表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/59

祝宴の夜の誓い

女神たちの契約、そして英雄の誓い。 上空で交わされた恐るべき「遊戯ゲーム」のルール。 一方、地上では祝宴が続いています。 華やかな夜の裏で、それぞれの運命が動き出します。 嵐の前の静けさの中、彼らが胸に刻む「誓い」とは……?


挿絵(By みてみん)

その夜、混乱の余韻は消え、祝祭の穏やかな空気が街を包み込んでいた。 中央広場は市民で埋め尽くされ、魔法のランタンが石畳を黄金色に染めている。どの顔にも安堵と感謝が浮かんでいた。


命を懸けた英雄たちが次々と名前を呼ばれ、バルコニーや路地まで響くほどの喝采を浴びる。 市長が厳かに演説を行い、そして驚くべきことに、至高の皇女アレリス・ヴァルタリアに場を譲った。彼女は凛とした佇まいで登壇したが、心臓は早鐘を打っていた。


(あ、いた……)


彼女は群衆の中にジェイズの姿を見つけた。


(やっぱり、美しい女性たちに囲まれているわね。嫉妬しちゃうけど……仕方ないわ。そういうところも含めて、彼を愛すると決めたのだから)


市長が大げさに両手を広げた。


「さて、最後に! 悪魔を打ち倒し、この街を守った最大の功労者をお呼びしましょう! Eランクの錬金術師ジェイズ、そして至高の皇女アレリス様! どうぞ壇上へ!」


興奮したざわめきが広がる。 舞台袖で、ジョセフィーナが不機嫌そうに眉をひそめた。


「あの市長、ずいぶんと無礼ね。皇女殿下をあんな風に紹介するなんて」


アレリスは微かに微笑んだ。


「いいのよ、ジョセフィーナ。愛する人と同じ舞台に立てるだけで幸せだわ」 「あの子は悪魔です」


ジョセフィーナは拳を握りしめた。


「あんなのと関わってはいけません。きっと後悔なさいますよ」 「ルシファーだろうと構わないわ」


アレリスの瞳が輝く。


「愛してるの。地獄の底までついていくわ」


ジョセフィーナは諦めて溜息をついた。


「いつか大人になれば、私の言葉の意味が分かりますよ」


一方、ジェイズは足を引きずるように重い足取りでステージに上がっていた。 歓声、口笛、拍手の嵐。彼は真っ赤になってうつむき、消えてしまいたいと願っていた。


「よくやったな、少年」


市長が満足げに囁いた。


「Sランク任務をクリアしたってのは伊達じゃなかったな」 「ありがとうございます……誰でもできたことですよ」


ジェイズはさらに身を縮こまらせた。 だが、その騒がしくも温かい歓声は、彼に初めて「受け入れられた」という実感を与えていた。冒険の幸先の良いスタートだと感じていた。


その時、柔らかな手が彼の肩に触れた。 電流のような熱が走り、振り返るとそこにはアレリスがいた。ジェイズの体は反射的に反応し――その場にひざまずいた。


「こ、皇女殿下、お初にお目にかかりま……」


皇女は頬を膨らませた。その愛らしい表情は、威厳ある皇族のものではなかった。


「他人行儀はやめて。私は貴方の……」 「あーっ! 同じ舞台に立てて光栄ですっ! アハハハ!」


ジェイズは慌てて立ち上がり、彼女の言葉を笑いで遮った。 市長がその様子を見て、マイクを通して大声で笑った。


「おや、恋の予感かな? でも少年、諦めなさい。君のような平民に、この美しいお方は高嶺の花だ! ガハハハ!」


ジェイズとアレリスは同時に市長を睨みつけた。その殺気で市長の笑い声が凍りつく。


「今すぐ処刑してもいいのかしら」


アレリスが氷のような声で囁く。


「落ち着いて」


ジェイズが真顔で止める。


「放っておいても、バカには天罰が下りますよ」


***


式典は歓喜の中で幕を閉じた。 ジェイズたちは笑い合いながら会場を後にする。


「本当に楽しかったわ。部下たち以外とこんなに親しくなれたのは初めてよ」


アリスの表情は、いつもよりずっと柔らかかった。


「何言ってるの? まさかお別れの挨拶?」


ヴァレンティナが怪訝そうに尋ねる。


「ええ、ホテルに戻らないと。明日は惑星プラリズへ出発するし……」 「何言ってんの、夜はこれからよ!」


シャルロットが悪戯っぽく割り込んだ。


「私たちも明日出発するんだから、これが最後の夜じゃない。飲みに行こうよ!」 「えっ……私は教会の騎士よ。そんな不純な遊びには……」


アリスが胸に手を当てて躊躇する。 リタが爆笑した。


「何言ってるんですか。ここには既に堕落しきったエルフの神官もいますよ? アハハ!」 「誰のことよメガネ!」


ラファエラがリタを小突く。


「リタの言う通りよ。ここには貴女より堕落したのがいるから大丈夫」 「でも……未成年がいるわよ」


リアがリンを見た。


「この子も一緒でしょ?」


シャルロットが舌打ちした。


「そうだった。このガキどうする? 私は飲みたいのよ!」 「俺が帰るよ。今のところ、俺が保護者だし」


ジェイズが決然と言った瞬間、女性陣が一斉に叫んだ。


「貴方がいないと意味ないじゃない!」


全員の声がハモった。 ヴァレンティナがこめかみを揉んで溜息をついた。


「……分かったわ。私がその子の面倒を見る。貴方たちは行ってらっしゃい」 「でも、隊長……」 「議論は終わり!」


シャルロットが笑い飛ばした。


「クラブに行くわよ! アリスも強制連行!」 「ええっ……ちょっ……」


ラファエラがアリスの腕を掴んだ。


「行くわよ。酔っても人を石にしないでね?」 「主よ、『クラブ』とは何じゃ?」


ドラカリスが興味津々で尋ねる。


「音楽があって、いい雰囲気で、酒がいっぱいある場所だ」 「楽しそうじゃな! 妾も行くぞ!」


(この女たち……全員同じ男を狙ってるくせに、私を仲間外れにする気ね……)


リンは不満げに眉をひそめた。


その瞬間、太陽系を貫く強大で不吉な波動を感じ取った。 リン――女神リンダは即座に悟った。


(何……? ヤネット? どうやら居場所を突き止めたようね。あの男を消した時に力を使いすぎたわ。……直接対決して、ゲームの勝敗を教えてあげないと。このままだと、ここが消し飛ぶわ)


彼女は無邪気なふりをして、ヴァレンティナのドレスの裾を引っ張った。


「おばさ……お姉ちゃん、眠い。連れてって」


(今は無力な幼女を演じないと。宇宙規模の災害が起きる前に、ヤネットを止めなきゃ)


***


「……お姉ちゃん?」


ヴァレンティナは溜息をつき、肩の力を抜いた。


「はいはい……約束したしね」 「ありがとうございます、隊長。本当にすみません」


ジェイズが頭を下げる。


「貸しにしておくわ。……楽しんでらっしゃい!」 「あ、ああ……ありがとう!」


女性陣は笑い声を残して、光と音楽の溢れる夜の街へと消えていった。


***


【星々の彼方での密約】


都市の遥か上空、大気圏外の静寂の中。 一筋の光が計算不能な速度で虚空を切り裂き、大気圏に触れる寸前でピタリと静止した。 脈動する光の塊。


「あら……お出迎え?」


残酷なほど軽やかな声が宇宙そらに響いた。


「何をそんなに心配しているの、お姉様?」


リンダは既にヤネットを補足していた。彼女の前に具現化する。その瞳は澄み渡り、かつ危険だった。


「探し物は終わりよ。私が先に見つけた。彼は私のもの。貴女の出番はないわ」 「そうかしら? 面白いわね……」


ヤネットは毒々しい笑みを浮かべた。


「なら、貴女がその矮小わいしょうな人間に何を見出したのか、私が直接確かめてあげるわ。どこにいるの?」 「今は友達と一緒よ」


リンダは頬を微かに染めて答えた。


「あら……」


ヤネットがクスクスと笑う。


「『友達』じゃなくて『女たち』でしょう? アハハ! お姉様、よりによって浮気者のクズに惚れるなんて」 「関係ないわ」


リンダは視線を逸らさなかった。


「私はただ、この感情を理解したいだけ。彼だけが私に、今まで知らなかった『何か』を感じさせてくれる。だから一緒にいたいの」 「リンダ……そんなゴミのために力を削ってまで? バカみたい」


ヤネットは苛立ちを露わにして舌打ちした。


「さっさと奪って、全部消して、好きなように使って、飽きたら捨てればいいじゃない」 「分かってないわね、ヤネット。それじゃ空っぽなのよ……私は違うことを経験したいの」 「殺すことになるわよ。時間の問題ね」


ヤネットの瞳が歪んだ喜びで輝く。


「貴女はある感情を発現させて、それで全てが終わる。私には分かるわ……だって私が今、それを感じているから」 「……何の話?」 「嫉妬よ」


その言葉が、宇宙の闇をさらに深く染めた。


「それを知った時、あの少年の命運は尽きるわ……」 「その感情を……発現したの? なぜ? 教えて!」


リンダは恐怖よりも好奇心に目を輝かせた。


「教えないわよ」


ヤネットは子供のように吐き捨てた。


「でも覚悟しておいて。私のたった一人のお姉様を、あんなちっぽけな存在に奪われるなんて許さないから」 「何をする気?」 「私の好きにするわ!」 「ダメよ」


リンダの声が鋭利な刃物のように研ぎ澄まされた。


「好き勝手はさせない……」 「なら貴女もね」


ヤネットは即座に条件を突きつけた。


「彼の問題に直接介入するのは禁止。手助けも、蘇生も、アドバンテージを与えるのもナシ。力を貸すなんてもってのほかよ」 「『直接』という言葉を多用するわね」


リンダは不敵に微笑んだ。


「間接的にならいいという解釈でいいのかしら? ……狡猾ね。つまり貴女も、間接的に手を出してくるつもりなんでしょ?」 「ご名答、お姉様」


ヤネットは悪意に満ちた笑みを浮かべた。


「これが新しい契約、私たちの新しい『遊び』よ。もし貴女が正面から彼を助けたり、指一本でも触れて力を貸したら――彼がいる銀河ごと消し飛ばしてあげる。痕跡一つ残さないわ」 「分かったわ」


リンダは瞬きもせずに応じた。


「その代わり、貴女も彼に直接手出しはできないわよ」 「それは保証できないかなぁ、お姉様?」


ヤネットの危険な笑みは、一瞬長く続いた。 二人の間に浮かぶ光が、病んだ心臓のように明滅する。遥か眼下では祝祭が続いているが、ここでは二人の女神が、世界を消し去る力を持った言葉で現実を切り刻んでいた。


こうして姉妹は契約を交わした。 我らが英雄の運命を決定づける、残酷な遊戯の契約を。


(続く)


挿絵(By みてみん)

ついに「宇宙編」、始動へ! 祝宴の夜が明け、いよいよ旅立ちの時が迫ります。 ジェイズ、アリス、そしてリン(リンダ)。 新たな決意を胸に、彼らは未知なる星の海へ。 次回から舞台は宇宙へ! スケールアップした冒険にご期待ください!


【お願い】 「続きが楽しみ!」「宇宙編ワクワクする!」と思ったら、 下にある ☆☆☆☆☆ で評価をお願いします! 宇宙船の燃料になります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ