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神の如き幼女と星を砕く悪魔 ――双子の遊戯は続く

全部スッキリ出しちゃいました(意味深)」 リンの正体、そしてジョナサンの最期。 あまりにも圧倒的な「神」の力の前に、人間の悪意など無力でした。 そして宇宙の彼方では、さらにヤバい「妹」が動き出します。 星一つを暇つぶしで消すヤンデレ妹……ジェイズの胃薬が足りません!

挿絵(By みてみん)

その頃、別のテーブルでは。 アリスは仲間たちに囲まれていた。聖剣の乙女は押し黙り、視線はどこか遠くを彷徨さまよっていた。言いたい言葉が喉元で止まり、魂がどこかへ旅に出てしまったような放心状態だ。


仲間のドレンが、心配とからかいが入り混じった目で彼女を見た。


「隊長さん、今夜はずいぶん上の空だな」


ミナも真剣に頷いた。


「無理もないわよ……でも、やっぱり待ってればよかったんじゃない?」


ライラは寂しげに指を組んだ。


「そうね。今日を逃したら、もう一生会えないかもしれないし」 「な、何を言ってるのよみんな!」


アリスは耳まで真っ赤になって抗議した。


「私はいつも通りよ……! それに、そんなこと重要じゃないわ!」


いつも元気なレオが、悪戯っぽい笑みで爆弾を投下した。


「じゃあ、あそこに彼が来ても何とも思いませんよね?」


アリスの心臓が跳ね上がった。 勢いよく振り返ると――そこには、自信に満ちた足取りで人混みをかき分けてくるジェイズの姿があった。 視線が交差する。世界から音が消えたようだった。


「ジェイズ……」


安堵と共に彼女は呟き、顔が熱くなるのを感じた。


「無事だったのね……」


彼は安心させるように微笑んだ。


「ああ。心配するなって言っただろ?」 「そ、それで……どうして自分のグループと一緒にいないの?」


ジェイズは迷いなく、満面の笑みで答えた。


「決まってるだろ? 今夜はずっと一緒にいるって約束したからな」


アリスの顔から火が出そうだった。彼女は溢れ出す幸福を隠せず、瞳の輝きが全てを物語っていた。 彼女はエメラルドの瞳を潤ませ、小さく頭を下げた。


「ええ……今夜は、私をお願いね」


聖剣の乙女は、夢の中にいるようだった。 ジェイズも微笑み返し、そっと彼女の手を取って女性陣のテーブルへとエスコートした。


ジェイズは少し緊張気味に咳払いをした。


「ごめん……今夜はずっとアリスさんと一緒にいるって約束したから、その報告だけ。じゃあ、また明日」


シャルロットが唇を尖らせ、彼を指差した。


「バカ。いちいち許可なんて取らなくていいのに。ちゃんと彼女をエスコートしなさいよね!?」


ラファエラは静かに、しかし認めるように頷いた。


「いいえ、筋を通したのは立派よ。報告してくれてありがとう」


リタは眼鏡の奥の寂しさを隠すように目を伏せた。


「うん……じゃあ明日ね。私はそれでいいです」


リアが穏やかに言った。


「私がヴァレンティナさんに伝えておくわ。あの子と一緒にトイレに行ってるから」


ドラカリスが不敵な笑みを浮かべ、ジェイズの耳元に顔を寄せた。


「主よ、聖剣の乙女を『真っ二つ』にしてやれ。あの小娘は妾がホテルに連れ帰るから、心配無用じゃ……」 「ま、真っ二つ……?」


アリスが目を白黒させ、顔を真っ赤にした。


「ど、どういう意味かしら……?」 「な、何でもないッ!」


ジェイズは慌てて手を振った。


「この竜はいつも適当なことばかり言うんだ! アリスさんとは、五日前の事件についての報告会をするだけだから! それだけだから!」


ラファエラが立ち上がり、規律の象徴である剣を床に突いた。


「まあ、楽しんできて。式典はもう始まってるけど、呼ばれたらすぐ行けるようにね」 「ああ、分かってる」


***


一方。 センテラの煌びやかな街路を、一台の最新鋭魔導車が猛スピードで疾走していた。 後部座席では、ジョナサンが怒りに身を焦がしていた。歯を食いしばり、脂汗を垂らし、思考は毒のように煮えたぎっている。


(クソッ……信じられん! 誰だあの小僧は? あの汚らわしい手で皇女殿下に触れるだと!?)


(それにあの魔女め……僕に呪いをかけやがって……だが関係ない。復讐の障害にはならん。殺し屋を雇ってやる。金なら腐るほどある……あの平民には死で償わせてやる!)


突然、車体が激しく揺れ、急ブレーキの音が響いた。 ジョナサンは前の座席に叩きつけられた。


「何をしている貴様ッ! 僕を怪我させる気か!?」


運転手が青ざめて謝罪した。


「申し訳ございません、旦那様……ですが、道に誰か飛び出してきて……」 「何だと? 僕の道を塞ぐ命知らずはどこのどいつだ?」 「分かりません……まだ幼い少女のようです」


ジョナサンは鼻で笑った。


「どうせ僕の金目当ての女だろう。き殺せ! 邪魔をする奴が悪いんだ!」 「は、はい……」


エンジンが咆哮を上げる。 車は再び加速し、路地の中央に立つ小さな人影へと突っ込んでいく。


「どかないと死ぬぞ!」


運転手が叫んだ。だが少女は動かない。 両手を下げたまま、迫り来る鉄の塊をただ見つめている。恐怖など微塵も感じていないかのように。あるいは、挑んでいるかのように。


ジョナサンは狂ったように笑った。


「死ねぇぇぇッ! 僕の金が欲しいだけのゴミクズがぁぁッ! ハハハハハ!」


激突は不可避だった。車体はその謎の影に真正面から突っ込んだ。


そして、あり得ないことが起きた。


グシャアアアアッ!!


車の方が、まるで見えない壁に衝突したかのようにひしゃげ、ひっくり返ったのだ。 ガラスが弾け飛び、金属があり得ない角度に折れ曲がる。エンジンの咆哮は火花と煙の中に消えた。


少女は、一ミリたりとも動いていなかった。 彼女は被害者ではなく、絶対的な『壁』だった。 車体は彼女を中心に砕け散り、まるで豆腐のように破壊されていく。


灼熱の刃となった車の破片が周囲の壁や窓を粉砕する。運転手は捻じ曲がった金属に押しつぶされ、見るも無残な肉塊へと変わっていた。燃料と血の匂いが充満する。


だがそのカオスの中で、ジョナサンだけは生きていた。 傲慢な貴族は瓦礫に挟まれ、埃と切り傷にまみれながら、浅い呼吸を繰り返していた。


薄目を開け、目の前の光景を捉えようとする。 煙と火の粉の向こうから、人影が近づいてくる。


女性だ。 溶けた黄金のように輝く金髪が、存在しない風になびいている。頭上には天使のハイローが浮かび、闇を払うような神々しい光を放っていた。その姿はあまりにも美しく、あまりにも現実離れしていた。


「あ……ああ……」


ジョナサンは掠れた声で呻いた。


「な、何が起きた……? 誰だ……?」


女性は彼の一歩手前で足を止めた。 ガラス越しに虫を見るような、冷徹で無機質な視線が彼を射抜く。


「感謝するわ。私の目的を果たすのに、貴方以上の傲慢な愚か者はいなかった。最高の駒だったわ」


ジョナサンは目を見開いた。


「な……何を言って……誰なんだ、お前は?」


金髪の美女は、慈悲深く、かつ残酷な笑みを浮かべた。


「こうすれば分かるかしら?」


一瞬で彼女の体が縮み、変形した。 輝く天使が消え、そこにはボロボロの服を着た桃色の瞳の幼女が立っていた。


ジョナサンの血が凍りついた。


「ま……まさか! お前は……あの時の!?」


幼女は小首をかしげ、無邪気で残酷な笑みを浮かべた。


「そう。リンよ。あの方に近づくために、貴方を利用させてもらったの。そして目的は達せられた……だから貴方はもう用済み(ゴミ)」


心臓が破裂しそうな恐怖の中、ジョナサンは震える手を伸ばした。


「ま、待ってくれ! 望むものは何でもやる! 金も、宝石も、権力も! 女が望むものなら何でも用意してやる! だから殺さないでくれ!」


少女が瞬きすると、再び光が溢れ、大人の美女の姿に戻った。 その美貌は至高だったが、声には絶対的な軽蔑が満ちていた。


「身の程知らずな人間ね。ガラクタで私を買えるとでも? 宝石など不要。私は明日太陽を昇らせることも、星々を永遠に消し去ることもできる。私は貴方の理解を超えた存在……『始まり(アルファ)』にして『終わり(オメガ)』」


悪寒がジョナサンを貫いた。 細胞の一つ一つが理解していた。目の前にいるのは、決して触れてはならないタブーだと。


不意に、リンダの背が輝いた。 六枚の光の翼が出現し、天を覆うように広がる。頭上の光輪が拡大し、複雑な幾何学模様を描く歯車となって回転し始めた。それは世界のことわりそのもののようだった。


世界がきしむ。 時間が止まり、次元が鏡のように重なり合う。重力も、大気も、存在そのものが彼女をおそれて停止した。


「アアアアアアアアアッ!!」


ジョナサンの絶叫が響いた。 数秒で彼の皮膚は老婆のようにしなび、髪は白くなって抜け落ち、歯がぐらつき、爪が剥がれた。 その神々しい姿を見るだけで、彼の生命力そのものが食い尽くされていく。


「や、やめ……何なんだ、お前は……! 許してくれ! 僕が悪かった!」


リンダは光を収束させ、再び「人間」に近い姿に戻った。だが、その場に残る威圧感は消えない。


「今のは私の力のほんの欠片……それだけでこの有様。哀れね。滑稽だわ」


ジョナサンは干からびた体を震わせ、絶望の中で問うた。


「なぜだ……? なぜ貴方のような存在が、あんな奴のために……?」


リンダは手をかざした。 純粋で、絶対的な破壊のエネルギー球が、彼女の手のひらで唸りを上げた。 彼女の笑顔は冷たく、無慈悲だった。


「炎の錬金術師……ジェイズのためよ」


ジョナサンの目が極限まで見開かれた。それが彼が見た最後の光景だった。


エネルギー球が彼を、瓦礫を、空間ごと呑み込んだ。 地面が消滅し、壁が崩壊し、物質が存在を拒否された。 一瞬にして、貴族も、車も、通り全体が「無」へと帰した。


後には、最初から何も存在しなかったかのような、不自然な静寂だけが残った。


***


数分後。ギルドのトイレの前で、ヴァレンティナは苛立たしげに腕を組んでいた。 コンコン、とドアを叩く。


「ねえ、まだなの?」


ドアがゆっくりと開き、リンが無邪気な笑顔で出てきた。その瞳の奥の光に気づく者はいない。


「お待たせしました、お姉ちゃん! 全部スッキリ出しちゃいました!」


ヴァレンティナは片眉を上げた。


「お行儀の悪い言葉ね」


リンは悪戯っぽく舌を出した。


「ごめんなさい、おばさ……じゃなくて、お姉ちゃん!」 「おばさんって言ったら減点よ」


ヴァレンティナは顔を赤らめた。 少女はクスクスと笑った。その無垢な仮面の裏にある真実など、誰も知る由もなかった。


***


数億光年の彼方。サトーム恒星系。


夜の遊園地はネオンの光と喧騒に包まれていた。子供たちが走り回り、大人たちは笑い、絶叫マシンの音が響く平和な夜。


その人混みの中で、一人の女性が際立っていた。 ジェットコースターの座席に一人で座り、巨大なミックスソフトクリームを舐めている金髪の美女。 ヤネットだ。


「ふん……」


彼女は退屈そうに呟いた。


「下等生物のくせに、遊び方は知ってるみたいね」


彼女の視線が、順番待ちをしながらキスをしているカップルに止まった。 ヤネットの表情が、急速に曇る。


「愛、か……」


嫌悪感が滴り落ちるような声だった。


「お姉様は今頃、あれを楽しんでいるのね。気持ち悪い。獣みたいに唾液を交換して……全員殺したくなるわ」


アトラクションが終了し、コースターが止まった。 エイリアンの従業員が、マニュアル通りの笑顔で近づいてきた。


「お客様、終了です。次の方がお待ちですので降りてください」


ヤネットは動かなかった。ソフトクリームを見つめたまま、世界を無視している。


「おい、聞いてるのか?」


従業員が苛立ち、彼女の手首を掴んだ瞬間。


パンッ!


風船が割れるような音と共に、従業員の上半身が弾け飛んだ。 内臓と血の雨が降り注ぎ、客たちの悲鳴が上がる。


「気安く触るな、汚らわしい」


ヤネットは絶対零度の視線を向けた。 遊園地はパニックに陥った。逃げ惑う群衆、爆弾テロだと叫ぶ声。 そのカオスの中、ヤネットは不気味なほど優雅に宙へと浮き上がった。


「退屈ね……」


彼女は少女のようにあくびをした。


「何か暇つぶしになるものはないかしら」


その時、彼女は感じ取った。 遠く、遥か彼方の次元から響く、懐かしくも強大な波動を。


彼女の唇がゆっくりと吊り上がり、悪夢のような笑顔を形作った。


「お姉様……」


狂気の光が瞳に宿る。


「見つけたわ。おもちゃを見つけたのね? ……ふふ、なら壊してあげる。私だって遊びたいもの」


次の瞬間、彼女は飛び立った。 その衝撃波だけで遊園地は消し飛び、周囲の都市が更地になった。


瓦礫の中、迷子になった子供が泣き叫ぶ。 「ママ! ママ!」 母親が駆け寄り、娘を抱きしめた。 「よかった……さあ、お家に帰りましょう」 「うん……美味しいご飯作ってね」


だが、ご飯を食べる時間は永遠に来なかった。


視界が白に染まる。


サトーム恒星系、そしてその惑星は、音もなく崩壊した。 たった一人の「妹」の気まぐれによって、宇宙の塵へと還元されたのだ。


無へと帰した虚空に、ヤネットの冷酷な笑い声だけが響いた。


「こんな醜くて役立たずな星、誰も惜しまないわよね……お姉様……お姉様だけが、私の全てなんだから」


(続く)

挿絵(By みてみん)


最強姉妹、降臨。 リン(リンダ)とヤネット。 この姉妹のスケール感、伝わりましたでしょうか? 片や時間を止め、片や星を消す。 こんなのがジェイズの周りに集まってくるなんて、彼の前世は一体何をしたんでしょうか(笑)。


【お願い】 「リン様怖すぎ!」「ヤネットやばい!」「ジョナサンざまぁ!」と思ったら、 下の ☆☆☆☆☆ で応援をお願いします! 更新速度が上がります!

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