最強の祖父と、暴虐の狼
宇宙への密航者と、地上最強の家族。 タニアちゃん、ちゃっかりついて来ちゃいました(笑)。 そして地上では……ジェイズの実家が襲撃されます。 しかし、お爺ちゃんが強すぎます。単分子ワイヤー使いの老人とかロマンの塊! そしてついに登場、野生の従兄(?)ジャコズ! 次回、狼男VSハイテク兵士の肉弾戦です。
【地方部 —— ジェイズの祖父の家】
ダイスケは古びた農家の前庭に着地し、スラスターで土埃を巻き上げた。 戦術用モノクルで周囲をスキャンする。
「家畜、古い木造建築、環境マナレベル……低っ」 ダイスケは鼻で笑った。 「貧乏くせぇ。あの『英雄』サマはただの田舎者かよ。こりゃ楽勝だな」
彼は傲慢に玄関へ歩み寄った。 「おい! 誰かいるか! 出てこい!」
だが、彼がポーチの階段に足をかけようとした瞬間。 空気が微かに鳴いた。
ヒュン……。
百戦錬磨のダイスケの本能が、たった一語を叫んだ。『危険』と。 彼は咄嗟にバックステップを踏み、地面を転がった。
「なっ!?」
自慢のハイテク・アサルトライフルを見る。 銃身が滑るようにズレて、乾いた音と共に地面に落ちた。断面は鏡のように滑らかで、煙を上げていた。熱などないのに、レーザーで切断されたようだ。
「ヒュー!」 ダイスケは顔を青くした。 目に見えない銀色の糸が、家を取り囲む蜘蛛の巣のように張り巡らされていたのだ。
「こいつは驚いた……オールドスクールな技だぜ。単分子ワイヤーか。鋼鉄もバターみたいに切り裂くやつだ」
ポーチの揺り椅子に、一人の老人が座っていた。 弱々しく見えるが、その手は……死のマエストロのように繊細に動き、陽光の下で輝く糸を操っていた。
ジェイズの祖父が顔を上げた。 それは好々爺の目ではなかった。ダイスケが想像もつかない冬を生き抜いてきた捕食者の目だった。
「歓迎しよう……」 祖父はしわがれた、静かな声で言った。 「招かれざる客よ。そのゴミ(武器)を拾って、さっさと失せてくれないか?」
ダイスケは銃の残骸を見、老人を見た。驚きはすぐに苛立ちに変わった。 「ただのジジイじゃねぇな。やるじゃねぇか」 ダイスケはアーマーのサーボモーターを起動させた。電子音が唸る。 「だがなぞなぞ遊びをする時間はないんだよ。ジェイズを捜してる。どこに行ったか知ってるか?」
祖父はゆっくりと立ち上がった。関節が鳴るが、その立ち姿は古木のように揺るぎなかった。 「愛する孫のことだ……。目的も言わぬ無礼者に教えると思うかね?」
ダイスケは二本目の武器、青く輝くエネルギーダガーを抜いた。 「なら、力ずくで吐かせるまでだ!」
ズォォッ!
ダイスケが消えた。 瞬間移動ではない。クル・ナイの技術による超高速機動だ。 刹那、彼は老人の背後に回り込み、ダガーを首筋に突きつけていた。
「遅ぇ!」 ダイスケが叫ぶ。
だが、祖父は振り向きもしなかった。ただ小指を動かしただけだ。
キィン!
ダイスケは空中で静止した。老人の背中まであと数センチのところで。 頬に赤い線が走る。 「なっ……」 動けない。四肢が見えない力で拘束されている。
「鋼蜘蛛の舞:ゼロ域」 祖父が呟く。
庭全体が光った。何もない空間に、何千もの単分子ワイヤーが3次元的な檻を形成していたのだ。ダイスケは自ら罠に飛び込んだのだ。
「クソジジイ!」 「もう一歩動けば、肉のサイコロステーキになるぞ」 祖父は指揮者のように指を動かした。 「さあ、私の敷地から出て行け」
「ナメるなぁぁ!」 ダイスケのアーマーが閃光を放った。 「シールド過負荷:拒絶衝撃!」
ドオォォォン!
衝撃波がダイスケを中心に炸裂し、ワイヤーを引きちぎった。 その余波で祖父が吹き飛ばされ、家の板壁に叩きつけられる。
「ぐっ!」 祖父が血を吐く。 「対魔法技術……それにフォースフィールドか……最近の若者はオモチャに頼りすぎじゃ……」
ダイスケは着地した。自由になったが、激怒していた。服は裂け、全身から血が滲んでいる。 「血を流させやがったな……!」 狂気を孕んだ目で叫ぶ。 「ハミール親衛隊の俺に!」
彼は再び突っ込んだ。今度は小細工なしの暴力だ。
祖父は応戦した。老齢とは思えぬ流麗な動きで、残ったワイヤーを使い、攻撃を逸らし、盾を作り、不可視の鞭で反撃する。
ガギン! ギャン! シュッ!
金属音と風切り音が庭に響く。
(速い……) 祖父は息を切らせていた。心臓への突きを防ぎながら思う。 (私の老いた目には速すぎる。10若ければ3回は殺していたが……スタミナが持たん)
「捕まえた!」 ダイスケは上段攻撃をフェイントにし、老人の足を払った。 体勢が崩れる。 その隙を見逃さず、ダイスケは強化された膝蹴りを祖父の腹に叩き込んだ。
「がはっ!」 祖父は血を噴き出して吹き飛び、壊れた柵の近くまで転がった。 立とうとするが、腕が震えて力が入らない。武器は遠く、ワイヤーは尽きた。
ダイスケは頬の血を拭いながら歩み寄った。処刑人の目だ。 「遊びは終わりだ、ジジイ。我慢の限界だ」
彼は重厚な金属ブーツを振り上げた。老人の頭上へ。 「居場所を吐くまで、手の骨を一本ずつ砕いてやる。その後で……この豚小屋を燃やしてやるよ」
「地獄へ……落ちろ……」 祖父が吐き捨てる。 「お前が先だ」
ダイスケが踏み抜いた。
バキィィィンッ!!
乾いた破砕音が雷のように響いた。 地面が陥没し、土埃が舞う。 だが、悲鳴はなかった。
ダイスケは眉をひそめた。感触がおかしい。地面でも、老人でもない。 何かが彼を止めた。
埃が晴れていく。 祖父の前に、人影が立っていた。
ダイスケは呆然と見下ろした。 帝国の最高技術で強化された彼の脚が、空中で受け止められている。 たった一本の手によって。 血管が浮き出た大きな手。鉤爪のような爪が、ハイテク・アーマーの足首を握り潰さんばかりに食い込み、金属が悲鳴を上げて歪んでいた。
「な……?」 ダイスケは足を引こうとしたが、万力のように動かない。
男が顔を上げた。 ボサボサの髪の間から、野獣のような金色の瞳が輝く。口元には牙を剥き出しにした捕食者の笑みがあった。
「よう、ゴミクズ」 ジャコズの声は、低く振動する唸り声のようだった。 「年寄りを踏んづけるのはマナー違反だって、ママに教わらなかったか?」
ジャコズは腕を振った。押したのではない。空のゴミ袋を捨てるように放り投げた。
ドゴォォォォン!
ダイスケは10メートル吹き飛び、木をへし折って墜落した。 「がはっ!?」 何が起きたのか理解できないまま、地面に這いつくばる。
ジャコズは背を向け、祖父に手を差し出した。 「遅いぞ、バカ孫」 祖父は口元の血を拭いながら笑った。
「国境が混んでてな」 ジャコズは老人を引き起こした。 「ついでに賞金首を狩ってたんだ」
ジャコズはダイスケに向き直り、指をポキポキと鳴らした。 芝生に落ちる彼の影は、人の形をしていなかった。それは巨大な狼のシルエットだった。
「さて……」 ジャコズは革のジャケットを脱ぎ捨てた。その腕には無数の歴戦の傷跡があった。 「俺の家族に手を出したな。柵を壊したな。そして爺ちゃんを痛めつけた」
彼の瞳が殺意で発光した。
「3秒やるよ。お前の信じるテクノロジーの神様に祈る時間をな。……その後で、喰ってやる」
(続く)
「喰ってやる」。 ジャコズのプレッシャーが半端ないです。 SSS部隊のダイスケ君、相手が悪すぎましたね。 一方、宇宙船ではハーレム状態が悪化中。 タニアが加わって、定員オーバー待ったなし。 ヤミルの胃に穴が開くのが先か、目的地に着くのが先か……。
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