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菱尾という室長

 内川は取調室に宮地を訪ねると、捜査の状況を明かした。


「今ね、宮地さんがヤった菱尾室長が殺される前に持ってたCD-R、中身復旧してるの。」


宮地の表情が硬くなった。


「すっごく時間かかるんだって。しかも、復旧できないかもしれない可能性もあるんだって。でもね、ウチのジュンさんはやるよ。多分。……どう、何か話す気になった?」


宮地は深呼吸をした。


「復旧しない可能性もあるんですよね。」


内川は満足そうだ。


「そう聞いているよ。でも、宮地さんが隠していた『動機』、近づいてきたね。」


宮地は目を閉じた。


「動機を話さなくても、私は死刑にしてもらえますよね?」

「極刑はイコール死刑じゃないかもよ?宮地さんが死刑待ってる間に、日本の法律変わっちゃって終身刑になるとかもあり得るから。」


そう言いながら内川は立ち上がった。


「……自殺しないでね?」

「もし、データが読み取れたら……動機を話さなくてはいけません。その為にはまだ死ねません。」


内川はもうずっと長い間、この男は同情されるべき人物ではないかと考えていた。


「ボクだけにこっそり、キミがお墓の中まで持っていこうとしているモノの正体を教えてくれないかな?」

「刑事さんじゃ役不足です。」


内川は今のゾクゾクするような感情を言い表す言葉を探しながら取り調べ室を後にした。外に待機する捜査員に声をかける。


「ガイシャの菱尾を洗い直してくれないかな?それこそ小学校時代の恩師の話とかそういうレベルで。」


捜査員の駆け出す背中に「小学校はウソ」と一声かけた。程無くして、内川の元には有象無象の報告が入った。


「菱尾は国産車が嫌いでした。逆にイタリアの車を好んでいたようです。」

「菱尾の姉は料理教室に通っていたようです。」

「菱尾は邦画はつまらないから見ないと周囲に公言していたようです」

「菱尾は花粉症でした。」


賢明な読者は「花粉症」がキーワードであることに気づいただろう。しかし内川は当然知らない。


「菱尾は遺伝子組換え微生物の応用による除草を研究していたことがあります。」

「菱尾はカビの遺伝子組換えに積極的に取り組んだ経歴があります。」


農学クラスタの応援が菱尾の過去の研究についても情報を集め始めていた。


「決め手がないんだよね。」


内川は努めて冷静にふるまっていた。そしてその日はやってきた。内川に電話が入る。


「そう……解析できたのね。」


内川は迷っていた。

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