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「えっと、、、。俺、どうなったんだ?」
街の裏路地のゴミだめに一人放置され、俺は混乱の極みに居た。
俺(佐々木 冬児)は、日本の平均的な家庭で生まれ、平凡な大学生2年生だった。少しばかり頭がよく、偏差値的には優秀な日本の首都に建てられた大学に通ってはいたが、あとはいたって特筆すべき点もなく、みなと代わり映えのしない生活をしていたはずだ。
ところが、ある日、電車の線路に落ちた子供を助けようとして、まぬけにも自分だけ逃げ遅れて引かれて死んでしまった。、、、、んだよな?
事故後、意識を取り戻したのだが、真っ暗で感覚もなかった。脳死ってこんな感じなのかな?あの子は助かったかな?などと思っていたら、おもむろに目の前に文字が浮かんできた。
ーーー Welcome to the Another World ーーー
訳もわからず、その文字をながめていてもしばらくは変化がなかったが、つぎの文字はないんだろうか、と思ったとき、文字が変化した。
ーーー あなたは、男性ですか? ーーー
うーん、俺は男だよな?と、なんだこの質問、と思いながら頭のなかで答えると、つぎつぎと質問が現れた。
その後、何個か質問に答えていくうち、次第に仕組みがわかってきた。
というのは、考えを意識する事で情報を伝えられるということである。どこへ伝えているかや、なんのための質問なのかはわからなかったが、、、。
100ほどの膨大な質問ののち、突然質問がとぎれ、少しの間をおいて、文字が現れた。
ーーー Setting your status...... ーーー
3分ほどその文字を眺めさせられ、言葉の意味を考察していたところ、いきなりプツンと意識が途絶えた。意味不明である。
そして気づくと、ゴミだめの前で、一人でちょこんと立っていた。で、冒頭にもどる。
起こった事を整理していたら、少し冷静になる事ができた。
よし、まずは現状を把握しよう。ちゃんと感覚はあるし、とりあえず生きていると言うのは確かそうである。
体を見渡すと、五体満足でボロボロのもはやもとの色の判別が不可能であろう服を申し訳ない程度にはおっていた。
手を見るとガリガリで、自分の物とは思えなかった。そして、鏡がなかったのでよくわからないが、触った感覚では、どうも顔や髪が自分の物では無いような感覚を覚えた。
周りの建物は、レンガ作りの中世ヨーロッパといった感じがする。意味不明である。
ここまででも十分俺の理解の範疇を超えているが、それよりも何よりも俺を混乱させた事は、"この体"の記憶がある。。。という事実だった。
俺は日本で生まれ日本で育ったという確固とした自我があったが、それともう一つのこの中世の世界で生まれ、育ってきたという記憶も混在していた。
そのもう一人の俺の記憶は、取って付けたような貧弱な物ではあったが、確かにこの世界に生きてきて成長してきたという自覚はあった。
こんな感じで、本人には全くわけのわからないまま、佐々木冬児の異世界での生活が新たに始まった。