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魔王は友を思いみる  作者: こまど
12/16

初の魔物

夜中一度起きてしまった俺はその後ぐっすり眠ってしまったらしく、次起きた時は既に日は天辺まで上ってしまっていた

相変わらず寝ている冬歌を起こし下へと向かう、朝食の時間には間に合わなかったので昼食まで逃すわけには行かない

一階につくと既に皆は昼食を食べ始めていた、どうやらギリギリ間に合ったみたいだ

お盆を持ち好きなようによそい、冬歌のも同じように予想。適当な場所に座り食べ始める

ここの朝はスープ、それに野菜の類が出てくる、肉などのこってり系はまず出てこない、ここの料理を作っている人のこだわりなのだろう

お昼からは打って変わってこってり系重視になってくる、肉の次に肉、さらに肉と合わせて最後にスープなどで口をさっぱりさせるのがここのやり方だ。栄養面で偏りが出てしまうのが少し気になったりするのだが、それでも病人などが出たことがないというのだから、なんともたくましい連中だ

冬歌はあまり食べないので肉二枚にスープだけでお腹いっぱいになるらしい、けどここの料理は色々工夫がなされていて、肉一枚にしたって数日食べているが同じ味付けは今のところ出ていない、毎日毎日味が変わっていってる

昨日は玉ねぎを摩り下ろした物に特性のたれをかけられていた、そして今日は柑橘系の汁がかけられていてさっぱりしている。盗賊の楽しみの一つがこういう食事らしいので、特に気を使っているのだろう


いつものようにおいしい肉を口いっぱいに頬張っていると後ろから声をかけられた、見るとバイスさんが立っていた


「今日のお前の仕事は見張りだ、魔物とかは他の奴が始末してくれる、そういうのを見て色々学んで来い」

「わふぁひふぁふぃふぁ(わかりました)」

「それじゃあさっさとその口の中のもん飲み込んで行って来い」



見張りといっても簡単特別何かするわけではなく、見晴らしのいい大きな木に登り、何か変なことがないか見張る程度らしい。現に俺は暇すぎて今にも寝てしまいそうだ、冬歌は既に寝てしまっている

何も変化は起きずに鳥のさえずりだけが響いていた、涼しい風が頬を撫でる、温かい日差しとあいまってもう限界だ。俺も寝てしまおう、そう思ったとき声が響いた

それは人間の物ではなく、獣の鳴き声だった、その瞬間他の見張りをしていた盗賊達が動き出した


「おい、お前もついてこい。これも見張りとしての役割だ」

「わ、わかりました。おい起きろ冬歌、動くぞ」

「……ん、わかった」


冬歌を起こし木から飛び降りる


「よし来い、ゆっくりだぞ」


そして飛び降りてきた冬歌をキャッチして走っていった盗賊を追いかけようとする、が


「お願いだから走ってくれ冬歌、置いてかれちゃうだろ」


一向に走ろうとしない冬歌のせいでどんどん距離が離れてしまう、そこまで走りたくないのか

仕方ないので冬歌を背中にしょって走り始める、唯一の救いはまだ子供だからそこまで重くないことだ、まあそれでもおぶって走るのはきついんだけどな

走って数分で目的の場所までたどり着いた、森の中の少し開けた場所にそいつはいた

一見すると森のどこにでもある木々と同じに見える、だが決定的に違うのはその大きさだ。体回りは直径八メートルはあり、そいつには顔があった、不気味につりあがった口に縦に長い目。枝一本一本がそいつの腕なのだろう、波打つようにうねっている

根は地中にはなく、地上で足として動いている

他の盗賊達はそれを取り囲むようにして待機している


「あれがさっきの声の主ですか?」


近くにいた盗賊に聞いてみると首を横に振り違うと言った


「あいつは声を持っていない、たぶん発声器官がないんだろう、あの声はあいつに食べられた他の魔物の断末魔だ」

「ま、魔物が魔物を食べるんですか!?」

「そうみたいでな、まあそれだけなら魔物が魔物を退治してくれるんで、こっちとしてはありがたいんだけどな。魔物を食べるとその魔物の持っているエネルギーも吸収しちまいやがる、結果より強い魔物が生まれちまう」


食べれば強くなっていくなんて、それなら早めに退治しておかなければ、大変なことになってしまう


「お前は魔物と戦ったことがあるか?」

「ないです、魔物を見たのだって昨日が初めてでしたし」

「ああ、鱗馬ステフクインだな、あいつには気をつけろよ。気性は荒くないが一度キレたら押さえ込むのは至難の業だ。まあいい、今日は見とけ」

「わかりました」


そう言い盗賊は他の皆と同じように木に魔物のもとに行った

俺は冬歌を背中からおろして魔物との戦いを観察し始めた、木の魔物は盗賊達を警戒してか無数の枝を絶え間なく動かし続けている

始まりは静かだった、木の後ろ側にいた盗賊が一斉に武器を抜き放ち走り出した。木はそれを枝で防ごうとし、鞭のようにしならせ攻撃した。それを待っていたのか一旦動きを止めた盗賊は確実に一本一本枝を切り落としていった

魔物はそれが気に入らないらしく、一度枝を引っ込めると複数の枝を一つにまとめて横からなぎ払うように振った。

複数の枝で固められた枝は硬く、さっきのように切り落とすのは無理なようで盗賊達は避けに徹し始めた、だが一本にまとめているにもかかわらず一度も攻撃が当たらないのに腹を立て、根が地団駄を踏み出した

それを見た前側にいた盗賊が一斉に木の魔物に向かって走り出した、だが流石に魔物もそれを察知し後ろに向けていた枝を向かってきた盗賊に向けて放った

その瞬間後ろ側の盗賊が一斉に飛び掛った、前に振ってしまった枝は間に合わず、何にも邪魔されることもなく、飛び掛った盗賊は一斉に斬りかかった。だがなぜかその標的にされたのは上部にある細い枝とその枝についてる葉だった

いくら強大な木の魔物といえど、数人がかりで斬られたのでは、上部の枝葉は全て刈りつくされてしまった


「今だやっちまえ!!」


一際大きい声を発する、すると前方で攻撃をかわしていた盗賊数人が一斉に術式を使い始めた


「「「【散火ストレウファイア】」」」


生まれた無数の小さな火は縦横無尽に、踊るようにして木の魔物に襲い掛かった

体が木でできている木の魔物に火が触れた瞬間、一斉に燃え広がり、そのまま火が燃え尽きるまで立ち尽くした後、ボロボロと崩れ落ちていった


これが俺の見た最初の魔物と人間の戦いだった

戦闘が終わり、盗賊達は自分の持ち場に戻っていった

そんな中俺の方へ一人の盗賊が寄ってきた、最初に俺に見ていろといった盗賊だ


「どうだった、結構迫力あったろ」

「す、凄かったですよ、よかった一緒に戦えとか言われなくて」


そういうと盗賊が笑い出した


「ははは、流石にそんなこと言うわけがないだろ。まあ見張りってのはこんな感じだ、お前もさっさと持ち場に戻れよ」

「はい、わかりました」


戻っていく盗賊を見ながらさっきの戦闘について考えた、なぜすぐ燃やすことはせずに一度頭を刈り取ったのか


『それは相手が【木の婆霊(オルズツリー)】だからです。この魔物は死ぬ間際に頭部の葉を術式で強化し硬化させます、そして頭部を爆発させその勢いを使い、全ての葉を四方へ飛ばします。それをさせないためには頭部から、葉を全て切り落とすか、術式を使う間もなく倒す必要があります』


メルの説明はわかりやすく、理解はできたがそれを行うのは相当難しい、ましてやあんなに巨大な魔物相手にか。この世界で生きていくにはあんな魔物達とも戦っていかなければいけない、知識だけじゃなく身体のほうも鍛えないといけないな

少し魔物だった黒い物を見ていると、少しずつ小さな粒子になって消えていった


『還元ですね、魔物は死後少しすると術式などに必要なエネルギーになり、世界に還元されます』


還元とか言われてもよくわかんないな、そんなことよりも早く持ち場に戻ろう、ちょっとばかし長居しすぎた。怒られるのはごめんだからな

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