エルフの剣舞
モフモフ狂いの最強エルフ、参戦。 SSS部隊最後の一人、オフィーリア登場! クールで優雅なハイエルフ……に見えて、中身は残念なモフモフ中毒者でした(笑)。 しかし戦闘力は本物。「聖蓮華」で巨大生物を一瞬で解体するシーンは圧巻です。 彼女もまた、クル・ナイへ向かいます。 動機は「セレナ(狐耳)の尻尾を守るため」。 ……役者が揃ってきましたね!
【辺境セクター9 —— 植民惑星「ゴーゴン」】 【任務:侵略的外来種の駆除 —— 完了フェーズ】
空気はオゾンの匂いとエイリアンの体液の臭気で満ちていた。 数分前まで、そこは装甲蜘蛛のような巨大昆虫が蠢く地獄だったが、今は静まり返った墓場と化していた。
その全てを、たった一人が殲滅したのだ。
混沌の中心に、汚れなき姿で立つ女性がいた。 オフィーリア。 ハイエルフの彼女は、霊剣を一振りして刀身にこびりついた緑色のエネルギー残滓を払った。 その神秘的で静謐な美しさは、周囲の惨状とはあまりにも対照的だった。
「オフィーリア様!」
瓦礫の中から小さな女の子が駆け寄ってきた。手には野花を持っている。 その後ろから、隕石の襲来に疲れ果てた村人たちが涙ながらに集まってきた。
「これ……」 少女はおずおずと花を差し出した。 「みんなからです。あの恐ろしい怪物たちから助けてくれて、ありがとうございます!」
オフィーリアは瞬きをした。 分析的な眼差しが一瞬で和らぐ。彼女は汚れた地面など気にせず膝をつき、少女の目線に合わせた。
「心配いりませんよ」 彼女はエリート戦士とは思えぬ優しさで少女の頭を撫でた。 「脅威は全て排除しました。もう何も恐れることはありません」
少女は溢れるような笑顔を見せた。村人たちが拍手喝采する。 だが、平和は長くは続かなかった。
グオオオオオオオオオオオオッ!!
大地が裂けた。衝撃波で数人が転倒する。 隕石クレーターの深淵から、巨大な影が這い出してきた。
「なんだあれは!?」 「まだいたのか! 逃げろぉ!」
それは『女帝』だった。 高さ50メートルの巨体、無数の赤い瞳、錆びた大鎌のような脚を持つ冒涜的な存在。その巨体が太陽を遮った。
オフィーリアはゆっくりと立ち上がり、怪物と人々の間に立ちはだかった。 表情から優しさが消え、冷徹な批評家の顔になる。
「貴女がマトリャーシカね……」 彼女は怪物をスキャンした。 「脚が多すぎるし、酸を垂れ流してるわ。不潔ね。……全然可愛くない」
「きゃああっ!」 少女がオフィーリアの足にしがみついた。 「逃げてください! あんなの勝てません! レベルが違います!」
オフィーリアは見下ろし、金色の瞳を輝かせた。 「お名前は?」 「テ、テレサです……」 「いい名前ね。……テレサ、よく見ていなさい」
オフィーリアは腰の霊剣を抜いた。 「あんな醜いものではなく、私を見ていなさい。努力と献身、そして少しの“スタイル”があれば何ができるか……見せてあげるわ」
「え……」テレサの目が輝く。「カッコいい……!」
女帝が金切り声を上げ、二本の前脚を振り下ろした。エルフを虫のように潰すために。
「戦闘舞踏:翡翠の円舞曲」
オフィーリアは跳ばなかった。ただ……流れた。 彼女の体は緑色の光の残像となった。
シュンッ!
彼女は振り下ろされた怪物の脚の上を駆け上がった。重力を無視し、光の粒子を撒き散らしながら。 女帝が噛みつこうとするが、オフィーリアはバレリーナのように空中で回転した。
「第一楽章:翼断ち(ウイング・カッター)」
ズバッ!
水平の一閃。瞬きする間に、怪物の右側の脚4本が切断された。 女帝がバランスを崩して傾く。
だが終わりではない。オフィーリアは空中の瓦礫を足場にしてさらに跳躍し、怪物の無数の目の正面に躍り出た。
「レディをそんな目で見るのはマナー違反よ」
彼女は空中で納刀し、居合の構えを取った。 ハイテク・マントが輝き、全エネルギーを剣に転送する。
「終曲:聖蓮華」
抜刀。 一撃ではない。百撃だ。 一瞬にして緑の線が空間に描かれ、怪物の体を幾重にも貫き、巨大な蓮の花の形を刻んだ。
オフィーリアは音もなく着地し、背後の怪物を見ることなく、カチリと剣を納めた。
パリン……ドゴオォォン!
巨体は爆発しなかった。解体された。 数百のブロックに分かれた肉片は、地面に落ちる前に霊力によって浄化され、光の塵となって消えた。 血も内臓もない。ただ、温かい緑の雪のように村に降り注ぐだけだった。
オフィーリアは振り返り、尖った耳の後ろの髪を払い、顎が外れそうになっている少女に微笑みかけた。
「見ましたか、テレサ?」 甘い声で言う。 「技術が完璧なら、サイズなんて関係ないのですよ」
「すっごーい!!」テレサが飛び跳ねた。
オフィーリアは剣をしまい、近寄りがたい威厳を取り戻した。 「ふふっ、元気な子ですね」
「私にもいつかできますか?」 テレサが木の枝を振って真似をする。
「もちろん」オフィーリアは真顔で頷いた。「たゆまぬ努力と、鋼の規律……あと300年ほどの寿命があればね」
「さ、300年!?」テレサが固まる。
「冗談ですよ(エルフ・ジョーク)! ふふふ」 オフィーリアは楽しそうに笑った。 「ところで……報酬は用意できていますか?」
テレサの表情が共犯者のそれに変わった。 「うん。こっちに来て」
テレサが口笛を吹くと、瓦礫の陰から一匹の生き物が現れた。 犬でも猫でもない。雪のように白い、真ん丸な毛玉のような生き物。長い垂れ耳と、つぶらな黒い瞳。
「ほら、ボチだよ」
オフィーリアの目が釘付けになった。手が震える。 彼女は周囲を見回した。村人たちはまだ彼女を戦女神として崇めている。
「コホン」 オフィーリアは威厳を取り繕って咳払いをした。 「あー、場所を変えましょうか。この……商取引にはプライバシーが必要です」
「え?」テレサが首をかしげる。
***
【数分後 —— 半壊した納屋の裏】
テレサは混乱の極みにいた。脳が目の前の光景を処理できない。
「あの強くてカッコいいお姉さんはどこへ……?」
冷徹な女戦士の姿はどこにもなかった。 そこにいたのは、汚れた地面に座り込み、頬を赤らめて毛玉生物を狂ったように抱きしめている残念な美女だった。
「はぁぁぁん……! 可愛いぃぃぃ!」 オフィーリアはボチの毛並みに顔を埋めて悶えていた。 「フワフワ! モフモフ! あったかい! 最高です! 宇宙一の報酬です!」
ボチもまた、エルフに潰されながらも幸せそうに喉を鳴らしていた。
「本気なの……?」 テレサが呆れる。 「村を救った報酬が、ボチを隠れてモフることなの? お姉さん、変な人だね」
オフィーリアは顔を上げた。鼻に白い毛がついているが、その笑顔はあまりに幸せそうだった。 「仕方ないでしょう……貴方たちは貧乏で正規料金が払えないんですから。でも……」 再びボチの腹に顔を埋める。 「求難信号の映像でこの子を見た瞬間、タダで引き受けると決めました! 誰も私とモフモフの間を邪魔できません!」
「やっぱり変な人だ」
ピピピピッ。
無慈悲な通信音が至福の時を破った。 オフィーリアは名残惜しそうにボチを離し、顔を引き締めた(鼻の毛はそのままで)。
「ああ、基地からだわ。何の用かしら」 彼女は耳に手を当てた。 「はい、こちらオフィーリア」
『オフィーリア……』 通信機の向こうのリゼットの声は疲れていた。 『隊長に無断でやってた“無料奉仕”、終わった?』
オフィーリアが固まる。 「あら……バレてました?」
『全員知ってるわよ。“お婆ちゃんが病気”なんて嘘、エルフの貴女が使うには無理があるわ。お婆様、200年前に亡くなってるでしょ? ……まあいいわ。ハミールも今回は見逃してくれたから』
「あはは……面目ない! テヘッ!」 オフィーリアは誤魔化し笑いをした。
『聞いて。状況が変わったわ』 リゼットの声が真剣になる。 『私たちは今すぐクル・ナイへ向かう。貴女は隣のセクターにいるから、私たちより早く着けるはずよ。直ちに首都へ向かって。クララ王女の身が危ないの』
オフィーリアの表情が一変した。甘さは消え、刃のような鋭さが戻る。
「なんですって?」 彼女は立ち上がった。 「ダメです! すぐに行きます……セレナちゃんには指一本触れさせません! あの毛並みは私のものです! あのフサフサの尻尾をブラッシングする権利は私にしかありません!」
通信機越しに沈黙が流れた。
『……あー、うん。私は“クララ王女”って言ったんだけど……』 リゼットは諦めたように溜息をついた。 『まあいいわ。そうね、セレナも危険よ。行って。……尻尾を守るために』
「了解!!」
オフィーリアはスラスターを全開にした。 「さようならテレサ! 元気でねボチ!」
緑の彗星となって空へ飛び去る彼女を見送りながら、テレサはボチを抱き上げた。
「……間違いなく、変な人だったね」
(続く)
エルフ・ジョーク」。 300年修行しろとかサラッと言っちゃうあたり、長寿種族の感覚は怖いです。 さて、次回は再び宇宙船へ。 タニアが加わって賑やかになったジェイズ一行ですが、宇宙の旅は平穏にはいきません。 ハミール、オフィーリア、そしてジェイズ。 全員が惑星クル・ナイへ集結しつつあります!
【お願い】 「オフィーリア可愛い!」「ギャップ萌え最高!」と思ったら、 下の ☆☆☆☆☆ で評価をお願いします! ボチの餌代になります!




