書きたいモノを書く
読者のニーズがどうのこうのと言う前に書き手は自分の心に問い掛けるべきです。なぜ書きたいのか、と。
答えは存外、簡単なことなのです。
「ここに(胸に)しこり(どこにぶつけたらいいか分からない気持ち)があるからさ」
なろうテンプレが確立してからというもの、批判の声が大きくなってきています。
「あんなものは作者の独りよがりでなにひとつ面白くない」「作者の自○や○○ニーのための小説だ」「中学生でもまだマシなものを書く」と。
確かに一般文学や非なろうラノベを読む層が言っていることは正しい一面もあるのでしょう。
しかし一般文学の作家とて、売れることによって社会的欲求を満たし、書くことによって自己承認欲求を高めているのです。
ジャンルの違いだけで作品をこうも叩かれるいわれはないはずなのです。
さらにアマチュアに限れば、出版するわけでもないので利用規約に沿って思いのままに書いていいはずなのです。
書きたい通りに書いていいのです。
と、ひとまず結論が出たところで。
ここからこのエッセイは書きたくても思うように書けない人に、いくつかのアドバイスとなろうテンプレを改めて考え直すきっかけになるようなことを書いていきます。
まず、書きたいものはなんなのか。
木こりの泉の場面のように素直な気持ちで考えてみましょう。
泉の女神「あなたが書きたいのはこの『胸アツなバトルアクションモノ』ですか?
それともこちらの『胸キュンな青春ラブストーリー』?」
いえいえ。どちらも素敵ですが違いますよね。ここで変に見栄を張ったり自制心が働くと書きたいモノが書けなくなります。それは困りますよね。
正直者ならこう答えます。
正直な方「私が書きたいのは『自己投影のできる主人公で、なおかつ自己投影することでストレス解消を目的とする、やりたい放題ストーリー』です。」と。
もっと具体的なことを言うならば、
「なんの取り柄もない主人公がチートをもらって異世界で欲望の赴くままに暮らす話です」などなど。
いわゆるところの異世界テンプレに沿った、誰のためでもない自身のための世界にひとつだけの話。
書きたい気持ちはありますか?
あるという方はさっそくあなただけの物語をはじめましょう。なに、それほど難しいことではありません。
まず、主人公を決めましょう。
出自や能力は適当で構いません。ご自身と同じ土地生まれの平凡な主人公でよいのです。紹介したらすぐ異世界に行きますから。
次に名前ですが、名前は難しいところです。
大半の方はご自身の名前をそのまま使うのは気恥ずかしいかと存じます。だからといって自分とかけ離れた名前では意味がない。
ですので連想できるような関連性の高い名前や、響きの似た名前をつけます。
作中のキャラが主人公の名前を口にしても、あくまで主人公が呼ばれただけ、と言い訳がたつような主人公にします。
そして次は作中キャラ。
村人やモブはできるだけ名前も地味なものに。大して活躍もしないキャラに時間をかけるのはもったいないのでぱっと浮かんだものにします。
重要なのはヒロインと敵の名前です。
ここいらで、青春のあの頃を思い出してみましょう。
密かに想っていた意中のあの子。顔も見たくないほど大嫌いだったあいつ。など。
これも、現実をそのまま使うのが憚れる方は元の名前をもじって響きの近いままで保ちましょう。容姿や性格もできれば本人に寄せたままで。
そうすれば敵として倒す時の優越感に浸れますし、ヒロインとくっつければ叶わなかった青春の一ページが始まります。
元のままでと言いましたが、都合よく改変するのもありです。
敵にしたあいつを小心者でヒステリックな人物にしてみたり。
あの子は名字でしか呼んでくれなかったのをヒロインには名前で呼ばせてみたり。
とにかく、自身の代わりの主人公が作中で活躍するのを読んで楽しくなれればそれでよいのです。
さあ、ここまでで主人公は異世界に行き、あいつによく似た敵を倒し、あの子とそっくりなヒロインと仲良くなりました。
ここから先はどうするか。
思い出してください。
自己投影型の主人公であなたはストレス解消になるようなストーリーにしたい。
なら、どうするか。
真面目な話をしますと、このエッセイは流行の劣化版コピーを書いている人や、自己投影型の異世界転生チーレム(チート+ハーレム)無双を書いている人の心に刺さる可能性がありますので、あらかじめご了承下さいませ。