Eternal Heart - 大食い竜と天才博士の受難 (R15)
一方その頃、現実世界では。 ジェイズが異世界でヒロインを攻略している間、こちらの世界では食糧危機が起きていました。 天才科学者ルドルフの理論と、ドラカリスの実体験。 意外なところで話が噛み合いましたね。 しかし、黒竜に「クソジジイ」呼ばわりされる博士が不憫でなりません(笑)。
一方、ルドルフ博士の地下研究室では。 そこは作戦室のような緊張感と、制御不能な食べ放題ビュッフェのカオスが入り混じっていた。
ラファエラ、シャルロット、リタが到着し、近未来的な研究所と岩肌の奇妙な融合に目を丸くしていた。 だが、ホログラム画面よりも注目を集めていたのは、食事コーナーだった。
そこでは、真珠色の肌を持つ美しいアンドロイド、エステティカが機械的な速さで皿を運んでいたが、二人の客のペースには到底追いつけずにいた。
『在庫分析中……』 エステティカは完璧な笑顔を保ちながらも、内部プロセッサはオーバーヒート寸前だった。 (タンパク質備蓄残量15%。炭水化物供給量10%。この二人は人間ではありません……たった数時間で小国の経済を破綻させるレベルの食欲です! このままではタニアお嬢様の朝食がなくなってしまいます!)
「おい、ポンコツ!」 ドラカリスが骨だけの肉をテーブルに叩きつけた。 「もっと早く持って来れんのか? 妾の胃袋はまだアイドリング中じゃぞ!」
「リンも! もっとお肉!」 リンが空の皿を掲げ、油まみれの笑顔で叫んだ。
ドラカリスは肉を貪りながら、横目でリンを見た。 「オヌシ、本当によく食うのう。計算すれば牧場一つ分は平らげたんじゃないか? ガハハ!」
「うん!」 リンは足の届かない椅子の上で足をぶらつかせた。 「お兄ちゃんが帰ってきたら、もっと買ってもらうの! いっぱい!」
(この野生児たちはどこから来たのですか!?) エステティカは七面鳥の丸焼きが瞬時に消えるのを見て戦慄した。 (野蛮すぎます! お嬢様の教育に悪いので、お付き合いはご遠慮願いたいものです!)
***
一方、指令室の中央では、空気はもっと深刻だった。
「要約すると……」 シャルロットが腕を組み、ジェイズが消えた空のカプセルを見た。 「ジェイズは娘さんを連れ戻すために、自ら進んで異次元の『ビデオゲーム』に入ったということ?」
「シュールね……」 ラファエラが解読不能なコードが流れるモニターを見て呟いた。
「危険じゃないんですか?」 リタが心配そうに尋ねた。 「体ごと転送されたんですよね? ゲームの中で死んだら、現実でも……」
ルドルフは能天気に笑い飛ばした。 「心配無用じゃよお嬢さん方! タニアが遊ぶのは無害なゲームばかりじゃ。学園恋愛とか、花摘みとかね。平和なもんじゃよ! 彼は公園を散歩してるようなもんさ」
(18禁のゾンビサバイバルNTRゲームだとは言えないわね……) ヴァレンティナは紅茶を優雅に啜り、引きつりそうな顔を隠した。
「マスター……」 ラファエラが鋭い視線を向けた。 「貴女はどう思ってるの? 最重要戦力を未知の次元に送ったにしては、落ち着きすぎじゃない?」
ヴァレンティナはカップを置いた。立ち上る湯気が、彼女の瞳の計算高い光を一瞬隠す。 「私の叔父は変人だし、時々どうしようもない馬鹿だけど……一つだけ長所があるわ。技術に関しては信頼できるの。彼がチャンスがあると言うなら、あるのよ」
「まあ、そうですけど……」 リタはまだ不安そうだった。 「画面にあったパッケージ、ゾンビの絵が描いてありましたけど……問題ないんですか?」
ルドルフは一瞬凍りつき、わざとらしい咳払いをして話題を変えた。 「ゴホン! それより重要な話がある! 君だね? 一年前に出現したダンジョンで姉を失ったという魔法使いは」
部屋の空気が変わった。ジェイズへの懸念が、古く深い痛みへと塗り替えられる。 「はい……そうです」 リタが俯いた。
ルドルフは眼鏡の位置を直し、初めて科学者らしい真剣な顔を見せた。 「姪にも話したが、あの時の次元断層のエネルギー残滓を分析したんじゃ。その結果……君のお姉さんが生きている可能性は極めて高い!」
リタの目が見開かれ、涙が溢れ出した。 だが、ラファエラが守るように前に出た。 「何の根拠があってそんなことを? ぬか喜びさせるようなことは言わないでください! 彼女はもう十分苦しんだんです!」
エステティカが仲裁に入ろうとした。 「エルフの方、落ち着いてください。博士は帝国一の頭脳を――」
「いいんだ、エステティカ」 ルドルフが制した。 「感情的になるのは無理もない。だが私の主張は『時空拡張理論』に基づいている」
「何それ?」 シャルロットが眉をひそめた。
「要するにじゃな。ダンジョン内の時間は、我々の現実と同じようには流れないのじゃ。あそこは物理法則が……ルールではなく『提案』に過ぎないポケット・ディメンションなんじゃよ」
「どういう意味?」
「つまりじゃな」 ビュッフェテーブルから、口をもぐもぐさせた声が割り込んだ。 「こっちの1分があっちの1000年かもしれんし、こっちの1年があっちの1日かもしれんということじゃ」
全員が振り返った。 ドラカリスが鶏の足を王笏のように持ち、無関心に語っていた。 「全てはダンジョンの種類と、誰が核になっているかによるがの」 ガリッ! 彼女は骨ごと噛み砕いた。
ルドルフは瞬きした。 「正解じゃ……なんと、博識なお嬢さんだ! ただの冒険者がなぜ高度な次元力学を知っている?」
ドラカリスは飲み込み、手の甲で口を拭って、その深淵のような赤い瞳で彼を見た。 「妾と弟たちは、長年似たような場所に閉じ込められておったからの。太陽のない場所で時間がどう感じるか、よく知っておるわ」 彼女の口調が乱暴に戻る。 「そんなことより飯じゃ。質問で邪魔するでない、クソジジイ」
研究室が静まり返った。
「クソジ……」 ルドルフは言葉を失った。 「ヴァレンティナ、この無礼な娘は何者だ?」
ヴァレンティナは頭痛を堪えるようにこめかみを揉んだ。 「叔父さん……気づかないの? それとも馬鹿なの? 彼女の目とオーラを見なさいよ」 彼女はリンと最後のパンを奪い合っている少女を指差した。 「ドラカリスは、伝説の『黒竜』よ」
ルドルフは固まった。 天才的な頭脳が情報を処理する。黒竜。絶滅種。破滅的な力。生ける神話。
「あー……」 彼は呟いた。 「なるほど、それなら納得じゃ……」
数秒の沈黙。リンの咀嚼音だけが響く。 そして、現実が彼を殴りつけた。
「ええええええええッ!?」
ルドルフの目が飛び出し、眼鏡がズレた。
「黒竜だと!? 私の研究室に!? しかも私のチキンを食ってるぅぅぅ!?」
ドラカリスは絶叫など気にも留めず、食事を続けながら蔑んだ視線を投げた。
「うるさいのう。黙ってデザートを持ってこい、クソジジイ」
(続く)
私のチキンが……! 世界の危機よりチキンの心配をする博士。 この研究所、ジェイズが帰ってくる頃には食料庫が空になっていそうです。 そしてリタのお姉さんの生存可能性。 物語の縦軸もしっかりと進んでいます。 次回、再びゲーム世界へ。ジェイズの「朝帰り」はどうなる!?
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