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奇跡の代償と、女帝の小遣い

悪魔の契約と、15歳のパトロン。 ハミールが闇に落ちるシリアスな展開から一転、ジェイズは「ヒモ」の才能を開花させていました(笑)。 しかし、アレリスの金銭感覚は規格外ですね。 そしてアリスの「身も心も貴方のもの」発言。 ハーレムメンバーの嫉妬メーターが振り切れる中、新たな協力者フリオも登場。 物語はいよいよ宇宙へ!


挿絵(By みてみん)

「貴様……誰だ!」


ハミールが吠えた。本能的に魔力を解放し、部屋のクリスタルを震わせる。


「私の部屋に無断で侵入して、ただで済むと思うなよ!」


『ククク……ハハハハハ!』


声は虚空から、いや、彼の脳内から直接響いてきた。


『お前? 私に代償を払わせる? ……笑わせないでよ。ちりのような存在が』


ハミールの背筋に氷のような悪寒が走った。 耳元で囁くような冷気。


『落ち着いて……喧嘩しに来たんじゃないの。奇跡を売りに来ただけよ』


ハミールは人間離れした速度で振り返り、距離を取った。 そして、彼女を見た。


見るだけで痛みを感じるほどの美貌。 永遠の深淵を回るような渦を巻いた桃色の瞳。光を吸収する漆黒と桃色のドレス。 ショートカットの金髪の少女。 部屋の重力が十倍になったかのように、空気が重くよどむ。


「取引をしに来たの」


彼女は悪意たっぷりに微笑んだ。


「それだけよ」 「二度は騙されんぞ」


ハミールは科学者たちの失敗を思い出し、苦々しく吐き捨てた。


「失せろ。貴様が何を提示しようと興味はない」


彼女の笑みが剃刀かみそりのように鋭くなった。


「本当に……?」


その瞬間。 生命維持装置の機械音が止まった。消毒液と絶望の臭いが消え、懐かしい花の香りが満ちた。


『ハミール……どうしたの? ここはどこ? どうしてお花がいっぱいなの?』


時が止まった。 最強の男の膝が震えた。その声は、何年もの間、夢にまで見たものだった。


「……母上?」


ハミールは恐る恐るベッドを見た。 そこには、彼女がいた。 ただ呼吸をしているだけではない。澄んだ瞳で彼を見つめ、生き生きとした血色が戻っていた。 目覚めたのだ。完全に。


「どうして泣いているの? ヤミールとクララは?」 「そんな……ありえない……」


ハミールはよろめいた。


「幻覚だ! 俺をもてあそぶなッ!!」


パチンッ。 乾いた指パッチンの音が響いた。 ヤネットの表情から遊びの色が消え、神の不機嫌さが露わになった。


突如、部屋が闇に包まれた。 大気圧が急降下し、視界が黒く塗りつぶされる。 少女の背中から十二枚の黄金の翼が爆発的に広がり、頭上には回転する神聖な幾何学模様マンダラの光輪が現れた。


「ガハッ……!?」


圧倒的な霊圧がハミールを床に叩きつけた。最強の肉体が、抗うことさえできずに平伏させられる。


「私を怒らせて、この星系ごと消し飛びたい?」


彼女は蟻を踏み潰すような無関心さで尋ねた。


「な……何だ、これは……力が……入らな……」


ハミールは床に額を押し付けられ、呼吸さえままならない。


「ふん。人間には荷が重すぎたかしら」


ヤネットが瞬きすると、神威しんいは霧散し、部屋は元通りになった。


「私の願いを聞けば……彼女は戻ってくるわ」


だが、アルミラ女王は神の圧力など意に介さず、母性本能だけで息子に駆け寄っていた。


「ハミール! 大丈夫!?」


彼女は息子を抱きしめた。


「母上……本当に、母上なのか……」 「ええ、私の可愛い子……」


二人は涙を流して抱き合った。運命が禁じたはずの幸福な一瞬。 だが、残酷な神はそれを許さない。


フワッ。 アルミラ女王の体が宙に浮き、見えない糸に絡め取られた蝶のように拘束された。


「まだ渡さないわよ」


ヤネットは冷淡に言った。


「先に私の願いを叶えて」 「貴女!」


空中のアルミラが気丈に叫んだ。


「人を弄ぶような真似は正義に反しま――」 「うるさいわね、おばさん」


ヤネットが面倒くさそうに手を振った。 フッ。 生命の灯火が消えた。アルミラは糸の切れた人形のようにベッドへ落下し、再び昏睡状態へと戻った。


「姉さんのせいでイライラするわ……で? どうする?」 「……何が望みだ」


ハミールの涙は乾き、漆黒の決意に変わっていた。


「男の命よ」


ヤネットは狂気的な愛らしさで歌うように言った。


「その男の首を持ってきなさい。そうすれば母親を返してあげる」 「殺しだと? ……誰だ」 「貴方なら簡単よ。動機もあるしね」


ハミールは悟った。トーナメントの少年だ。


「あの少年のことか……断る。俺は貴様の操り人形でも殺し屋でもない」 「そう」


ヤネットは楽しげに首をかしげた。


「じゃあ、この太陽系を今すぐ消すわ。お母さんも、可愛いクララも、ヤミールも……塵一つ残さない」


ハミールの背筋が凍った。彼女ならやる。そしてできる。その確信があった。 彼は立ち上がった。手は震えていたが、声は鋼のように硬かった。誇りを砕く音が聞こえた。


「分かった……やる」


彼は苦渋を飲み込んだ。


「あの少年の首を獲ってくる。母上を……皆を救うために」 「アハハハハ! 素晴らしいわ!」


契約は成立した。 部屋を去り際、ヤネットは言い捨てた。


「ちなみに、お母さんの病気は私が『封印』したわ。他の誰にも治せない。失敗すれば死ぬだけよ」 「……承知した」


◇◆◇


ハミールは無言で準備を整え、城を出た。 クララの呼び止めにも応じず、彼は修羅の道へと足を踏み入れた。


「兄様! どこへ行くの!?」


答えはない。 宇宙船のコクピットで、ハミールは通信機を握りしめた。


『どうしました、ボス?』 「新しい任務だ。準備しろ」 『ヒャッハー! 金になるんですかい?』 「ああ。莫大な報酬だ」 『内容は?』


ハミールは歯が砕けるほど食いしばった。


「……人間狩りだ」


エンジンが獣の咆哮を上げ、船は星空へと消えていった。 ハミールは誇りを捨て、故郷を捨て、殺戮者への道を歩み始めた。 宇宙のどこかで、まだ何も知らないジェイズを狙って。


***


【ホテルの一室:嵐の後の朝】


重厚なカーテンの隙間から、朝の光が差し込んでいた。 室内は、女性の香水と汗、そして情事の残り香が充満している。 キングサイズのベッドは、枕とシーツの戦場跡のようだった。様々な色の髪が散乱し、六人の美女が泥のように眠っている。


「ん……朝か……」


ジェイズは重いまぶたを開けた。 隣ではアリスが彼の腕にしがみついていた。彼女のまつ毛が震え、緑の瞳が開いた。


「おはよう……」 「おはよう……よく眠れた?」


アリスは彼の顔を見て、昨夜の記憶が一気に蘇ったのか、顔を真っ赤にした。


「す、すごくよく眠れたわ……! 魔法みたいだった! 本当に……男の人ってあんなに体力があるものなの? 貴方、凄すぎたわ……」 「いや……一般化しないで。ジェイズはセックスの悪魔よ……」


反対側からシャルロットがむにゃむにゃと呟いた。


「人間とも魔獣とも比べちゃダメ……」 「そういえば……」


ラファエラが猫のように伸びをした。


「貴方、してる時は別人みたいね。普段は優しくてちょっと抜けてるのに、行為中は……支配的で攻撃的なオーラが出るわ。気づいてた?」


ジェイズは気まずそうに髪をかき上げた。


「まあ……自覚はあるよ。スイッチが入ると制御が効かなくなるんだ。昔のトラウマみたいなもんで……今は話したくないな」


空気が重くなりかけたが、アリスがそれを許さなかった。彼女は身を乗り出して彼にキスをした。


「どうしたの?」 「ただ……したかっただけ」


アリスの笑顔は無敵だった。


「私もキスしたい!」 「私も! 独り占めはずるい!」


ラファエラとシャルロットが飛びかかってきた。 こうして、ジェイズのつかの間の平和な朝は、愛の窒息によって幕を開けた。


***


【ロビーでの別れと、驚愕の金額】


チェックアウトを済ませた一行を、あの受付係が輝くような笑顔で迎えた。


師匠マスター! またのお越しをお待ちしております! 昨夜の弁償代は割引しておきました、VIP待遇で!」 「師匠……?」


ドラカリスが怪訝な顔をする。


「長い話なんだ……行こう」


自動ドアを出る直前、アリスが足を止めた。 彼女の表情から朝の喜びが消え、切なさが浮かんでいた。


「ジェイズ、みんな……ここでお別れね。昨夜は人生で一番幸せな夜だったわ」


沈黙が落ちた。誰も茶化す者はいなかった。 ジェイズは振り返り、自信に満ちた笑みを向けた。


「また会えるさ。宇宙は広いけど、そこまで広くない」


アリスの瞳が潤んだ。彼女はせきを切ったように想いを告げた。


「会いたいわ。だって私……貴方のことが大好きなんだもの」 「えぇぇっ!?」


女性陣が一斉に叫んだ。 アリスは真っ赤になって俯いた。


「でも……ギルドに昨夜のことがバレたら大変なことになるわ。お願い、ここだけの秘密にしてね? 私には部下たちの生活がかかってるの……」


ジェイズは彼女のもろさに胸を打たれ、一歩踏み出した。


「教会のギルドなんて辞めちまえよ。俺の部隊に来い」 「えっ!? ……無理よ。あの子たちの生活費、トーナメントの賞金がなくなって……彼らの夢が……」 「俺がなんとかするって言ったろ? 口座番号教えて」 「は?」 「いいから」 「本気なの、ジェイズ?」


シャルロットが呆れた。


「莫大な額よ? 腎臓売っても足りないわよ」 「夢でも見てるんじゃないの……?」


ジェイズは苦笑いで通信機を取り出した。


(アレリスに頼むしかない……情けねぇ……)


【回想:アレリスとの通話】 『ダーリン! 寂しかったわ!』 「あー、うん……ちょっと頼みがあって……50万ディープコインほど、この口座に入れてくれないか?」 『それだけ? おやつ代より安いやつね。女のため?』 「うっ……まあ、そうだけど……」 『いいわよ。貴方は優しい人だから、困ってる人を助けたいんでしょ? 即金で振り込ませるわ。愛してる!』 【回想終了】


(15歳の女の子に金を無心するヒモ男……俺って一体……)


「確認してくれ」


アリスがおそるおそる端末を確認すると、目玉が飛び出た。 必要な額以上のゼロが並んでいた。


「嘘……どうやって……?」 「コネがあるって言ったろ?」


ジェイズは鼻を伸ばしたが、内心冷や汗ダラダラだった。 アリスは涙を流して彼に抱きついた。


「ありがとう……! 本当にありがとう、ジェイズ!」 「いいってことよ。……全部片付いたら、俺のところに来てくれるか?」


アリスは顔を上げ、涙に濡れた笑顔で力強く頷いた。


「ええ! 必ず行くわ。その時は……身も心も、完全に貴方のものになるから」


その発言は宣戦布告だった。 他のメンバーの嫉妬の炎が一斉に燃え上がった。リタでさえ舌打ちした。


「さあ、帰るわよ!」


リアが頬を膨らませて号令をかけた。


ピュ~イ♪ 口笛が鳴った。 受付係のフリオがこっそりと手招きしていた。


「師匠、これを受け取ってください」


彼は黒と金の高級な名刺を渡してきた。


「私はフリオ。情報屋ネットワークの一員です。銀河のあらゆる情報が必要なら連絡を。……その代わり、夜のテクニックを伝授してくださいね?」 「あ、ああ……分かったよ」


ジェイズは苦笑いしながら名刺を受け取った。


「謙虚さも魅力ですね、師匠。昨夜の激闘を見れば実力は明白です」


こうして、新たなコネクション(と誤解)を手に入れ、ジェイズたちはホテルを後にした。


(続く)


挿絵(By みてみん)

ハミール、始動。 ジェイズがのん気にしている間に、最強の刺客が動き出しました。 次回の展開は予測不能!? そしてフリオさん、いいキャラしてますね。今後重要な情報源になりそうです。 (主にジェイズの夜の武勇伝が広まる予感がしますが……)。


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