傭兵会社
帰りは傭兵会社ダイアスが用意していた馬車に乗って行くことになった、といっても例のごとく引いているのは鱗馬だ、商人達の馬車は既に盗賊達によって解体されており使用できなくなっていた。だがそれを考慮していたらしく、台数は多めに持ってきていたようで、一台に無理矢理詰められたりはしなかった
同じ馬車に乗っていた商人には感謝を言われ続けた、言い争っていた二人は坊主頭の方がジェイルさんで、
後頭部で一本に縛っている長髪の方がホロイさん。そんでもってその二人を止めた長髪の女性がケインさんだ、今度家に買い物に来てくれと言われ、その時は安くしてくれるらしい
馬車が街についたのは日が落ちてから少し経ってからだった、本当はもっと遅くなると思ったんだけど、鱗馬の足が思ったよりも速く、着くのにそう時間は掛からなかった。以外だったのはあまり馬車が揺れなかったことだ、地の磐石という術式を馬車の足に使用していて、言うなれば緩衝材の役目をはたすそうだ
そんな快適な旅を遂げ、めでたく街に入るための門の前についたわけだが
「くそ!」
この通り、デミアさんはご立腹なのだ。理由は至極簡単、バイスさん達盗賊に逃げられたからだ
盗賊を縛る為に使われていた縄はただの縄ではなく、【束力の縄】と言われるもので、術式の使用を制限する縄だ、なのでデミアさん達も安心していたのだが。どうやってかその縄から抜け出したらしく、街についた時には既に馬車の中はもぬけの空だった。勿論中で盗賊達を見張っていた人もいたのだが、その人達は気
絶させられていて、起きた時にはいなかったそうだ
あの時俺に自分のことを考えて動けといったのは逃げる算段があったからだったのか、と今更思っても遅いのだけど、まあ俺としてはあの人達が逃げようが逃げまいが、関係ないからいいんだけどね
「す、すいません、俺達がついていながら」
「いやいい、すぎたことをいってもしかたねえ。そんなことよりも、わかってんだろうな」
盗賊達を見張っていた傭兵が申し訳なさそうにデミアさんに頭を下げる、それをすぐ止めさせたデミアさんがそんなことといった、盗賊に逃げられたことよりも重要ことがあるのだろうか
「わ、わかってるかって、何がですか?」
どうやら傭兵の人もわかっていないようだ
「まったく、今回の仕事内容はなんだ」
「たしか……盗賊に捕らえられた人質の救出でしたっけ」
「そうだ、そして今回俺達は人質を見事救出し、そのまま帰ってきた。盗賊なんぞは捕らえもしなかったし出会わなかった、いいな?」
いやそれは無理があるんじゃ、出会わなかったって盗賊は何してたんだよ、聞かれたらどうするんだか、まあ俺には関係ないからいいんだけどさ
「な、なるほど!」
その提案に横にいた銀色のフルプレートに身を包んだ傭兵がなぜか妙案だと手をたたいた、ていうかそれでいいのか、さては傭兵も盗賊と同じようにアホが多いな?盗賊に捕まったという情報からここに来たはずなのに、出会わなかったって流石に無理があるだろ……とは思うけど口には出さない
「ばれたら社長に殺されちまう、口裏を合わせろよお前ら」
「「「はい!」」」
うわ、嘘がばれて怒られてる未来が見える。あまり関わってると関係ない俺にまでとばっちりっが着そうだ、ここはさっさと寝床を探して、明日にでも職を探そう
「おおっと、そうだ。夏目、お前もついて来い」
「えっ!そ、それはどうしてでしょうか……」
突然の要求に少し動揺してしまう、無関係の、それも見ず知らずの俺を同行させようとする意図はなんだ?少しの思考を働かせるも何も出てこない、少ししてデミアさんが続けた
「どうだ、内で働かないか」
「え?」
「行くところがないんだろ?だったら傭兵としてダイアスで働かないかって言ってんだよ、俺が社長に口聞いてやるからよ」
これは思ってもみない提案だ、職が向こうからやってきた。無職では金銭の獲得は困難だろう、生活していくために仕事を探していた俺からみれば願ったりかなったりだ
「本当ですか、ぜひお願いします!」
「よし、じゃあさっさと行くぞ」
魔物の進入を阻む為に作られた壁は高く硬い石のような物で作られていて、外から中が見えなくなっているようで、唯一中をの様子を覗けるのは1つの大きな門だけだ。その門を前にいる入国審査をしているのだろう人と、デミアさんが少し話を始めた、そしてまた少しして話が終わったデミアさんが戻ってきて、門の中に誘導を開始した