08 死の呪い
俺は勇者だ。
魔王を倒して人々に平和をもたらさなければならない存在。
巨悪を倒すために、やらなければならない事は山ほどある。
しかし考えなければならないことはそれだけじゃない。
倒した後のことも、しっかり見据えていかなければ。
俺は、平和な世の中に強者など必要ないと考えている。
強すぎる力は争いを呼ぶから、俺達は魔王を倒した後は表舞台から姿を消して、ひっそりと暮らしていくつもりだ。
必要なら命を絶つことだって考えている。
平和な世界に強者がいたってろくな事がないだろう。
俺の師匠はとても強い人だったけれど、様々な陰謀に巻き込まれ命を落としてしまったからな。
たとえ本人が望んでいなくても、力というものはそこに存在するだけで、争いやトラブルを呼び込んでしまうのだから。
そんな時、地方に散らばっていた監視の目から報告が上がった。
何の変哲もない村人が、人を洗脳することができる魔法を授かったというのだ。
監視の目は、いざという時に備えて各地に潜入している特殊部隊の一つだ。
危険な人物や強い力を持った人間がいないか、目を光らせる役割を持っている。
だから彼らからそんな報告を受けた俺は、ある策を練った。
俺達がこれから戦おうとしている魔王は、一度だけ敵に死の魔法をかけることができる。
魔法をかけられた人間は、何らかの原因によって必ず死ぬという呪いのようなものだ。
俺達勇者でもその魔法をなんとかするのは難しい。
だから、洗脳魔法なんて危険なものをもった村人をなんとかする事と、魔王対策を同時にするために、演技をすることを思いついたのだ。
俺達は偶然を装って、洗脳魔法の持ち主であるサクタロウの前に現れ、魔法にかかったかのようにふるまい、彼を巻き込んだ。
そして、魔王城の元へと共に旅を進めたのだ。
洗脳魔法の持ち主なんてただの兵士や騎士に監視させるのは危険すぎる。
魔王の者以外なら、魔法をいつでも解除&無効化できる勇者の俺が。彼を直接見張るしかなかった。
けれど、誤算だったのは、俺達が彼に情を持ってしまったという事だろう。
同じ釜の飯を~とかいう言葉がある通り、仲間だという思いが芽生えてしまった。
だから、彼が自分から死を選んでしまった時に、魔王の死の呪いはどうするのかと考える前に狼狽えてしまったのだ。




