追い出される彼女をそのまま見ていたね……。


結局それがきっかけで彼女にフラれちまった。


後で電話で謝ったらよ?


「さっきの人、何なの……?」

「いや……姉なんだけど……」

「あなたの元彼女じゃないの?」

「……は?」

「とぼけないでよ。"私の男"に手を出すなって言ってたけど……」

「違うよ!誤解しないでくれ!あれは……」

「とにかく、彼女があんな目にあってるのに助けないってどういう事?

しかもあれが姉?

……甲斐性なしの上、姉と出来てんの?

しかもあんな危ない女……勘弁してよ!

もうあなたとはこれっきりよ!」


……それでオレと彼女の関係は終わっちまった。


その夜、オレは姉の顔が見たくなくて、部屋に鍵かけて籠って寝てたんだ。


カララ……。


窓が開く音が聞こえた。

……オレの部屋二階なんだけど……。


ビックリして飛び起きると姉がいた。


姉はオレのベッドに飛び込むとオレを抱き締めた。


鳥肌が立ったね。


「ひっ……」

「ゴメンね。お姉ちゃん気付けなくて……」

「な……何が……」

「あんなゴミ女に付きまとわれてるなんて……なんでもっと早く気付けなかったんだろ……」

「ゴミ女?あれはおれの彼女だよ!……本当に好きだったのにどうしてくれるんだよ……」

オレは泣いてしまったんだ。


するとだ。


「泣かないで……私が"代わり"になるから」


昔に聞いた事がある台詞だ。


姉は服を脱ぎ出した……。

うっとりした表情で……。


オレの手を握ると自分の胸に当てさせて言ったんだ。


「感じる?私の心臓の鼓動。

速いでしょ。

あなたの事を思うと心臓が……。

だから…………して」


オレの全身にまた鳥肌が立った。


オレは姉を押し退けると一目散に部屋から出て行った。


……なんてヤツだと思った。


劣情(コンプレックス)を抱いてるどころじゃなかった。

オレをヤろうとしやがったんだよ。

気持ち悪くて気持ち悪くて……。

部屋から出て行く時、こう聞こえた。


「恥ずかしがり屋さん。……カワイイ」


ゾッとしたね。


……次の日、学校に行くと、

"甲斐性なし"

"姉と出来てる弟"

のレッテルを張られてた……。


オレは学校に通えなくなったよ。


友達もいない……。

彼女もいない……。


今は定時制の高校に通ってる。


全部姉のせい。


オレの人生は真っ暗だよ。



◇ ◇ ◇



ここからがオレの悩み。


最近姉に干渉されると嬉しいんだ。


なんでかって?


オレは一人の時間が長すぎた。


ずっと寂しく生きて来てさ……。


どんな形であれ、オレの事、ここまで思ってくれるんだぜ?

鬱陶しさと恐怖が最近愛しさに変わってきてしまってるんだ。


もう一人のオレが言うんだよ。


受け入れれば楽になるんじゃないかって。

受け入れれば幸せなんじゃないかって。


だから最近姉と仲がいいんだ。


……体は許してないけど。

でも催促はされるんだ……。


「いつ私と愛し合ってくれるの?」

って。


……まだ決心がつかないから答えは出していないけどさ。


こんなオレどう思う?


受け入れた方が幸せかな?

それとも突っぱねて、また姉からの嫌がらせを受けながら普通に生きていくのが幸せかな?


オレはどうしたらいい?

彼は悩んでいた。

受け入れてしまえばいいのか。

拒めばいいのか……。

作者は何も言えなかった。


……後日、姉の方にも話を聞くことが出来た。

話を始めてしばらくして、こんな事を言い出した。


「後少しなの。

その時のために弟を孤独にしてきたの。

孤独を感じさせて、その孤独を埋める私……。

必然的に私の事を好きになるでしょ?

ふふふっ。

早く愛し合いたいなぁ……」


この事は口が裂けても彼には言えなかった。


弟さんは嵌められている。

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