条件付きの婚約と、魔女への小さなお仕置き
「結婚します!(嘘とは言ってない)」 ジョセフィーナの圧力に屈した(?)ジェイズの仰天プロポーズ。 そして、そのジョセフィーナ自身もジェイズの「実演」の餌食に……! シリアスとコメディ、そしてお色気が入り乱れる第4章。 新たな仲間(候補)リンの健気な姿にも注目です!
ジョセフィーナは目に見えない重りを背負ったかのように、がっくりと項垂れていた。 ジェイズは狼狽して後ずさった。
「本気で言ってるんですか? 俺はただの田舎者ですよ! 貴方は銀河で一番偉い人でしょう……住む世界が違いすぎる!」
アレリスは顔を上げた。緑の瞳が涙で潤んでいるが、そこには激しい炎が宿っていた。
「だから関係ないって言ったじゃない! 愛してるの、もうどうしようもないくらい! もし断るなら、私……私は……!」 「そこまでになさいッ!」
ジョセフィーナの声が鞭のように広間を打った。 アレリスは不満げに護衛の方を睨む。ジョセフィーナが一歩踏み出すと、その場に重苦しい威圧感が満ちた。
「殿下、後悔するような真似はおやめください。この少年にどれほどの重荷を背負わせようとしているのか、お分かりですか?」
アレリスは唇を噛んで俯いた。
「……ごめんなさい」
ジョセフィーナは溜息をつき、一瞬だけ瞳を和らげた。 そしてジェイズに向き直った。
「少年よ。こんな状況、普通ならあり得ないわね。私だって驚いているわ。でも、殿下の幸福を守るのが私の務め。だから答えてあげて……『至高の皇女』にではなく、目の前にいる純粋な少女に」
ジェイズは唾を飲み込んだ。
「身分の差も気にしない……俺みたいな下級市民で、しかも浮気性(という設定)の男と結婚したいなんて……買いかぶりすぎじゃないですか?」
ジョセフィーナは腕を組んだ。
「殿下が『瞳』で何を見たかは彼女にしか分からない。けれど、殿下の予言はこれまで全て現実になってきたわ。貴方も見たでしょう? だから、彼女はどんな答えでも受け入れる覚悟ができているはずよ」
(この人、プレッシャーかけるの上手すぎだろ……)
ジェイズは深く息を吸い込んだ。
「分かりました……なら、俺の心に従って答えます」
ジョセフィーナの顔に、勝利を確信したような笑みが浮かぶ。
「ええ。どんな答えでも、貴方を罰したりはしないと約束するわ」
アレリスは拳を握りしめ、処刑を待つ罪人のように震えていた。 我らが英雄は、皇女が座る小さな演台へと力強く歩み寄った。彼女の前に立ち、見下ろす。室内の空気は張り詰め、振動しているかのようだった。
ジェイズは肺いっぱいに空気を吸い込み、ありったけの声で叫んだ。
「もちろんッ! 至高の皇女様との結婚、お受けしますッ!!! 断るなんてそれこそイカれてるでしょうがぁぁぁぁぁッ!!!」
大理石の壁に声が反響する。 冷静さを保っていたジョセフィーナが、ポカンと口を開けて瞬きした。
「え……? えええええええっ!?」
アレリスも目を見開いて硬直している。
「き、聞き間違いかしら? 今、なんて……?」 「イエスだと言ったんです」
ジェイズはきっぱりと答えた。
「貴方と結婚します、皇女様」
少女の瞳に、新たな希望の光が宿る。
「嘘……じゃないのよね?」 「嘘なんかつきませんよ」
呆然としていたジョセフィーナが、苛立ち交じりに割って入った。
「ちょっと待ちなさい貴方たち! 頭が痛くなってきた……少年! そこは断って、彼女の熱を冷ます流れだったでしょう!?」 「すみません」
ジェイズは苦笑した。
「でも『心に従って答えろ』って言ったのは貴方ですよ。だから、正直に答えました」 「ジェイズ……夢じゃないのね? 本当に受け入れてくれるの?」
アレリスが震える声で囁く。
「言ったでしょう、結婚するって」
皇女はもう耐えきれず、彼に駆け寄って全力で抱きついた。
「愛してる、愛してる、愛してるぅッ! ♥♥♥」
ジェイズは心配そうに見ているジョセフィーナを一瞥し、アレリスの肩を掴んで少し離した。
「皇女様……でも、条件があります」 「うん、何でも聞くわ!」
彼女は期待に胸を躍らせて即答した。 ジェイズは深く息を吐いた。
「すぐには結婚しません。俺にはまず果たすべき目標があるんです。それは、南の帝国で最強の部隊を作ること」
アレリスはまるで散歩に行きたいと言われたかのように、無邪気に微笑んだ。
「そんなの明日には叶えてあげるわ! 部下に誰が欲しい? あのハミール将軍? それとも最強のSSSランク冒険者? 宇宙艦隊が欲しいの? 母艦でも、恒星でも、木星より巨大な機械惑星でも何でもあげる! 命令一つで全部貴方のものよ!」
(……こりゃ一筋縄じゃいかないな)
ジェイズは眉をひそめた。
「アレリス……」 「ダーリンって呼んで!」
彼女は食い気味に言った。 ジェイズは引きつる眉を抑えながら、仕方なく従った。
「……ダーリン。そういうのは、自分の力で手に入れたいんだ。自分の足で頂点まで登りつめたいんだよ」 「バカみたい……でも、分かったわ」
アレリスは渋々認めた。 ジェイズは視線を落とした。
「本当は、両親を探したいんです。『用心』任務を受けたまま消えた両親を。だからその目標を達成するまでは……せめて生きているか死んでいるか分かるまでは、結婚できません。待っていてくれますか?」
アレリスの目に涙が浮かぶ。
「待つわ! どれだけかかっても、貴方を待ち続ける!」 「皇女様……」
二人はジョセフィーナの呆れ顔などお構いなしに、熱い口づけを交わした。
「じゃあ、私たち恋人同士ね?」
アレリスが甘い声で尋ねる。
「ああ」
ジェイズは優しく彼女を見つめた。
「俺は至高の皇女の恋人だ……でも、これは俺たちだけの秘密ですよ? いいですね?」 「ええ、私の愛しい人! ❤️️」
彼女は頬を染め、とろけるような笑顔で答えた。
***
数分後、ジェイズとジョセフィーナは共に広間を出て廊下を歩いていた。
「問題を解決してくれて感謝するわ」
ジョセフィーナは声を潜めた。
「あの子、最近ますます制御が効かなくなってきていてね」 「何言ってるんですか」
ジェイズは笑った。
「すごくいい子じゃないですか。俺が今生きてるのも彼女のおかげだし……」
ジョセフィーナは微かに微笑んだ。
「貴方はいい子ね。もう貴方をゴミクズだなんて思わないことにするわ」 「え? そんな風に思ってたんですか? ハハハ!」 「それにしても、恋人が作れないという作り話は見事だったわ。力が強すぎて女性がおかしくなる? 馬鹿馬鹿しい。長年魔法を見てきたけれど、そんな話聞いたこともないわ」
不意に、ジェイズが足を止めた。 その瞳に悪戯な光を宿し、彼はジョセフィーナの耳飾りに触れた。一瞬で、その形状が複雑な幾何学模様へと『錬成』される。
「何をするの?」
彼女が驚いて尋ねる。
「実演ですよ」 「実演って、な……」
ジョセフィーナは言葉を続けられなかった。 鋭い嬌声が唇から漏れ、廊下に響き渡った。
「んあっ……!?」
(な……何、私の体に異変が? 死ぬほど熱い……いや、冗談じゃない! 体が……切望している? 何という凄まじい欲情……!)
ジョセフィーナは抵抗しようとした。防御結界を展開しようと魔法陣を輝かせるが、一秒も持たずに霧散する。快楽という名の炎が彼女を貫いたのだ。 再び体が震え、彼女はその場に膝をついた。
「あぁっ……これが……聖剣の乙女にやったことなのね……理解したわ……止めて……」
ジョセフィーナは顔を紅潮させ、荒い息を吐いた。
「すみませんが、止められません。一度始まったら、その欲求を満たすまで止まらないんです」 「なんとかして……お願い! もう無理ッ!」
ジェイズは彼女の腰を抱き寄せ、唇を塞ぎ、そして―― 彼女が未だかつて経験したことのない激情で攻め立てた。 限界を超えた絶頂が彼女を襲う。その鋭く力強い快楽の叫びは、危うく意識を飛ばしかけるほどだった。
厳格で高潔なジョセフィーナが、廊下に崩れ落ちる。その顔には、あの恐るべき魔女とは思えないほど、蕩けた快楽の余韻が刻まれていた。 秒殺だった。
ジェイズは仕返しとばかりに手を振った。
「俺の過去を馬鹿にして、嫌な思いをさせたお返しです」
ジョセフィーナは恍惚の表情で、呂律が回らないまま呟いた。
「ご……ごめん……なさい……かみ……さま……♥♥♥」
***
数分後、我らが英雄は女性陣の元へ戻った。 テーブルではリア、ヴァレンティナ、ラファエラ、リタ、そしてシャルロットが待っていた。大広間のざわめきは続いていたが、このテーブルの中心は間違いなくジェイズと、彼についてきた少女だった。
シャルロットが可愛らしく頬を膨らませて手を振った。
「ジェイズー! こっち座ってよぉ! ずっと待ってたんだから!」
ラファエラが眉をひそめ、厳しい口調で言う。
「何があったの? 入って早々トラブルなんて……」
リタは眼鏡の位置を直し、興味深そうに首を傾げた。
「それより……その子は誰ですか?」
彼が答える前に、小さなリンが震える声で、しかし決意を込めて前に出た。
「恩人様! 大丈夫ですか? 酷いことされませんでしたか?」
ジェイズは照れくさそうに頭をかき、何でもないように振る舞った。
「大丈夫だよ……平和的に解決した……と思う」
ヴァレンティナは優雅に脚を組み、静かに口を開いた。
「この五日間はカオスそのものだったわね。でも、ようやく話し合うべき議題が揃ったわ」
リアが柔らかく、少し控えめな声で付け加えた。
「もう地球に戻らなきゃいけません。それに……貴方の部隊『エックス・コーション』も、もうすぐ正式に認可されるわ」
ジェイズの目が輝いた。勝利したかのように両腕を上げる。
「よっしゃ! それは最高のニュースだ!」
シャルロットががっかりして頬を膨らませた。
「えー、つまんない……私たちのとこに来てくれると思ったのに」
ヴァレンティナが冷水を浴びせるように言った。
「まだ喜ぶのは早いわ。メンバーが足りないもの。実質、今のところ……貴方一人よ」
ジェイズが反論しようと口を開いたが、聞き慣れた声がそれを遮った。 ドラカリスが誇らしげにふんぞり返り、楽しそうに笑った。
「主には妾がおるではないか。部隊だろうが何だろうが、主と一緒にいられるなら入ってやるぞ」
(あの竜……)
ヴァレンティナは真剣な眼差しで彼女を観察し、指で顎に触れた。
(ギルドのランク査定なら、一体どれほどのスコアを叩き出すのかしら。間違いなく規格外ね……)
その時、小さな手が決意を込めて挙がった。
「私! 私も恩人様の部隊に入ります!」
リンが瞳を輝かせて叫んだ。 リアは優しく彼女を見たが、すぐに首を振った。
「貴方はまだ小さすぎるわ。それに、ご両親を探さないと」
その言葉は少女を刺したようだった。一瞬うつむいたが、すぐに顔を上げ、震える声で言った。
「親戚はいません。数ヶ月前に失いました……私に残されたのは、恩人様だけなんです」
皆が押し黙った。広間の喧騒が遠のく。 ジェイズは降参するように両手を上げ、溜息をついた。
「俺が面倒を見るのは無理だって……まだ娘を持つには若すぎるよ」
その冗談にテーブルから微かな笑いが漏れたが、リンの瞳には別の光が宿っていた。それは英雄に強く結びつこうとする、見えない絆の輝きだった。
「お願いします!」
リンは涙目でジェイズに身を乗り出した。
「貴方が望むなら何でもします! だから側にいさせてください……!」
シャルロットがすぐに近寄ってきて、意地悪な笑みを浮かべた。
「あらあら……未成年の女の子にも手を出すの、ジェイズ? ホントに変態なんだから! あははは!」
英雄は口をへの字に曲げた。
「病気だな、シャルロット。俺はロリコンじゃない」
ヴァレンティナが裁判官のように目を閉じ、静かに介入した。
「年齢自体は冒険者部隊に入る障害にはならないわ。ランクに見合う能力さえあれば、資格はある。……リア、彼女に身寄りが本当にいないか調査して。もし居なければ、適切な保護施設を探しましょう」
リンは頬を膨らませて憤慨し、小さな手でテーブルを叩いた。
「恩人様と一緒にいるって言ってるでしょ! 誰にも引き離させないんだから!」
女性陣が一斉にジェイズを疑わしげな目で見た。 ジェイズは冷や汗をかき、両手を振った。
「ち、違うから! 変なこと考えてるのお前らだからな!?」
彼は咳払いをして話題を変えようとした。
「そういえば……アリスさんは?」
ラファエラが頬杖をついて溜息をついた。
「彼女なら貴方が来る前に帰ったわ。ドラカリスと一緒にいたけど、自分のグループに戻るって」
ドラカリスが彼に身を寄せ、共犯者のように耳打ちした。
「主よ、あやつは主と一緒にいたがっておったぞ。追いかけた方がよい……何か言いたいことがあるようじゃった」
ジェイズの目に決意の光が灯る。
「分かった。行ってくる!」
彼は弾かれたように席を立った。
「どこへ行くの?」リアが心配そうに尋ねた。「もうすぐ式典が始まるのよ!」 「すぐ戻る!」
彼はすでに出口へと走り出していた。 その時、リンがお腹を押さえて変な顔をした。
「……トイレ行ってもいい?」
ヴァレンティナが片眉を上げた。
「ついていくわ。貴方を預かることになった以上、一人にするのは無用心よ」 「はい、おばさ……じゃなくて、お姉ちゃん。でも、ちょっと長くなるかも」 「食べ過ぎるからよ」
ヴァレンティナは呆れて溜息をついたが、その頬は微かに赤らんでいた。
「それとおばさんじゃないわよ。まだ20代なんだから」
(続く)
最強の魔女、陥落。 ジョセフィーナさん、あんなに怖かったのに一瞬でメロメロでしたね(笑)。 これが「炎の錬金術師」の真の恐ろしさです。 そして、リンの保護者役を買って出たヴァレンティナ。彼女の母性が垣間見えました。 さて、アリスを追いかけたジェイズ。二人の恋の行方は?
【お願い】 「ジョセフィーナざまぁw」「リンちゃん頑張れ!」と思ったら、 ぜひ下にある ☆☆☆☆☆ で評価をお願いします! 更新の励みになります!




