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第八話 解答

「教えてくれよ…… お前ならわかるんだろう?」


 目の前の長髪の男は俺に、最後の救いを求めるように、潤んだ目で、そう訊いてきた。


 このままいっそ、エターナルの呪いを解いて、こいつを殺してしまうっていうのも悪くはないのか……? いや、そんなことをしたら絶好の話し相手がいなくなってしまう。って、俺は何を言っているんだ。こんなやつ、いてもいなくても変わらないだろう? ましてや今日会ったばっかりなのにさあ……


 とりあえず、適当に返事でもしていよう。うん、そうしよう。


「俺が何を教えられるというんだ? お前の中に、もう答えはあるのだろう?」

「…ああ。俺…」


 そのあとに続いた言葉は、耳を疑うものだった。


「アルトを幸せにするよ。首から上がひき肉だとしても、アルトはアルトだからな」

「……」


 俺はひきつった笑顔をして、彼に返答した。


「そ、そうか。いいじゃないか。アルトを幸せにするっていうのなら、まずはその顔をどうにかするんだな。そんな白けた顔、見たらどんな奴でも萎えるぞ」

「そ、そうか。ああ、わかった」


 こいつ、わりと素直に話を聞くんだな。

 俺はとりあえずこれだけ言い、少し口角が上がったエターナルのもとを後にした。


 数日後、俺は彼の妹の元を訪ねていた。


 俺はあれが、どんな奴だったのかを俺は知りたかったのだ。


「えっと…お兄ちゃんのことだよね?」

「ああ。どんな奴だったのか、教えて欲しい」

「えっとねえ…」


 彼女に聞いてわかった。


 あいつは、俺の想像をはるかに超えるほどの、悪癖の持ち主であったと。


 話を聞いた後、俺は理神ミレイの元へと戻った。今日俺がエターナルの妹、アルマの元を訪問したのはただの俺の趣味だけでなく、エターナルの調査の為でもあった。


 ミレイへと報告を終え、眠りにつこうとベッドへと横たわるが、どうも眠れない。ある、ひとりの男が俺の中に根を張って、離れてくれない。いや、離れてくれないんじゃない。


 俺は、こんな気持ちに気づきたくなかった。

 俺が、この男を離したくないんだ。

 あろうことか、俺は、これに惚れているんだ。


 常に希死念慮に溢れ、『奇行』とごまかされた自殺未遂を繰り返し、精神衛生が悪く、酒癖も悪く、愛情もすっかり歪んで、とうの昔に死んだ、想い人の死体を毎晩抱いているような… こんな男に。


「……つまり、エターナルってお前の初恋で、好きで情報収集してたら詳しくなったって、こと⁉」

「……言わせんな! あれは、もう過去の話だ! 別に今はそんな気持ち、抱いていない」

「へえ…… ! フェクド、危ない!」


 説明を終えてゆっくりとしていた俺は、急に叫ばれて反応することができなかった。

 フェクドは、キルアに突き飛ばされたまま、固まる。フェクドはキルアの様子がおかしいことに気づいた。


「キルア! 大丈夫か?」

「ああ、フェクド。大丈夫だ」


 大丈夫、呂律は問題ない。呼吸も、鼓動も、ある。だが、ひとつだけ、さっきまでの彼と違うところがあった。


「…キルア?」


 俺は言って、彼の行動を止めようとした。したのだが、彼は、止まってくれない。


「キルア、それ以上抱きしめられるといくら俺でも、ちょっと、骨が折れる」

「…」


 脅すように言ってみたが、彼はやっぱり俺を抱きしめるのをやめない。もうあきらめて、されるがまま、されることにした。


 どれだけ経っても離してくれない為、俺は視界の端に見える時計を眺めてはため息をついていた。

 いつになったら、ヴァルフとエターナルは帰ってくるのだろうか。


 一時間経った。あのときから一つも体勢は変わらず、ベッドに俺を押し付け抱きつかれたまま、数時間が経った。ミレイが作ったときに俺についた神パワーなのだろうか、俺はずっと同じ姿勢をとっても一向に疲れる気配が見えないのだが、こいつはどうなのだろうか。


 どうにかキルアと俺の位置を変えることに成功した。成功したのだが、キルアはずっと俺に抱きついたままだ。本当に、いつになったらお前は離してくれるんだ。


 体勢を変えてからさらに三十分経ち、ようやく、キルアは動いた。

 うん。やっと動いてくれた。動いて欲しいとは思っていた、けどさあ、俺とお前で思い描く「動く」の意味は違うようだった。


 抱きしめるのをやめたキルアは、腰に回していた腕を一本減らし、空いた手を俺の顎に当てると、俺の顔に顔を近づけてくる。


「えっと、キルア? おい? 聞いてんのか? おい、そんな近づくな‼ おい!」


 今の俺とこいつではあまりに体格差があったため、俺がこいつに抵抗するのは容易ではなかった。

……本当は使いたくなかったのだが、こいつに抵抗するためだ!

 俺が「使いたくなかった」のは、とある神術のことだった。


 そう、その神術とは「使用者の年齢を変える」ものであり、今のフェクドの見た目での年齢は、おおよそ十代半ばほどで、キルアよりもずいぶん細くて弱そうな身体なのだ。弱そう、とは言ったが、その通り弱く、だがその分素早く、警戒されにくい。旅をする上では便利なのだ。


 だが、目の前にいるこの男に抵抗できるほどの力はない。彼は仕方なくキルアと同じ年齢の姿に、変えた。


「!」


 だが、想定していたこととは違うことが起こった。


 フェクドが予想していた、年齢変更後、無事キルアを引きはがす、というものが達成される前に、成長して大きくなった分、キルアにより近づいてしまったのである。


 そして、だいたいこういったときにこそ、待ち人は来るものだ。


 エターナルとヴァルフが帰ってきた。ちょうど、頭と頭がくっつき、口と口とが合わさりそうになっているところに、彼らが帰ってきたのである。


「ああああああああ!」

キャラ・用語説明 +あとがき

とぴっく「初恋は?」


【キルア=エペラー】

身長173cm

家出時17歳→洞窟からでたとき21歳

「無論、母様」


【フェクド=レジスト】

身長166cm

神の使徒。理神ミレイの暇つぶしで生み出された。

どれくらい生きているのかは不明。

「エターナルだ。おい、そこ! 人選びのセンスがないとか言うな!」


【理神ミレイ】

神。フェクドを作ったやつ。

「え!? わたし!? 初恋なんかいないですよ! …天界には出会いがないんです!」


【ヴァルファリア=レイスギルト】

身長177cm

偽名はソルファ。

通称ヴァルフ。長いから。

「…すまない。俺にはそのような方はいないんです」


【エターナル】

身長:185以上はある。

首の傷はおびただしい数あり、ホラーに耐性のあるものですらトラウマに残る可能性がある。

伝説の魔剣【終焉】の持ち主。

綺麗な顔をしているが、その下の首の傷が気になりすぎて、顔に目がいきにくい。

長髪(腰ほどまでで左右対称にそろえられている)

赤い目をしている。

「アルトだ」


【アルト】

身長150cm

エターナルの初恋。

ヴェルハによって、アルマの兄として作られた原初の魔族。

青い目をしている。猫耳のようなものが生えている。

目尻はきりりとあがり、わんぱくな少年のよう。

「エターナル君だよ!」


【アルマ】

身長144cm

ヴェルハによって、アルトの妹として作られた原初の魔族。

アルト同様、青い目、猫耳のようなものが生えている。

けっこうおっとりとした見た目だが、わりとアクティブ。

「初恋? そんなのあるわけないでしょ! ずっと私、アルトお兄ちゃんとエターナルお兄ちゃんくらいとしかまともに話したことないのに!」


【終焉】

伝説の魔剣。伝説の剣、とも言われる。

エターナルの愛剣。

真っ黒な鞘と剣身、くの字の刃と綺麗な弧を描く刃があり、血を吸って青い花を咲かせるのが特徴。


【魔力石】

魔力保有量が一定以上の魔族が死んだとき、たまに魔力が固まり、石となって残る。

原初の魔族は魔族よりもこの石ができる確率が高い。


【原初の魔族】

魔神ヴェルハが直々に生み出した生命体。

魔族とは似て非なるものだが、一部の魔族は、原初の魔族の子孫。


【核】

魔族の本質となる部分であり、弱点でもあり、本体である。『核』といっても俗称で、正しくは、『魂』である。


——————

ここまで読んでくれてありがとうございます!!

キルア君、暴走しすぎじゃあないのかい?


第九話 悪魔

またいつかに公開。

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