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少年の青

作者: 白丁花

僕の先はに真っ暗。

ただずっと音を聞き、風を感じている。


いつからこうしているのかもわからない。もしかしたら今、突然意識を得たのかもしれない。

僕は少しずつ目を開け始めてみる。


徐々に、徐々に光が僕の体の中に入ってきた。

眩し過ぎるこの世界、僕は世界のどこでも見れる。


大きい大陸から小さい島々まで、西から東、南から北まで、世界の端から世界の端まで。

ピントを合わせるのに一秒とかからない。きっと人が左から右を見るのに簡単と思うような感じと同じだと思う。


思うと言うか常識的なことなんだ。

けど同時に見れるわけではない、あくまですぐに目で追えるということなだけ。






僕には過去が見える。地球が誕生したときから火の世界だったときのころ、氷だったときのころ、緑が溢れていたときのころ、そして生命が生まれ始めたときのころ。


僕はいったい何者なのだろう。もしかして霊体か?違う。


僕には過去があるが、人であったころの記憶は全くない。

逆に僕は彼らやその周りのすべてをずっと傍観していたんだ。


じゃあ、「時」そのものなのかな?それも違う気がする。

だって彼は時間には非がないけど現時点での出来事を一個しか把握できない。

その場所で瞬間瞬間を把握しているだけ。


けど僕は時を把握しているんじゃなくて時を記憶しているんだ。






僕には実体がない、何かを触れることもできない。


僕は人の体を突き抜ける、だって手もなければ足もない、体なんかあるわけもない。


なんで意識なんかあるのかな?


けどなんで、生きているのかな・・・。


確かめたい、聞きたい、でも無理。


心の中ではずっと喋っているのに声にならない。


人は僕を相手にしてくれない。


話しかけているのに、目が合っているのに。


いや、目が合っているんじゃない、彼らはいつも僕を見ているんだ。

なのに平気な顔して無視する。


心あるものが、どんなとき一番悲しいと思う?


それは存在を肯定されないときだ。






僕には決定権がない。


何かしたいと思ったって誰も協力してくれない、そりゃそうだ。


だって誰も僕を構ってくれないんだし。

なのに僕はこれからもずっときっと永遠にこうしてなきゃいけない気がする。


だから最近は、よくこの場所で一人で泣いている。


僕は、だんだん小さくなってきてる。


大昔はあんな大きかったのに・・・。


生命ある者はだんだん萎れたり小さくなっていく。


今までずっと君たちを守ってきたのに僕もそろそろ死んじゃうのかな・・・。







「そんなことないよ。」


後ろから・・・


そして一瞬にして僕の体に激震が走った。

おそるおそる視点を変えてみる。


少年と少女、二人が対になっている。


男の子がこっち、僕に気づいているようだ。


女の子のほうは少年が僕のほうを見ているのを見て不思議そうな表情を浮かべている。


僕は自然と涙が溢れた。

無条件に、とめどなく涙が出て、あたりを一瞬にして濡らしていく。


とにかく嬉しかった。

ずっと誰も気づいてくれていなかったから。




「何で泣いてるの?」


君が僕に気づいてくれたから、嬉しかったんだ。


君たちはみんな僕のことを無視するでしょ?




「そんなことないよ。みんながそんなんじゃないんだ。僕みたいに君に感謝してる人だっているんだ。」





「ほら、あれを見てみてよ」


そう言われてフっと視点を変えてみる。


小学校のグラウンドの端側、小さな苗がみんなに見守られてすくすく育っている。




「僕は君を見ている。知っている。君の成してきた功績や偉業を、そしてこれからのことも。だから僕は君を裏切らない。」


「うん。」






僕は涙が止まり満面の明るい笑みで答えた。


気づけば長い梅雨が終わり、太陽が顔を出し、もうすぐ夏本番だ。





「はぁ、きれい。」


隣にいた女の子が感動してる。

他の人たちも声をそろえて綺麗だと誉めてくれている。


気持ちがすごくいい。


今、幸せを全身で感じている。







7月25日、今日の天候30℃曇り一時雨のち晴れ。


西の大地から東の大地へ僕は順風満帆。


やっと、北半球は今やっと色づき始めている。


僕を、感じ始めている。







青々した若葉の木の上、僕の体には今、大きな弧を描く虹が・・・・


架かっている。


では、夏をはしゃいでください

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