仕事
プロットを考え直してたらこんなにもかかってしまいました
次からはもう少し早くあげていきます
盗賊団【ヘイスト】に拉致されてから10日が経った、まあ拉致っていっても最初だけで今は家政婦みないなことをしているんだけどね
あの日盗賊達と心を通わせた俺は盗賊団に少しの間置いてくれないかと願い出た、行く当てもなく放浪としていてもしかたない、なので当分の間ここに居候しようと考えた。勿論向こうは止めてくれと拒否してきた、理由は主に冬歌だ、あの謎の現象が盗賊達のトラウマになってしまったようだ。そこで俺は置いてくれないなら冬歌が何をするかわからないぞと脅し、ここにいさせてくれるなら俺が冬歌を止めてやろうと、交換条件を提示した
最初は渋った盗賊団の頭ことバイスさんであったが冬歌を近づけたら返事1つで了承してくれた、なんて優しい人なんだ
そんなわけで居候しているわけだが、何もしないでいるのもあれなんで家事手伝いをすることにした
盗賊団といっても別に悪い奴らではなく、いや、まあ悪い奴らではあるんだけど、ヤンキーなど特有の身内に優しいシステムが出来上がっていた。なので居候とはいえ俺もそのシステムに入れたらしく、邪険にはされなかった、むしろなんか尊敬された
冬歌を唯一どうにかできる俺はいわば英雄みたいな物らしい、まあ連れてきたのはお前らなんだけどな
「そういえば、バイスさん達は普段何してるんですか?」
家政婦として日々の仕事はかかさない、今もこうしてバイスさんの部屋を掃除している、そんな中ふと気になったことを机に向かいなにやら書物を読みふけっていたバイスさんに問いかけた
バイスさんは呼んでいた書物を畳むとこちらに向き直った、その時俺は見逃さなかった、裸の男と裸の男が絡み合っている挿絵を
この人もしかしてバイじゃなくてゲイなのではないだろうか
「何だ突然……そうさな、普段は森の中で獲物を探してるな」
この獲物というのは動物だけではなく人間とかも含まれているのだろう、現に俺も最初そう呼ばれたし
「主な狙いは動物や人間だがそれ以外にも目的はある、この前お前を見つけた時は、別のものを探している最中だったんだぜ?」
「ついでってことですか……」
ついでで捕まえられるこっちの身にもなってほしい、いや、俺達が目当てってのも困るんだけどさ。見逃してくれてもいいじゃないか
「でも俺らが目当てじゃなかったなら、何を探してたんですか?」
「聞きてえか、ちょっと待ってろ」
そう言うとバイスさんは引き出しの中を漁り始めた、見ると中には本がギッシリと詰まっていた。見た目に似つかわしくないなと思ってしまうのは仕方がないことだろう
黒表紙の一冊を取り出したバイスさんはそれを俺に放り投げた、それを両手で受け止める
「開いてみな」
そう言われて中を覗いてみる、書いてあったのは謎の絵画だ。ペラペラとめくって見るが全て絵画で出来ており、字などは一切使われていない
「それは俺が子供ん時に見つけた本だ、内容は……話すと長くなっちまうからな、要点だけ掻い摘んで説明するとだな。俺たちのご先祖様達が残した伝説の魔具があるらしいんだ、それを探してた」
魔具?なんだろう、初めて聞く単語だ
『魔具とは魔法の力が込められた道具のことです』
メルさん久しぶりのご登場だ、今まで一切言葉を発さなかったからな、首のこれが壊れてるのかと思ったぐらいだ
『いたって正常に機能しています、今まで声を出さなかったのは、その必要がなかったからです』
まあそう言われるとそうなのだが、少しぐらいは声を出しても良かったんじゃないか?
『善処します』
いちいち返しが冷たいんだよな、まあそれは個性ってことなんかな
「どんな物なんですか?」
メルのことはおいておくとして、その残された伝説の魔具のことが少し気になった
「形は知らんが、その伝説の魔具の力は強大らしく、やろうとすれば世界すら改変できると記されていた」
「改変って、なんだか怖いですね」
「まあな、でも夢があるだろ。それさえ手に入れちまえばよ、本当の意味で神様になったようなもんだ。全てが俺の物になる」
神様、そんな物は存在しないとは思う。でももしこの話が本当なら……確かに神様のような力だ、そしてそれを手に入れた人は、神ではなくとも神の力を手に入れたことになる
全てを改変できる力、魔法がある世界ならなくもない話だ
「バイスさんはそれを信じているんですか?」
「勿論だ、じゃなきゃこんなことしてないさ。最初は傭兵にでもなろうかとも思ったんだ、そこでなら色々な情報が入ってくるしな、だが誰かの下につくってのが苦手でな、誰の下にもつかずに自由に出来るのは盗賊しかないと思ってな」
自由に出来るからといって盗賊になるとはなんて迷惑な人なんだ、冒険かとかにでもなればよかったのに。まあこの世界にギルドや冒険者などがあるかは定かではないけど
それにしても、見た目に反してロマンチストな人だな
『人は見た目では判断してはいけませんね』
確かにそうだな
「まだその伝説の魔具はみつかってないんですか?」
「そりゃそうだろ、第一に見つかってたらこんなことしてねえよ」
「確かに……何か手がかりみたいなのはないんですか?」
「それがないから困ってるんだ、王都の城の中にある書庫とかにならあるとは思うんだけどな。まあ一般にい見れるところには置いてないんだろうけどな」
バイスさんはだからといって王都にはいけないしと続けた、盗賊なのだからそういうところにいったら一発で掴まってしまうのだろう
バイスさんとのおしゃべりはこのくらいにしてそろそろ薪の準備でも始めるか
「それじゃあ俺はこれくらいで、薪の準備始めてきますね」
「おう、またなんか気になることがあったらこいよ」
「はい、失礼します」
軽く頭を下げてバイスさんの部屋から出る、そのまま外まで向かう
この盗賊団の家は中々大きい、団員数は総じて十数人もいるわけだし、それが全員で生活してるわけだからそれなりの大きさになる。例えるなら普通の一戸建ての家を五軒ぐらい縦に横に繋げたぐらいの大きさだ。盗賊なのだから隠れてないといけないのではと思うだろう、そこはよく考えられている。この家の真後ろには大きな山があり、半分ぐらいはその山の中に作られている、出ている部分には土が被せられている、そこだけボコっと出ているのでは不自然だ、自然に見えるようにその周囲にも土を大きく盛っている
外にでて同じように隠された小屋から薪を持って帰る時に見ても違和感が感じられないほどだ、バイスさんの用心深さが出たのだろう
薪は色々なことに使われる、お風呂を沸かしたり料理に使ったりだ。そういうことの出来る魔具もあるらしいけどここにはないらしく、術式を使える人もいないためここでは原始的に薪を燃やしている
薪を大浴場と台所に置きまた俺は外に出た、今もって来た分の薪をまた作らねばならないからだ、木から作り出した薪は水分を含んでいるらしく、そのままじゃ燃えないらしい、だから一回一回補充しなければならない
といっても木を切り倒すのとそれを幾分かに分けるのは他の人がやってくれるので、俺はそれを手ごろなサイズに切り分けるだけだ。鉈の先端部分を木に打ち付け少し刺す、それを上から振り下ろす。綺麗にはまだ割れないけどまあよしとしよう、それを日が暮れるまで延々と続けた
夜になり一同が勢ぞろいした、場所は大きな居間、一同が入っても苦しくないほどに大きい居間にいる目的は一つ、ご飯だ
晩御飯はここにいる人にとっての楽しみの一つだ。わいわいと賑わっている中、冬歌と一緒にお盆に数枚のお皿を載せて列に並んでいた。バイキング方式になっていて皆が同じようにお盆を持っている、数十人のお皿に分けるのは相当な手間になるだろうからということだろう。
適当にスープと野菜と肉を盛り付ける、冬歌は高さが届かないらしいので俺が同じようによそった
いくつも繋げられた長机の適当な場所に座る。フォークで肉を刺し口に運ぶ、数日間いるが出てくる食事は大体同じなので少し飽きてきた感があるな。それでもやっぱりおいしいんだけどね
大味な肉は中に肉汁がぎゅっと閉じ込められており噛むたびに旨みが溢れてくる、野菜は自家製のドレッシングがかけられていて独特な味だ、スープは塩コショウが効いていて次をそそられる
ここ数日の食事で気づいたことがある、冬歌は人参が苦手なのだ、スープの具材の中に入っていてそれを毎回俺のスープいいれてくる、最初は頑張って食べさせようとしたが途中で諦めた、どうしても食べないし挙句の果てには口に無理矢理入れたのをそのまま吐き出した、今では俺のスープの中にポイポイ投げ入れてから食べるようになった。流石に捨てるのは勿体無いので人参は俺が食べるしかない
「なあ、なんで人参嫌いなんだ?ピーマンとかは大丈夫じゃないか」
「おいしくないから嫌い」
「おいしくないからって……まあ子供に何言ってもだめか、そのうち食べられるようになるだろ」
冬歌のことは諦め肉を口に運びながら現状を整理した。
まずこの世界についてだ、ここはメルの言うように異世界だ、少なくとも俺がいた世界ではないはずだ、それはバイスさんの術式を見てから確信に変わった
使ったのは簡単な術式らしく、俺が持ってきた薪に火を付けた【火種】という術式だ。これぐらいなら誰でも使えるらしく、ヘイストの皆が使えるらしい。俺も試してみたがメルの言う通り使えなかった、バイスさんは凄く驚いていた
とにかく現状俺はこの世界を生きていくしかない、そうなると職を得るよりもまずこの世界について学ぶ必要があるな
新たな目標も立てたところで丁度ご飯も食べ終わった、冬歌も丁度食べ終わったみたいだ、お盆を片付けて分け与えられた部屋に戻ろうとした時だ。バイスさんの声が部屋いっぱいに響いた
「おいお前ら!仕事だ!!」
ここにおいての仕事とは盗賊としての仕事、つまり人を襲いに行くということだ
俺はいつもその間は部屋にいろと言われるから関係ないのだが今日は違った
「夏目、お前も今日は来い」
俺に初の召集がかかった