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魔王は友を思いみる  作者: こまど
11/16

捕獲

ヘイストの隠れ家に着くと中には逃げた商人達が捕まっていた

後ろ手に縄で縛られており、足も同じように縛られていた


「これで全員だな?」

「はい、全員同じ方向に逃げていたので間違いないかと」

「そうか」


バイスさんが話しているのが聞こえてきた

全員か、一人も逃すことなく捕まえるなんて芸当をしてのけるその力は流石だ。あの少年だって俺がいなければバイスさんに見つかっていたかもしれない


「バイスさん、この人達はどうするんですか?」

「ん?ああ、いつも通りだな、情報を聞き出したら男は殺して、女は使ってから殺す」


使うというのは慰みに使うということだろう、酷いとは思うがここは盗賊団の根城で、バイスさん達は盗賊だ。俺にはどうすることもできない


「情報ってなんですか」


俺は気を紛らわせるために話を続けた


「俺達は森からでて人がいるところにはいけない。行くとしてもできるだけ顔を見られないようにして、用事だけを済ましてすぐに出なくちゃいけねえ、じゃないと捕まって死刑になっちまう」


この世界にも刑罰はあるようだ、まあそりゃあるか


「だから情報が手に入ることが少ない、だからこうして捕まえた奴らから、今の世の流れとかを聞く必要がある」

「それってどれくらいかかるんですか?」

「長くて一週間、短くても三日は掛かるな。最後に聞いたのが二ヶ月前だからなその間のことを聞かなきゃならねえ」

「二ヶ月ぶりって、そんなに人が来ることって少ないんですか?」

「いや、だいたいの奴らは傭兵を数人雇ってる、だから生きて捕まえるってことが難しくなっちまう。だがこいつらが連れてた傭兵はたったの一人だ」


その傭兵というのはあの光を放つ術式を使ったレイルさんと呼ばれていた人だろう


「それぐらいなら今日みたいに、その傭兵も含めて捕まえることが出来る」


傭兵ごと捕まえるなんて大胆なんだ


「とりあえず今日は眠れ、初めてで疲れただろう」

「はい、わかりました。行こうメル」

「うん」


俺達はそのまま部屋に戻り大人しく寝た、走ったり森の中を歩いたりで疲れていた俺はすぐさま眠りに落ちることが出来た

だが寝るのがすぐなら起きるのもすぐだったようで次起きた時、外はまだ暗かった

横を見ると冬歌はまだ寝ていた、ベットは一応二つあるのだが冬歌が一緒に寝ると聞かず一緒のベットで寝ている。少し甘やかしすぎに感じられるがこのぐらいの歳の子は言うことを一切聞かないので仕方ない

まだ夜中なのでもう一回寝ようとするも一向に眠れる気配がしない、少し外の空気でも吸ってこようかな

冬歌を起こさないようにベットから出る、と俺がいないことに気づいたのか冬歌が目を覚ました


「すまん、起こしちまったか」

「ん、大丈夫。どこ行くの?」

「ああ、ちょっと外の空気でもと思ってな、冬歌も行くか?」

「行く」

「それじゃあ寒いだろうから何か一枚上に着た方がいいな」


適当な服を冬歌に投げ渡し着替えさせる、そして例のごとく手を繋ぎ下まで降りる。手を繋いでいると基本機嫌が良くなるのは最近気がついた、本人曰く安心するらしい

階段を下り玄関まで来たところで話し声が聞こえてきた、少し気になったので声のした方に向かう、場所から考えておそらく捕まっている商人達だろう

ドアを開けると警戒されてしまうので開けずにそのまま聞き耳を立てる


「ああ、何でこんなことになっちまったんだ」

「すまん、俺がふがいないばかりに」

「レイルさんのせいじゃありません、むしろもっと傭兵を雇うべきだった、私達が悪かったんです」

「確かに、お金をケチったりしなければこんなことにはならなかったかもしれないな」

「それを言ったらこんなところを通らなければ、もっと安全な道を選べばよかったんだ」

「仕方ないだろ、この道が一番の近道だったんだから。選んだ俺が悪いってのか、他の皆だって何も言わなかったじゃないか。それよりもどっかの誰かさんが遅れてこなかったりすれば、あんな場所で夜営しなくて済んだんだ」

「なんだとこの野郎!俺が悪いって言うのか!」

「やめなさいあんたら、今更そんなこと言ったってしょうがないでしょう!」


うわぁ、凄い険悪な状態になってる。顔が見えないので誰が喋ってるかとかはわからないけど、一人の女性が言い合っていた男二人を制止していた

それからしばしの沈黙が流れた、そんな中男二人を制止した女性が声を漏らした


「あの子は無事かしら……」


あの子ってたぶん木の穴に隠れていた少年だ、そしておそらくあの女性は母親か何かだろう


「大丈夫だろう、幸いにもここにはいないみたいだし、うまく逃げられたのだろう」

「でも、私達が生かされているのは、あの人達の言う情報が目的なのでしょ、だから何も知らないあの子は必要ないと思われて……」

「それはないから安心してください」

「あ、あなたは」


っと、つい入ってきてしまった。今にも泣きそうな声に体が自然に動いてしまった


「確か盗賊達と一緒にいた」

「なんの用だ!」

「そ、そんなことよりも安心してくださいって、いったいどういうことですか!」」


色々な人がいっぺんに話し始めた


「ちょ、ちょっと落ち着いてください、寝ている盗賊達が起きてしまいます」


俺の言葉を聞いて自分達の声が知らずの内に大きくなっていたことに気づいたようで、すぐ声を抑えてくれた


「まず勘違いはしないでください、俺は盗賊達の仲間ではありません。皆さんが捕まるよりも数日前に同じように捕まったんです」


まあ俺の場合は逃げることも出来ずに捕まったんだけど、今はそれは関係ない


「誰がそんなこと信じるか、俺達を騙してどうしようっていうんだ!」

「あんたは少し黙ってちょうだい、それよりも安心してくださいって言っていましたよね。あの子は無事なんですか……!」


男を抑えて長髪の女性が身を乗り出して来た


「木の穴の中に隠れていました、盗賊には気づかれていないはずなので今頃は逃げ切れているはずです」

「ほ、本当ですか!よかった……」


無事を知って安心した女性は涙を流し始めてしまった


「ですので安心してください」

「はい、ありがとうございます、なんとお礼をしたらいいか」

「でも、あなた達を助けることは俺にはできません、すみません」

「いえ、あの子はここにいる皆の子なんです。あの子が無事なだけで私達にとっては救いになります」


なんだかやるせない気持ちになってくる、そんな気持ちから逃げるように俺はこの場を後にした

部屋から出るとそこにはバイスさんがいた、話を聞かれていたかもしれない……少し体に力が入る


「おう、こんな時間にどうした」

「いえ、少し早く起きてしまって、眠れなかったので外の空気でも吸ってこようかと思って。そしたら声がしたので気になって」

「そうか、どうだった、何か面白い話でも聞けたか?」

「いえ、ただ捕まったことを嘆いていただけでした」

「だろうな、捕まった奴らはだいたいそうなる。責任を誰かに押し付けたり、そうして自分を正当化しようとしてるんだ。いつだって何かするには結果がついてくる、良くも悪くもだ。お前も気をつけろよ」

「……はい」


まるで俺が何をしたか知っているかのような言葉に嫌な汗をかいてしまった。もう外に出るのはよそう、気分が乗らない

俺達はそのまま部屋に戻った


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