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ニートが如く  作者: あじます
序章
1/4

プロローグ:異世界召喚

「やったぞ! 成功だ!」


 煌々と松明灯る石室に、神経質そうな男の声が響く。

 石室の中央には小さな祭壇が設置されており、祭壇の上には禍々しい魔法陣が刻まれている。それはぼんやりと光放ち、何かの鼓動のように点滅を繰り返している。


魔力(エーテル)の脈動が伝わってくる! この世界にはない魔力(エーテル)の味だ!!」


 神経質そうな男は、まるで遠足を前にした幼児のように顔を赤らませ、鼻息荒く両手を振り回す。


「さぁ、出でよ邪鬼! この忌々しい世界に破滅と混沌を齎したまえ!!」


 男の咆哮に答えてか、刻まれた魔法陣は一際強く光を放つ。

 魔法陣の光は、天井に吊り下げられた無色透明の結晶へと延び、結晶からは一筋の光が祭壇へと延びる。

 一筋の光は、不規則に動き、祭壇の上へと何かを描きだす。

 現代人が見れば、まるでレーザーが3Dホログラフィックを描きだしているようだと評する光景は、神経質そうな男を少年に戻すくらいの光景だった。


「……」

「……」


 神経質そうな男ははしゃぐのを止めた。

 描きだされた人物と視線を交わして、止めたのだ。

 何しろ描き出された人物は体がでかいだけの、ただの男……まぁ、それはこの際どうでもいい。

 その男はズボンを脱いで陶器の椅子……神経質そうな男には知る由もないが、洋式便座に腰かけていたのだから。


「えっ」

「えっ」


 男と男が、疑問に満ちた声をあげる。

 呼び出された男がひり出したであろう汚物の香りと、祭壇に捧げられたであろう妊婦の子宮から出される鉄さびの臭いが充満してなんとも言えない。

 お互い、気まずそうに視線を交わし、どう会話を切り出そうか迷っている。

 口火を切ったのは、神経質そうな男だった。


「あ、すいません。取り込み中でしたか?」


 神経質そうな男は自分で言って後悔した。

 取り込み中でしたかなんて、見ればわかるからだ。

 食ったら出る物の臭いがすると言うことは、トイレタイム中に呼び出してしまったのだ。どこからどうみても、取り込み中だ。これ以上ない位取り込み中だ。


「あ、お構いなく」


 反射的に答えてしまった召喚された男も後悔する。

 どう見ても、お構いしてしまう状況だったからだ。

 何が悲しくて、中年一歩手前の神経質そうな男に、排便を覗かれて嬉しいものか。ぶっちゃけ、空気を読んでこの部屋から出て行ってほしい。

 しかし、そんな健気な願いは神経質そうな男が無理矢理ひり出した雰囲気で、吹き飛ばされてしまった。召喚された男は、驚きでひり出す物が出なくなったと言うのに。


「ふ、ふはははははははは! よくぞ我が召喚に答えてくれた邪鬼よ!」


 神経質そうな男は悪そうに笑ってはいるが、顔が引きつっている。


「……召喚?」


 召喚された男は、ビデで尻を洗いながら返事を返す。


「え、召喚された邪鬼じゃないの?」


 神経質そうな男は聞き覚えのない駆動音におっかなびっくりしながら、返事の返事をする。


「えっ?」

「えっ」


 再び沈黙が訪れる。

 神経質そうな男は、何か自分の方陣に不備があったのではないかと考え始め、召喚された男は勝手に止まったビデを見つつ、ズボンを穿いた。


「だったら貴様、何者であるか!」


 考えが纏まったのだろう、神経質そうな男は怒りながら樫の杖を、召喚された男に突き付ける。二人の距離は、大人の男5人分位だ。


「何者って言われてもな。新戸猛太(にいと・もうた)って名乗ればいいのか? うわっ、うんこ流れない……」


 適当な自己紹介をしつつ、水洗レバーを引っ張るが水が流れてこない事に、ニートは驚いてしまう。


「ニートキモオタ?」


 神経質そうな男な男は、どこをどう聞き間違えたのか、とんでもなく失礼な名称をつけてくれた。ニートの額に一本の青筋が立つ。


「てめぇ、耳腐ってんのか」


 当然の反応を示す。


「ふん、ニートだか、キモオタだか知らぬが。このへリング様の儀式を邪魔するとは、見上げた度胸である」


 杖を構えたへリングは、随分と強気だ。

 事実、彼はかつて王都で一線級の魔術師として活躍していた。高々人間の一人二人物の数ではないのだ。


「ニートでもキモオタでもねぇ! いや、キモオタは否定できないか……」


 ニートは自分の部屋に飾られている美少女フィギュアと本棚の薄い本(ソリッドブック)を思い出してがっくりと項垂れる。

 見た目はまぁ、悪くないとクラスの女子に評された事もあるニートだが、趣味はまんまキモオタだった。


「そんな事どうでもいいのだ。貴様はここで灰塵と成り果てるのであるからな」

「あん?」


 へリングはニヤリと笑い、ニートは剣呑な雰囲気を醸し出している。


「消えるがいい! サンダーエッジ!」


 杖の先から紫電の刃が迸る。

 詠唱を破棄した初期呪文(ファストスペル)、普通の人間なら灰塵にはならなくても、一瞬であぶり焼き(ロースト)にされてしまう。速度は雷の半分程度、威力は雷の三分の一程度と言った殺っちまう気満々の魔術。

 ニートは目の前に迫る魔術を、スウェーでひょいっと避けた。

 へリングの目が驚愕に開かれる。ほぼ不意打ち気味で撃った魔術を躱されたのは初めての経験だったからだ。

 そして、


「オラァ!!」


 ニートの咆哮と共に繰り出された拳がボディへと突き刺さり、


「ヒギィ!?」


 へリングは閨で操を失った少女のような悲鳴を上げた。

 拳をご馳走されたへリングの体は宙を舞う、彼の体重は目測で60キログラム程度だ。米俵位の重さを、ニートは壁際まで軽々と吹き飛ばし、へリングは石壁に激突すると白目をむいて痙攣し始める。

 その様子をみたニートは、首を軽く回して音を立てると、


「なんだったんだ、コイツ」


 自分の世界では終ぞ見なかった技に、首を傾げるのだった。


異世界転生のプロットを練り直してたらチンピラキモオタが異世界を行く話になった

何言ってるのかわからねーと思うが俺も(ry

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