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第六話 永遠との邂逅

 俺がこの世に創り出されたときはまだ原初の魔族が幅を利かせていたころだった。エターナルの噂を聞き、俺はどんな悪辣な者なのだろうか気になり彼の城の外からこっそり彼を見た。


 腰まで伸ばした黄褐色の髪、深紅でどこか暗い瞳。


——こいつだ!


フェクドが彼を見つけたとき、彼は大声で錯乱し、漆黒の片手剣を振り回しながら喚いていた。


「お前らに俺の気持ちがわかるか⁉ わかるわけないくせに知ったような口を利くんじゃねえ!」


 フェクドは覗き見る窓を変え、再び覗き見た。


「まあまあ、お兄ちゃん…」

「黙れ、アルマ。俺は、お前を殺したくない」


 アルマと呼ばれたワンピースを着た少女は彼を宥めるも、宥めたところで無理だと悟り、周りにいる兵士らしき魔族たちを引き連れて部屋から出ていった。

 彼女らが部屋から出ていき、少し経った頃、彼はため息交じりに呟いた。


「…この呪いは非常に厄介だ」


 そう呟くと彼は座っていた椅子から立ち上がり、窓の外を眺める。フェクドは自分がいることがばれたら大変なことになると思い少し遠い所へ移動しようとしたが、彼はこちらに気づいていないようだった。彼は窓を開けると、また小さく呟いた。


「…こんなにちょうどいい場所をよこしておいて、この呪いは俺を楽にさせてはくれないのか」


 フェクドは彼が呟いた「ちょうどいい場所」の意味を考えたくはなかった。彼以外のものが言えば、その「ちょうどいい場所」はこんな物騒なことはなかっただろう。フェクドが彼をまじまじと観察すると、彼の首には数えきれないほどの傷があった。


 それらの傷は特に何にも覆われることなく、全貌があらわになっていて、とても見ていて気分がよいものではない。首から下へと視線を移すと手には先ほどの剣が握られていた。鞘から出され、煌めく剣先はさっきまで殺し合いをしていたと言われても納得できるほど赤い血を滴らせている。長いこと眺めていると滴っていた血は逆流し、剣に彫られたひとつの絵柄を映し出す。

 だが彼は剣を一振りすると、剣についた血を振り落とし、映し出された絵柄もそれとともに消え去っていった。


「…面白いことを思いついた。誰かに見てもらおう」


 彼は急に呟くと、フェクドがいる方を見て手招きする。彼は小さくフェクドに向けて言った。


「そこの神の奴隷さん、面白いものがあるんだけど見ていかない?」


——やっぱりバレていたのか!


 フェクドは逃げ出そうとするが、その前に彼に手首を強く掴まれた。


「まあまあ、ミレイとミーリアにはこのこと、黙っておくからさ。ちょっと見ててくれよ」


 彼はそう言うと、さっきと同じ窓の縁へと向かい、窓の縁へと立つ。フェクドは彼に、今から何をするのか尋ねたが、彼は答えなかった。彼は部屋のほうを向いて窓に立っており、非常に危なっかしい。彼は急に羽を広げたかと思うと、さっき鞘から出した剣を一振りして、羽を斬り落とした。


「何やってんだ⁉」


 思わずフェクドがそう叫ぶと城の窓という窓が開き、大量の魔族が飛び立ってきた。彼らは地面へと落ちてゆく彼の羽を眺めると叫んだ。


「またやってるのか」

「お兄ちゃん、もうやらないって言ったよね?」

「いい加減やめたらどうだ」


 そう言われ、彼は剣を鞘に戻す。

 どうやら、彼がこのような奇行を行うのはこれが初めてではないらしい。フェクドは面倒くさいことになった、と少し心の中で叫んだことを悔やんだ。


「やめるわけがないだろう! 俺は、あいつのところに行くそのときまで、やめない」


 前半は大声で、後半は決意の表情で言うと、彼は無詠唱で空中に魔法の剣を出現させ、飛び立ってきた魔族たちに向かって投げつけた。一部の者は彼が投げつけた剣が刺さり、口や傷口から血を噴き出した。


 急な蛮行に魔族たちは口先で注意した後、あきらめて各々もといた場所へと帰っていった。エターナルは不満げに鞘に入れた剣を再び取り、フェクドに言う。


「見てろ、面白いから」


 そう言うと彼は剣を空に放る。それと同時に彼は窓の縁を蹴り、両手を広げて仰向きに飛び降りた。フェクドは止めに入ろうとしたが、彼は「心配しなくていい」という顔をしてフェクドを見る。

 飛び降りたところから地面までのおおよそ半分まで来たとき、彼が放り投げた剣は地面に真っ直ぐ向き、一寸もずれることなく彼の胸を貫き、彼を地面に磔にした!


【エターナル=カース】


 フェクドが降り立とうとした刹那。彼の身体が黒煙に包まれ、空に浮き上がる。空に浮き上がった彼は同じく空に浮く自身の剣を取ると、軽やかに着地した。


 あまりのことにフェクドは言葉を失った。明らかにさっき剣が貫いた箇所はどんな者であっても、無事では済まないようなところだった。だが、現にそんな箇所を貫かれてなお、彼は何食わぬ顔でそこに立っているのだ!


「…面白いだろう?」


 彼はフェクドが言葉を失っているのを見て急いでその言葉を訂正する。


「すまない。これは貴方に見せるべきものではなかった」


 だが彼がよくフェクドを観察すると、フェクドはあることに興味を抱いた様子だった。エターナルは先ほど発動した呪いの事だろうと考え、フェクドに質問した。


「…呪いが気になるのか?」

「ああ。さっき君が剣に貫かれたとき、剣が貫いた場所は魔族にとっての急所… 致命傷を負ってなお立ち続けられるのはその呪いがあるからだろうと思ったんだ。どういう呪いなんだ? それは」

 そう尋ねられたエターナルの顔には少し影が見えたような気がした。

「あ、嫌だったら別に言わなくてもいい」


 フェクドは慌てて付け足したが、エターナルは遠くを見つめて、言う。


「あれは、俺が生まれたときからあったわけじゃあなかったんだ」


 フェクドが「じゃあ、いつからその呪いは君に?」と訊くと、エターナルは「十年前だ」と返した。詳細が気になるという顔をするフェクドを見るとエターナルは再び話し始めた。

キャラ・用語説明 +あとがき


【フェクド=レジスト】

身長166cm

神の使徒。理神ミレイの暇つぶしで生み出された。

どれくらい生きているのかは不明。少なくとも、原初の魔族がいた時代からいる。


【理神ミレイ】

神。フェクドを作ったやつ。


【エターナル】

身長185cm

原初の魔族。

首の傷はおびただしい数あり、ホラーに耐性のあるものですらトラウマに残る可能性がある。

伝説の魔剣【終焉】の持ち主。

綺麗な顔をしているが、その下の首の傷が気になりすぎて、顔に目がいきにくい。

長髪(腰ほどまでで左右対称にそろえられている)

赤い目をしている。


【アルマ】

身長156cm

エターナルの義理の妹。といっても、原初の魔族を生み出したのはヴェルハなため、義理ではなく、実の妹。

「義理」なのは、ヴェルハがエターナルとアルマを兄妹として作っていなかったからである。


【終焉】

伝説の魔剣。伝説の剣、とも言われる。

エターナルの愛剣。

真っ黒な鞘と剣身、くの字の刃と綺麗な弧を描く刃があり、血を吸って青い花を咲かせるのが特徴。


【原初の魔族】

魔神ヴェルハが直々に生み出した生命体。

魔族とは似て非なるものだが、一部の魔族は、原初の魔族の子孫。


【核】

魔族の本質となる部分であり、弱点でもあり、本体である。『核』といっても俗称で、正しくは、『魂』である。


——————

ここまで読んでくれてありがとうございます!!

今回は決意の原文ママ。

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