表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/59

密航者と、襲来するSSS(トリプルエス)


挿絵(By みてみん)

深宇宙は星々が散りばめられた黒いキャンバスのように広がっていた。 ヤミルの宇宙船はワープ速度で虚空を駆けていた。 だが、船内に平穏はなかった。


「ちょっ、みんな! 頼むから息をさせてくれ!」 ジェイズが押し殺した声で懇願した。


彼は副操縦士席に文字通り埋もれていた。 ドラカリスが膝の上に座り、首に腕を回している。さらにリンが、ジェイズの胸とドラゴンの間に無理やり割り込み、窒息必至の愛情サンドイッチを作っていた。


「お兄ちゃん!」リンが足をバタつかせる。「ドラカリスおばさんに退いてって言って! 3人は狭いよ!」


「誰がおばさんじゃ、小娘!」 ドラカリスがジェイズの頬に頬ずりしながら唸る。 「オヌシが主の上に乗れるなら、妾だっていいじゃろうが。妾の方が付き合いは長いんじゃぞ」


操縦席のヤミルは、嫉妬とパニックの入り混じった目で後ろをチラチラ見ていた。 「君たち! 僕の女神ドラゴンを困らせないでくれ! それにシートが傷む! 高級な『雲海のリヴァイアサン革』なんだぞ!?」


ドラカリスが肩越しに殺意の波動を送った。 「操縦に集中しろ、メガネ。その眼鏡をへし折って飲み込ませるぞ」


「はい! 女王陛下! ♥♥♥」 ヤミルは即座に服従した。


(変人しかいねぇ……) ジェイズは人間家具としての運命を受け入れた。


ヤミルは嫉妬を押し殺してモニターを見た。オールグリーンだ。 「あの子……タニアちゃんか。本当に天才だな」 彼は感嘆した。 「コアの問題を一瞬で解決した。彼女がいてくれたらなぁ……エンジニア不在の長旅は不安だ」


「そうだね! 役に立つと思うよ!」 貨物室から明るい声が返ってきた。


「全くだな、謎の声さん……。でも現実は厳しい……」 ジェイズは生返事をして……止まった。 全員がゆっくりと後ろを向いた。


「待て」


そこには、補給物資の箱に座り、ポテチを優雅に食べているタニアがいた。


「「「タニア!?」」」 全員の目が飛び出した。


「やっほー」 タニアはウインクして舌を出した。 「密航しちゃった……えへっ! ♥」


◇◆◇


【3日後 —— 地球軌道上】


鋭角的で攻撃的なデザインの戦艦5隻が、地球の大気圏を突破した。 ハミール率いる『SSSトリプル・エス部隊』が到着したのだ。


旗艦のブリッジで、ハミールは眉をひそめて青い惑星を見下ろしていた。


(カタリナ王女の情報は曖昧すぎる……) ハミールはアルタリウス城での尋問を思い出した。 (『炎の錬金術師の力でゴーレムを使った』だの、『ドラゴンが降伏した』だの。おとぎ話か?)


【回想】 「そんでね、ドカーン! って!」 カタリナ王女は大げさな身振りで語った。 「ドラゴンたちはジェイズに降伏して、永遠の忠誠を誓ったの! 良い子にしてないとジェイズにお仕置きされちゃうからって! おしまい!」


「嘘をつくなぁぁぁ!」 鎖に繋がれたドランザーが奥で叫んでいた。


カタリナはハミールに「べーっ」と舌を出した。 「てへへっ!」 【回想終了】


ハミールは顔を覆った。宇宙規模の恥ずかしさを感じていた。 「完全にナメられてるな……」


「隊長、何を考えているのですか?」 ロエが近づいてきた。 「あの小娘の話は技術的に破綻していました。私も錬金術師ですが、あの少年の能力を過大に語って彼を守ろうとしたのでしょう。健気なことです」


ハミールは頷き、冷徹なリーダーの顔に戻った。 「ギルドだ。まず少年の所属ギルドへ向かう。そこに正規の記録があるはずだ」


「私は実家へ行くわ」 リゼットが武器を確認しながら言った。 「家族を締め上げれば、有益な情報が得られるかもしれない」


「待て」 ハミールが止めた。 「ダイスケに行かせろ」


「え?」リゼットが瞬きする。「なぜ彼? 私の方が速いし……」


「お前とオフィーリアは奴に近づくな」 ハミールは真剣だった。 「情報によると……あの少年は女性に対して一種のマインドコントロール、あるいはフェロモン能力を持っているらしい。お前たちにとっては生物学的危険因子バイオハザードだ」


「は、はぁ?」 リゼットは顔を赤くし、呆れつつも興味を持った。


「ダイスケ」ハミールが命じた。「実家へ行け。尋問しろ。ただし、必要がなければ殺すな」


「了解ッス、ボス!」 軽装甲の機動戦士ダイスケが、傲慢な笑みを浮かべた。 「チャチャっと終わらせてきますよ!」


ハッチが開き、ダイスケが地上へ降下していった。


「相変わらず慎重ね」リゼットが溜息をつく。「ランクSSでも油断なしか」


「ロエ」ハミールは無視した。「着陸しろ。ヴァレンティナという女に挨拶に行くぞ」


(続く)

挿絵(By みてみん)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ