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ジュンさんという変人

「放火殺人前に消されたデータがあるっぽい?」


内山が受けた報告は待ち望んでいたモノとは少し違っていた。


「データセンターの作業は後ろで私や……主に堀口が監視していましたので、ついさっき消されたというわけではありません。M社の人間も気づいていなかったようです。」

「ホリグチ博士、やっぱり使えるね!ちょっと電話させて。……ねえ、ジュンさん!?消されたデータの復旧出来る?うん、期待してる。」


ジュンさんは皆川健太郎という鑑識官だが、なぜかジュンさんと呼ばれている。理由は知られていない。久谷は捜査令状を発行してジュンさんと堀口を帯同してデータセンターへ行き、作業を始めた。


「ダメだこりゃ。上から故意に書き込みされてる痕跡がある。」

「何ですかそれ?」


ジュンさんが説明を始めた。


「コンピューターに保存されてるデータっていうのは札みたいなものがついてて、ファイルを消すと、札に『上書きOK・読み取り禁止』ってマークがつくってだけの話なのよ。普段は消されちゃ困るから『上書き禁止・読み取りOK』なんだけど、削除すると、その上から別のファイル書けちゃうのね。だから、その『上書きOK』を再度『上書き禁止・読み取りOK』にしたら消したはずのファイルが見えちゃうの。」

「へえ、そういう風になってんですね。」


久谷と堀口が感心する。


「でも、これ見てみて、削除されて見えなくなったデータを見えるように戻すと、同じようなファイル名が続くでしょ?これ、何の意味も無いデカいデータをディスクの余白にびっしり書き込んで、強制的に上書きして、完全に消しちゃってるの。ここからじゃ消されたデータが何かは分からないね。なんで消されたかもしれないファイルがあるってわかったの?」

「それは、ファイル名はファイルが作られた日付を末尾に入れるように社内でルールが決まってたらしいんですが、それが不自然に抜けてるらしくて。」


堀口が頭を掻きながらそう言った。


「データセンターって監視カメラあるんかね?無いんかね?廊下は?廊下の監視カメラの画像とかで、ちょっと誰がファイル消したのか探ってみようかね。」


警備室のカメラの映像は殺された被害者の菱尾室長だった。


「これは被害者の足取りからも分かっていました。」

「この時に消したかな。」


ジュンさんは警備室のカメラの映像を腕組みしてみている。


「これ、ディスクみたいなの持ってるように見えない?CD-Rかな?これ見おぼえあるぞ。」

「そう言われるとそうですね。」


ジュンさんが電話を取り出す。


「……ああ、もしもし、俺、ジュン。放火殺人事件の現場の燃え残りのゴミに割られたCD-Rなかったっけ?……やっぱりあるよね?OKありがとう。」


ジュンさんが電話を切った。


「ゴミの中にCD-Rの破片残ってたって。ちょっと時間頂戴。データ復元するわ。」


久谷と堀口がジュンの顔を見ている。


「割れたCD-Rですよ?」


ジュンさんはさらりと。


「普段はやらないけどね。この事件面白そうだから特別ね。」


と言った。ジュンさんは帰りの車の中で方法を二人にレクチャーした。


「まず割れたCD-Rをきれいに並べるだろ?そうしたら、そいつを顕微鏡で写真撮るの。」

「顕微鏡?」


運転しながら久谷が反復する。


「そう、顕微鏡。CD-Rの書き込みっていうのはゼロとイチだけで、それはCD-Rのアルミホイルみたいな記録層に明けられた小さな穴として記録されるから、それ全部写し取ってやればCDイメージっていうデータができんのよ。そうなったら、もう読めちゃうから。曲げたり、ハサミで切った程度じゃダメよ?粉々にしなきゃ。」

「ホリグチ博士わかる?」


堀口は


「正気の沙汰じゃないっていうのは分かります。」


と控えめに答えた。

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