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『炎の錬金術師、鉄鉱山での決戦!』

闇に包まれた鉱山の奥で、勇者ジェイズと黒竜ドラカリスの死闘が幕を開ける。

鋼鉄の巨像を失いながらも、彼は炎の錬金術師としての真価を発揮することができるのか――。

運命を賭けた戦いが、今ここに始まる。

挿絵(By みてみん)

黒竜ドラカリスは、鋼鉄の巨像を鋭い眼差しで睨みつけていた。

次の瞬間――その姿が、まるで幻のようにかき消えた。

「……なっ!?」

驚愕するジェイズ。

反応する間もなく、ゴーレムの外装が大きく抉られる。

「ぐっ……!!」

(……なんて威力だ! もう一撃食らえば……!)

ジェイズは大きく跳び上がり、ゴーレムを操って空へ舞い上がる。

だが――

「今度は私の番だ、小僧! 地へ叩き落としてやる!」

咆哮と共にドラカリスの拳が振り下ろされ、ゴーレムは地に激突した。

轟音と共に大地が裂け、巨大なクレーターが生まれる。

「……空から見えた……あれは……鉱山か……?

 あそこまで辿り着ければ……!」

痛みに耐えながら、ジェイズは必死にゴーレムを飛ばす。

「逃げられると思うな!」

影のように追うドラカリス。

「くそっ……どこだ!? こっちか……それとも……!」

必死に探すジェイズ。

「挑発しておいて……逃げるのか、小僧ォ!」

竜の咆哮と共に、灼熱のブレスが放たれる。

その直後――

「……あった! 鉱山だ!」

ジェイズは燃え盛る炎を紙一重で避けながら、鉱山の入口へと飛び込んだ。

洞窟の内部は暗闇に包まれていたが――

彼の目に飛び込んできたのは、巨大な鉄鉱石の群れだった。

「……間違いない。ここは鉄鉱山だ……!

 これほどの鉄を一度に操ったことはない……

 だが、やるしかない!」

背後から轟音。

ドラカリスが鉱山へ侵入し、怒りの咆哮を響かせる。

「小僧ォォォ! お前を叩き潰して、脳漿をぶちまけてやる!」

しかし――そこで彼女は足を止めた。

ゴーレムの姿が消えていたのだ。

洞窟は四方に分かれており、視界は悪い。

「ふん……隠れるつもりか?

 ならば、この洞窟ごと焼き尽くしてやろうか……?」

沈黙。

聞こえるのは、彼女自身の足音と呼吸の反響のみ。

「いいだろう……小僧。

 望み通り……“遊んでやる”!」

深く息を吸い込み、口内に青白い光を宿す。

「――蒼炎のブレス!」

だが――

「……なっ!?」

轟音。

鉄壁を突き破り、巨大な鉄拳がドラカリスを直撃した。

「ぐっ……!?」

さらにもう一撃。

さらに――また一撃。

左右から、上下から。

挿絵(By みてみん)

数え切れぬ鉄の拳が嵐のように竜を殴りつける。

「ぐ、ぐわああああああっ!? な、なんだこれはァァ!!?」

鉱山全体が崩れ落ちる。

鉄と岩が激しく崩壊する中――

瓦礫を突き破り、ジェイズが姿を現した。

もはやゴーレムはない。

代わりに――鉱山全体の鉄が、彼の体と同調していた。

「……これほどの鉄を……操るなんて……!

 だが……もう……限界だ……!

 気を失いそうだ……!

 でも……あと少しだけ……!!」

ジェイズの叫びが、轟音と共に洞窟に響き渡った。

無数の鉄拳が竜を打ち据え――ついにドラカリスの瞳が白く濁った。

その巨体は地に崩れ落ち、動きを止める。

「ぐぅうううううう……!

 ……倒れた……!」

ジェイズが叫んだその直後、自身の身体も力尽き、地に崩れ落ちた。

全身から力が抜け、意識が遠のく。

だが――その顔には、かすかな笑みが浮かんでいた。

「……勝った……。」

そう呟き、彼は静かに瞳を閉じた。

――その頃、アービンの村では。

王女と兵士たちは、ジェイズの安否に胸を締め付けられていた。

一方、大賢者コルネウスは、教会跡でデモントとの死闘を繰り広げていた。

「……見事だったぞ、デモント。

 だが魔術においては――私が千倍、上だ。」

賢者は冷ややかに言い放つ。

壁に逆さまに打ち付けられ、魔法の杭に貫かれたデモントは、血を吐きながら笑った。

「ハハハ……容易くやられたな、俺も……。

 だが、俺が死んでも終わらんぞ……。」

「……どういう意味だ?」

賢者が眉をひそめる。

「黒竜たちを元の地獄に戻す術を知るのは、俺だけだ……。」

「承知の上だ。……それでも貴様を生かす価値はない。

 我らには若き勇者がいる。竜殺しの鋼鉄巨像もな。」

「……理屈は正しい……。だがな……竜は他にもいる……。

 奴らが現れた時……小僧一人で抗えるのか……? ハハ……ゴホッ……」

その言葉に、賢者の目が鋭く見開かれた。

「まさか……貴様の野望はそこまで――」

「ハーーッハッハッハッ!!」

血を吐きながら狂ったように笑うデモント。

賢者は静かに片手を掲げ、呪文を紡いだ。

「愚か者め……デモント。」

光が閃き、デモントは最後の息を吐いて絶命した。

――外では。

アービンの村の残骸で、兵士たちは負傷者を救い出し、亡骸を集めていた。

冷たい風が吹き抜け、沈痛な空気が漂う。

王女は病に伏す姉フィリアを抱きしめ、女王と侍女たちが寄り添っていた。

「娘よ……誇りに思う……。わずかだが……希望が見えてきた。」

震える声で女王が告げる。

「ありがとう、母上……。でも……どれほど辛い目に遭われたか……。」

王女は涙を堪えながら囁く。

その時――大賢者が現れた。

「喜ぶのはまだ早い。……若き勇者の安否は不明だ。」

「そうだ……勝利はまだ確定していない。」

エスカル司令官も険しい表情で頷く。

「その通り。」

大賢者は皆の前に立ち、声を張り上げた。

「伝えねばならぬことがある。

 デモントは死んだ。

 私がこの手で葬った。

 だが……油断するな。

 勇者は今なお、黒竜と戦っているのだ。」

兵士や村人たちは息を呑み、重苦しい沈黙が落ちる。

そして――ざわめきが広がった。

「だが……デモントが死んだのなら……竜たちはもう命令を下す主を失ったのでは……?」

村人の一人が震える声で問いかけた。

「……それはそうだ……。」

別の兵士が声を上げる。

「状況は何も変わっていない! いや、むしろ悪化したかもしれん!」

再び不安と恐怖が民衆に広がる。

大賢者が眉をひそめたその時――王が一歩前に出た。

「アービンの民よ! 絶望するな!」

「大賢者を信じよ! そして……遠き地からやって来た若き勇者を信じるのだ!」

その言葉に、人々の心はわずかに落ち着きを取り戻した。

だが――空を見上げた誰かの叫びが、再び場を震わせる。

「空を! 大賢者様、空を見てください! 竜が……竜が来たぞ!!」

群衆の中から悲鳴が上がった。

空に二つの影――漆黒の翼を広げた竜が降下してくる。

「見ろ、兄者……人間どもが集まっている。どうやら、何かあったようだな。」

声の主は次兄、ドラサー。

「ドラカリスの姿が見えぬ……。」

長兄ダルゴが険しい表情を浮かべる。

「どうせ、またどこかで暴れているのだろう。……さぁ兄者、焼き尽くしてやろう! ヒャハハハ!」

「待て、弟よ。」

ダルゴが制した。

「まずは地に降り、真実を確かめる。人の姿を取るぞ。」

二体の竜は流星のごとく落下し、地を揺らす轟音と共に着地した。

兵士たちは慌てて構えたが、大賢者が魔法障壁を張り、手を上げて制止する。

「……まだだ。手を出すな。」

煙が晴れると、そこに立っていたのは荒々しくも人間の姿をした二人の青年だった。

「老人よ……お前は賢明だな。」

ダルゴが低い声で告げる。

「我らは今は戦う気はない。ただ問いたいことがある。……応じるか?」

「応じよう。」

大賢者は厳かな表情で頷いた。

――一方その頃、鉱山の奥。

「ぐっ……身体中が痛ぇ……。なんとか……ゴーレムに戻らなきゃ……。」

ジェイズは血と埃にまみれ、必死に身体を起こそうとした。

だが――耳に届いたのは、重い足音。

影が迫る。

「……っ!!!」

顔を上げた瞬間、ジェイズの血の気が引いた。

「ま……まだ立ち上がれるのか……!」

そこにいたのは、全身傷だらけで血を流しながらも、なお立ち上がる黒竜ドラカリス。

挿絵(By みてみん)

拳を握りしめ、瞳に怒りの炎を宿していた。

(……あぁ、ここまでか。

短い人生だったな……。

まさか、こんな美しい女に殺されるとは……。)

彼は薄笑いを浮かべ、諦めるように目を閉じた。

ドラカリスは彼を地に押し倒し、その上に覆いかぶさる。

(これで終わりだ……。せめて、一瞬でやってくれ……。)

――だが次の瞬間。

唇が触れた。

「……なっ……!?」

「ふふ……素晴らしかった。

もう、お前は私のものだ。」

頬を赤らめ、瞳をハートに輝かせる竜の女。

「はぁああああ!?!?!?」

ジェイズは絶句する。

「何を望む? ご主人様」

彼女は頬を緩め、うっとりと囁いた。

(……あぁ、そうだ。思い出した。

俺の“炎の錬金術”の副作用……。

強く力を使えば使うほど、女たちが……俺に惹かれてしまう。

挿絵(By みてみん)

呪いなのか、祝福なのか……。)

力尽き、視界が霞んでいく。

「……もう……どうでもいい……。」

だが、頬を叩く鋭い音。

「ご主人様! 眠ってはダメだ!」

ドラカリスの声は真剣だった。

「口を開けろ。……私の血を分けてやる。

これでお前の傷は癒えるはずだ。」

再び唇が重なり、今度は紅の雫が彼の口へと流れ込む。

竜の血。

命を繋ぐ力。

ジェイズの身体に、再び熱が宿り始めた――。

町へ戻ると――。

人の姿を取った二体の黒竜が、大賢者と向き合っていた。

「……つまり、デモントを殺したのはお前か。」

ダルゴが目を細めて問いかける。

「その通りだ。」

大賢者は一切隠さず答えた。

「なるほど……だから俺たちを縛っていた命令の枷が消えたのか。」

「なぁ老人。」

ドラサーが口を挟む。

「今の俺たちは、好き勝手に暴れることができる……そのことが恐ろしくはないのか?」

兵士も民も、ごくりと息を呑む。緊張が走った。

「……確かに恐怖はある。」

だが、大賢者は動じずに言い切った。

「だが私は気づいたのだ。――お前たちは噂のような“怪物”ではないと。違うか?」

「……何を根拠にそんなことを言う?」

腕を組んだまま、ダルゴが眉をひそめる。

「人質を取ったとはいえ……この村で血を流させたのは、すべてデモントの仕業だ。

お前たち自身の手によるものではない。」

「口が過ぎるぞ、老人……。」

ドラサーが唸る。

「それより――一つ訊きたい。俺たちの妹はどこだ。」

ダルゴの眼光が鋭さを増す。

(……妹? まさか、若き勇者が戦っているあの竜のことか……?)

大賢者は内心で驚きを隠せなかった。

「答えろ、老人! ドラカリスはどこだ!」

ドラサーが吠え、兵たちがざわめいたその時――

「ここよ、兄さん!」

朗々と響く声。

黒き翼をたたみ、人の姿を取ったドラカリスが空から降り立った。

その腕には、血まみれのジェイズを抱えて。

「ドラカリス!」

兄弟二人が同時に叫ぶ。

「ジェイズ!」

姫もまた、涙ぐみながら声を上げた。

「随分と汚れているな……ひどくやられたか。」

ダルゴが妹の傷を見て眉を寄せる。

「……あの子にやられたの。」

頬を赤らめ、珍しく恥じらうドラカリス。

「兄者……あんな顔をする妹は初めて見たぞ……。」

驚きを隠せぬドラサー。

「んんん〜〜っ!」

カトリーヌ姫はぷくっと頬を膨らませる。

「勇者を渡せ。我らの手で片をつける。」

大賢者が厳しい声を響かせると――

「黙れ老人! いい加減にしろ!」

ドラサーが怒鳴った。

「落ち着け、弟よ……今は時ではない。」

ダルゴが低く制した、その直後――。

「……っ!」

ダルゴの身体が崩れ落ちた。

「兄者!? しっかりしろ!」

ドラサーが慌てて抱き上げる。

「ど、どういうこと……? 血が止まらない……!」

ドラカリスの顔が蒼白になる。

「馬鹿な……! 黒竜の再生は即座に行われるはず……! なぜ……?」

大賢者が目を見開いた。

「兄者ぁぁ!!」

ドラサーもまた膝をつき、苦しげに叫んだ。

「……強すぎる……耐えられん……!」

「何を言ってるの!? あり得ないわ!」

妹が血に染まる兄を抱きしめ、絶望に叫ぶ。

大賢者はすぐに声を張り上げた。

「兵たちよ! 彼らを助けよ!」

「な、何を言うのです!? 敵なのですよ!」

エスカーが驚愕する。

「姫様! これは……!」

王が迷う中、姫が一歩前に出た。

「彼らは勇者を殺すこともできたはず……それでも彼を生かして戻したのです!

父上、母上……お願いです! 助けてあげてください!」

「……そうか……。よし、運べ!」

王の命令により、兵士たちはすぐに動いた。

「人間ごときに……触らせるかぁぁ!!」

ドラサーが怒り狂う。

「黙れ馬鹿! 兄さんを救うことが先でしょ!」

ドラカリスの拳が弟の頭に炸裂し、彼はよろめいた。

「……屈辱だ……。」

涙を流しながらうなだれるドラサー。

大賢者はその光景を見つめながら――胸中で静かに呟いた。

(……神は我らを見捨ててはいない……。)

そして、黒竜の兄妹は城へと運ばれていった。


続く…

激戦の末、若き勇者は勝利を掴んだ。

しかし竜たちの脅威は終わってはいない。

新たに現れた黒竜の兄弟、そして揺れ動く人と竜の運命――。

物語は、さらなる混迷と試練へと進んでいく。

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