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閑話 雨音と憂鬱
私はあの人の望みを叶えなくてはならない。
今の立場と環境は、その実現に最も適している。
ならば、どうすればいいのだろう?
雨が窓ガラスを叩く音だけが部屋に響く。
雨は、苦手だ。
じっとりとした湿気が、肌を包み込む不快感。それは私を、より一層陰鬱な気持ちへと誘う。
――もう、いっそのこと、殺してしまえば――
しかし、それは許されないことだ。人の道から逸れてしまう。
そこまで考えてから、私はふと思い至る。
私ではなく、”別の何か”に殺させればいいのではないか、と。
何も私が手を下す必要などないのだ。
自分の行動によって、至る死であれば善い。
なんだ、簡単な話じゃないか。
こんなにも簡単なことに気が付けないだなんて、先生に知られたら笑われてしまう。
そうと決まれば、計画を練らねばならない。
先程までの陰鬱とした気持ちは消え失せていた。
***
群蜘蛛の行動は予想外のものが多かった。
無関係な人間も死んでしまったけれど、それは些細なことだ。
そもそも、道から外れた人たちなのだから、遅かれ早かれ制裁は受けただろうし。
幣原が死んでくれたのなら、それでいい。
私の目的は果たせたのだから。
ああ、紅洋先生。あなたの教えは、今もまだこうして息づいています。
全てを見届けたら、私も早くそちらへ行きますね。




