詩「新しい言葉」
遠方に見える船の上から
知らない男が手を振っている
その振っている手に冷たいものが触れた
雪が透けて
その冷たさから逃げるように
船の上から手を振っている
自分がいた
俺だった
祖母のいない床下から
言葉を探し続けているのは
透明な壁一枚隔てて
洞窟のような
奥の見えない世界に
吸い込まれていく棺桶
ボタンを押した手は震えていただろうか
空気に
反射して
空中に揺れる顔
生まれてきた言葉は
流されて
ここで燃やされる
春になるまで
雪が止んだ
明日こそ船は出るだろうか
雲に覆われた空
切り抜いたような煙突から
新しい言葉が昇っていく