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君がくれた無垢な愛を僕は今日も抱きしめる  作者: あさの紅茶


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4.君という独占欲_12

「あ、そうだ。亮平さんってご両親にとっても愛されてるんだね」


唐突に陽茉莉が言うので、亮平は鳩が豆鉄砲をくらったような顔になった。


一体何を見てそう思うのか、亮平には少しもわからない。ただでさえ自分は車椅子になって家を追い出されたというのに。お荷物だから捨てられたとさえ思っているのに。


だから本当に、陽茉莉が何を言っているのか全く理解できなかった。


「まさか? いらない子扱いの間違いだろ?」


自虐的に笑ったのだが――。


「そんなわけないじゃん。だって亮平さんのためにお家を建ててくれるんだよ。バリアフリーだけじゃなくて、キッチンもトイレもお風呂も洗面台も、全部車椅子でも困らないような設計になってる。至る所に工夫がされてて感心しちゃった。いらない子にそんなことはしないよ。とっても愛されてるね」


「いや、でも――」


反論はできなかった。


確かに陽茉莉の言うとおり、この家はすべてがバリアフリー設計になっている。キッチンも低めだし車椅子でも膝の部分が入るようにカウンターの下は空間が空いている。シンクも浅く、水道はセンサーで水が出るようになっている。すべてが車椅子仕様。


裏を返せば、亮平のための設計。


亮平は親に捨てられたと思っている。

けれど陽茉莉は愛されていると言う。


どちらが正しいかなんてわからない。

親の気持ちなんてさっぱりわからない。


陽茉莉の言うことを鵜呑みにはできないけれど、今まで自分が信じてきたものに亀裂を入れられた気分だった。


「……まったく、陽茉莉にはかなわないな」


亮平は困ったように頭を掻く。

どうして彼女はこうも物事をポジティブに考えられるのだろう。亮平とは別の視点から見ることができるのだろう。


卑屈になりがちな亮平の心が簡単に絆されそうになる。それが嫌ではないのだから、不思議だ。


玄関を出れば爽やかな風が吹き抜け、星がキラリと瞬いた。明日もきっと晴れるだろう。


結局陽茉莉は一人で帰ると譲らなかった。

亮平は渋るも、確かに自分が車で送るにしてもその支度だけで時間がかかって逆に陽茉莉に気を遣わせてしまうと判断して、陽茉莉の意見を尊重することに決めた。


「おやすみ、亮平さん」


「ああ、おやすみ、陽茉莉」


繋いでいた手がするりと離れる。

陽茉莉は何度も振り返りながら亮平に手を振る。

亮平も陽茉莉が見えなくなるまでその姿をずっと見守っていた。

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