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魔王は友を思いみる  作者: こまど
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盗賊2

冬歌をおんぶして走ること数分、完全に皆に置いて行かれてしまった。仕方ない、俺の足では追いつくことは不可能だ、少しここらへんで休んでから帰ることにしよう。

背中の冬歌を下ろして近場の大木に寄りかかる、息は上がってないがどうしても足にくる。

まあここで俺が休んでようとさして影響はないだろう、まず捕まえろとか言われてもなあ、護身用にナイフは持たされてはいるがこれでどうしろっていうんだ。これで逃げた商人の誰かを斬れとでも言いたいのか、ハッキリ言ってそんな度胸は俺にはないね

そんなことがない平和な世界から来てるんだ、それに俺はこんなこと反対だしな


『それではこちらはどうしますか?』


こちらってどちら?


『地面を見てください』


見るとそこには俺と冬歌の足跡があった、だけどそこにはもう一人分の足跡もあった


『サイズから見て子供でしょう、どうしますか』


一応辿ってみよう


「冬歌、歩けるか?」

「大丈夫」


まあそうでしょうね、俺の背中に乗っていただけだからな

冬歌とはぐれないように手を繋ぎ足跡を辿っていく


『足幅の感覚から走っているようですね』


そうだな、確かに感覚が開いている。まあのんきに歩いてたらそれはそれでビックリするけど

足跡は時々木の根を飛び越えたりして見えなくなったりもしたが、見失うこともなく辿っていけた

少し辿ると歩幅の感覚が小さくなっていた


『おそらく体力が切れたのでしょう、急のことでペース配分も出来ていないようですね』


子供なのだから命の危機から一生懸命逃げながらそんなことをしている余裕はないか

すると一度大木の根のところで足の位置が揃っているのがあった、ここで地面から出ている大木の根に腰でも下ろして休憩していたのだろう


『そろそろ追いつけますね』


なんでわかるんだ?ここで一度休憩してるといってもまだ足跡は続いているわけだし、そう言いきるのはまだ早いだろ、それに俺からしたらこのまま出会わない方がいいんだけどな


『ですが足跡を見てください、少し先のほうで横にそれています』


見ると確かに途中で木の陰に隠れるようにそれていた、でもなんでそう思うんだ


『一度休憩しているということは体力が限界ということです、ですがその後すぐ動いたということは見つかることを恐れたのでしょう。そして歩き出したのですが今までは真っ直ぐ進んでいました、ですがここで横にそれたということは逃げる目的ではなく、何かを探しているのでしょう』


なるほど、確かに逃げるだけなら今までのように真っ直ぐ進めばいいわけだ、でもそうしないのは逃げるよりも何かを優先したってことか。

この状況で優先する……というよりも優先せざるを得ないことといえば……休憩するための隠れられる場所か


『そうです、少しでも逃げようとしているのは確かでしょうが、優先順位は隠れて体力を回復することでしょう』


なるほど、子供ながらも考えているわけだ。

足跡の曲がった方を見るとそこには二つに割れた半径三メートル程の大木があった、足跡はその大木の後ろまで伸びていた。

そのまま辿り後ろ側まで来ると足跡がなくなっていた


「あれ、どこいったんだろ」

「上に穴ある」


冬歌の指差す方を見ると確かに人が入れそうな穴があった


「ちょっと待っててくれ、見てくるから」

「わかった」


穴がある位置は地面から見て三メートルぐらいだろうか、ジャンプでは流石に届かないので木の枝などに掴まりながら登っていく、枝は中々に太く折れる心配はなさそうだ

穴の場所までたどり着いた、ふちに手をかけ顔だけで中を覗く


「ひぇっ!」


中からは驚いたような声がした、暗いので誰かいるのかすらわからなかったが、声がしたので誰かいるのだろう


「ごめんなさい!こ、殺さないで……!」


開口すぐ謝られた、まあ俺が盗賊達の仲間だと思われているのだろう

うーん、どうしようか。声からして男の子だろう、彼を捕まえていくことぐらいなら俺でも出来そうだ、大人とかなら無理だっただろう。でもまあその前に誤解は解いておかないと


「その前に一つ言っておくけど、俺は盗賊の仲間じゃないからな。それだけは勘違いしないでくれよ」

「え、で、でも。じゃあなんでこんなところにいるんですか……?」

「そ、それは……」


うーん、冬歌を抑える代わりに衣食住を提供してもらってる、なんて言っても信じてもらえないだろうし……むしろそっちの方が怖いな


「あ、あれだよ。と、盗賊達に拉致されて、身の安全と引き換えにあそこで雑用をやってるんだ」


うん、嘘は言ってない。寝てるところを拉致されたわけだし、盗賊達の身の安全と引き換えにあそこで家事手伝いしてるわけだし、家事手伝いって雑用みたいなものだし


「ほ、本当ですか?」

「本当に決まってるだろ、こっちも大変なんだ」


記憶ないし


「なんで逃げたりしないんですか」

「うーん、行くあてがないんだ、ここを出ても。家族はこの世界にいないし」

「あ、そうなんですか……ごめんなさい」


ん?なんか勘違いしてないか?


「いや、違うから違うから、この世界にいないってのはおr」

「おーい!何してんだ!」

「ふぉ!?」


穴から顔を出し後ろを見ると屈強な筋肉を携えたバイスさんが少し離れたところにいた


「そこに何かいるのか!」


俺は少年に声を出さずにじっとしてろと伝え飛び降りた

バイスさんが近くまで来ていた


「いえ、特に何もいませんでした」

「本当か?まあいい、もう全員捕まえた頃だ。さっさと戻るぞ」

「はい、わかりました」


バイスさんが後ろを向いた瞬間渡されていたナイフを木の穴に投げ込む、音は足音でかき消したのでたぶん聞こえていないはずだ

もしなにかあったときに何もないよりはマシだろう

俺は冬歌を連れてバイスさんの後を追った


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