メカニック皇女と、星の彼方へ
現実世界編、スタート! 感動の再会、そして新たな旅立ち。 タニアちゃん、ゲーム内ではお姫様でしたが、現実では凄腕メカニックでした(笑)。 そしてラファエラたちの決意。 「守られるだけのヒロイン」からの脱却。熱い展開です。 一方、宇宙船はポンコツ……前途多難ですね。
その頃、地上のギルド・ハンガー(格納庫)は大混乱に陥っていた。
ジェイズたちが到着すると、そこには絶望的な光景があった。 ヤミルが宇宙船の前で膝をつき、青い髪をかきむしって嘆いている。メインエンジンからは黒煙が上がっていた。
「ダメだ、ダメだぁぁ!」 ヤミルが泣き叫ぶ。 「融合核が不安定化してる! ナビゲーションシステムも焼き切れた!」
「ヤミル?」ジェイズが近づく。「どうした? 今日出発する予定だろ?」
「ジェイズ!」 ヤミルが涙目で縋りついた。 「立ち往生だよ! 大気圏突入時の負荷で過熱したんだ。この惑星の技術じゃ修理できない! 本国からパーツを取り寄せるには数週間かかる!」
「数週間?」ジェイズが腕を組む。「そんな時間はねぇぞ。ボスが許さないし、お前の母親だって……」 「分かってるよ! 僕が無能なばっかりに!」
ドラカリスがつまらなそうに肉を齧りながら言った。 「おいメガネ。魔法か何かで直せんのか?」
ヤミルの態度が一変した。絶望から狂信へ。 「これは量子テクノロジーです、我が女神様!♥♥♥」 彼は頬を染めて拝んだ。 「魔法で『ちちんぷいぷい』とはいかないのです!」
「キモいから女神と呼ぶな。妾が愛するのは主だけじゃ」 「グフフ……罵倒も素晴らしい……」
その時、明るい声が緊張を切り裂いた。 「ジェイズお兄ちゃん! やっと見つけた!」
タニアだった。 少し乱れた髪と、走ったせいで揺れる胸。頬にはオイルの染みがあり、それがかえって彼女を魅力的に見せていた。脇にはプレゼント箱を抱えている。
「タニア? どうしたんだ?」 「これ、渡したくて!」 彼女は恥ずかしそうに箱を差し出した。 「助けてくれたお礼。新しいコンバット・グローブよ。お兄ちゃんの熱に耐えられるように改造しておいたの」
「ありがとう! 気が利くな」 ジェイズが受け取ると、タニアの視線が後ろの煙を上げる宇宙船に釘付けになった。 恥じらいが消え、技術者としての情熱が瞳に宿る。
「うわぁっ!」 彼女はジェイズを放置して船に駆け寄った。ヤミルの存在など無視だ。 「クラスV・ワープドライブ! それに3軸重力スタビライザー! なんて美しいの!」
「ちょ、触らないで! 繊細なんだから!」 ヤミルが止めようとしたが、タニアは既に煙るエンジンに手を突っ込んでいた。
「核の問題じゃないわ」 彼女はブツブツと呟きながら、外科医のような手つきで配線を組み替えていく。 「エネルギー変換器が、地球のマナをエーテル燃料として処理しようとして詰まってるだけ。ここを……」
彼女は四次元ポケットのような場所から巨大なレンチを取り出し、側面のバルブを一撃した。 ガキンッ!
「……周波数を再調整すれば!」
ブオオオオン……!
エンジンの音が安定し、警告灯の赤が正常な青へと変わった。 ヤミルは顎が外れそうになった。 「あ、ありえない……10秒でエネルギーバイパスを? 本国の正規エンジニアより速いぞ!」
タニアはスカートで手を拭き(また汚れた)、誇らしげに笑った。 「えへへ! パパに教わったの。機械いじりはパパより得意なんだから!」
ジェイズは感心した。ゲーム内のドジっ子は、現実では天才だった。 「タニア……お前、天才か?」 「機械だけね」彼女はウインクした。
そして、彼女はジェイズを見つめた。異次元での記憶が蘇り、頬が染まる。 「ねえ、ジェイズお兄ちゃん。宇宙に行くなら、この船を動かし続ける整備士が必要でしょ? ……私を連れてってくれない?」
ジェイズが答える前に、ヤミルがタニアの足元にスライディング土下座をした。 「お願いします! 来てください! 貴女がいないと隣町までも行けません!」
ジェイズは苦笑した。 「ま、それは叔父さんとボス次第だな」
***
ギルド長室は緊張に包まれていた。 ヴァレンティナが机を叩く。
「ダメよ! 絶対にダメ!」
「でもお姉ちゃん!」 タニアが涙目で抗議する。 「もう子供じゃないもん! 16歳になったら冒険者になっていいって言ったじゃない!」
「それは貴方のバカ親父が貴方をゲームの中に置き去りにする前の話よ!」 ヴァレンティナは譲らなかった。 「危うく貴女を失うところだったのよ。私が後見人である以上、許可はしません!」
タニアはジェイズとヤミルに助けを求めたが、二人は「殺し屋上司」に逆らえず目を逸らした。
「お姉ちゃんのバカ! 分からず屋! 大っ嫌い!」 タニアは叫んで部屋を飛び出し、ドアを激しく閉めた。
「タニア……」 ヴァレンティナは椅子に沈み込み、こめかみを揉んだ。
リアが空気を変えようと咳払いをした。 「えー、兵站の話に戻りますが。惑星クール・ナイまでは片道一ヶ月はかかります」 「長いわね」マリアが心配する。
ヤミルが眼鏡を光らせた。 「フッ。それは地球のポンコツ船の話だ。僕の船なら一週間もかからないさ!」 「謙虚だな」ジェイズが皮肉を言う。
ヴァレンティナが顔を上げた。 「で、その子は? 家に置いていくの?」 ジェイズの足にしがみついているリンを指差す。
「やだー!」リンが叫ぶ。「お兄ちゃんと一緒がいい!」 「連れて行くよ」ジェイズは彼女の頭を撫でた。「ただの移送任務だし、一人にはしておけないからな」
マリアが目を輝かせてリアを突いた。 「あらあら、司令官ってばパパの顔になっちゃって! リア、あんたも早くジェイズと子供作りなさいよ!」 「ぶふっ!」 リアがお茶を吹き出した。 「な、何言ってるのよマリア! 公衆の面前で!」
「主の子は妾が産む!」ドラカリスが挙手する。「いや、二番目かの」 「リンも!」リンも挙手する。「大きくなったらお兄ちゃんの子供産む!」
「リン! それは生物学的にも倫理的にもアウトだ!」 ジェイズは頭を抱えた。「ドラカリス、変なこと教えるな!」
「さて」 ヤミルが時計を見た。 「そろそろ行こう。母上を待たせられない」
ジェイズは真剣な顔で部屋を見渡した。 「そういえば……ラファエラたちがいないな。見送りに来ると思ったんだが」
空気が一瞬張り詰めた。ヴァレンティナはポーカーフェイスを貫いた。 「あの子たちは早朝から訓練に出たわ。そのまま近場の採取クエストに行くって。心配しないでって言伝を預かってるわ。もっと強くなりたいんですって」
「そうか……」 ジェイズは少し寂しさを感じたが、納得した。 「分かった。いいニュースを持って帰るって伝えてくれ」
「ええ。じゃあ……」ヴァレンティナが手を差し出した。「良い旅を、ジェイズ。その変人たちを頼んだわよ」 「了解です、ボス!」
「行くぞー!」 ドラカリスがジェイズを押した。
一行は新たな冒険へと旅立った。 後に残した少女たちが、「近場のクエスト」ではなく、地獄のダンジョンへと降りていったことなど知る由もなく。
(続く)
「大っ嫌い!」(フラグ)。 タニアちゃんの家出フラグが立ちました。 天才メカニックの彼女が、黙って見送るわけがありませんね? 次回、いざ宇宙へ! ……と思いきや、船内に密航者が!? 宇宙海賊とか出ちゃうかも?
【お願い】 「タニアちゃん有能!」「ハーレムメンバーの成長に期待!」と思ったら、 下の ☆☆☆☆☆ で評価をお願いします! ヤミルの宇宙船が爆発しないように祈ってください!




