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第五話 再会

 キルアとヴァルフは自己紹介をしようとしたが、エターナルが何かに気づいたように言った。

「お前は、フェクド…なのか?」


 エターナルは答えを聞く間もなく、絶望に満ちた表情でフェクドに「なんで俺は今も…生きているんだ?」と尋ねる。フェクドはどこか遠くを眺めて、彼に答えた。


「未来の奴に、お前は生き返らせられたんだ」

 フェクドが言い終わる前にエターナルは大切なものをなくしてしまったときと同じ表情をして、慌てて言った。


「そうだ、俺の剣…俺の剣はどこだ⁉ あれは…」

「ちょっと待て! 話についていけない」


 つながりがない言葉が続き、話についていけなくなったキルアが慌てて制止する。エターナルは目を伏せて謝るが、キルアが「謝る必要はない」と言うと目を再び開け、事情を説明しだした。

「俺は…鈴華に頼んで、殺してもらったはずだったんだ、あ、ああ…」

 エターナルがふらつく。その様子を見たフェクドがエターナルを支えると、エターナルは焦ったように再び話しだした。


「あの魔剣がほかの奴の手に渡ったのならば、とてもまずい」

「どうしてだ?」

「あの魔剣は…… 斬られたものを存在ごと葬る魔剣なんだ」

「確かに大変だ…」

「フェクド、お前ならあの剣がどこにあるのかわかるんじゃねえか?」

「なら、またあの呪文を唱えるんだな」

「呪文…? フェクド、一体そいつとどういう関係なんだ?」


「俺たちはふ…」

「こいつが俺に住みついたんだ。相棒みたいなかんじだ」

「なるほど…フェクド、よい相棒を持ったようだな」

「この脳足らずのどこが…」

「探している魔剣の名前は?」

「終焉だ」

「……俺は、魔剣【終焉】の居場所がわかる」


 そう俺が言うと脳に直接【終焉】の居場所が流れ込んできた。そこは、驚愕すべき場所だった。

「わかったか⁉」

「ああ…わかった。だが…」

「勿体ぶらずに教えてくれ。どこにあるんだ、俺の剣は」

「剣があるのは… アークヴェラル王国王城…つまり、魔王城だ」



 同時刻、魔王城の一室にて…

「ケイ、なにをしているんだい?」

 ゲリアがケイに尋ねると「…剣を拾った」と言い、手に持っていた剣を僕に見せる。


「なかなかどす黒い剣だね。どんな剣なのか調べてみよう」

「どんな剣なのか、気になるな」

「(なにかで見たような気がする…)」

 ゲリアは本棚からあるひとつの本を手に取り、頁をめくり、剣と照らし合わせていく。


——とりあえず、鞘から出そう。


 ゲリアが剣を鞘から出すと、黒く艶めく剣身が現れた。刃は厳重に管理されていたのだろう。刃こぼれせずに綺麗な状態を保っていた。


——この黒さ、もしかして…? いや、まだこれだけじゃあ断定はできない。


 ゲリアは更なる証拠を掴むべく、刃を腕に押し当て、血をつけた。


——やっぱり、僕の予想通りだ。


 剣が腕に当たり血が流れると、その血を使って花でも咲かそうとでもしているのだろうか。血が剣の鞘へ向かって流れ、ひとつの模様を描きだす。

 花でも咲かそうとでも、とたとえ話をしたのだが、これはたとえ話ではなくなってしまったようだ。

 剣が血を吸うと現れた描かれた模様は、ひとつの青い花だったのだ。魔族の赤い血が、この剣を伝った瞬間、青い花へと姿を変えた。


 魔界に古くから伝わる剣の伝説、血を糧として花を咲かせる魔剣、【終焉】だったのだ。


「ケイ、どんな剣なのかわかったよ。これはすごいものだ」

「【終焉】…?」

「原初の魔族エターナルが使っていた剣だ。伝説と化していた剣だね…どこから拾ってきたんだい?」

「…クズの部屋にあった。あのクズにしては綺麗なものを持っていたから炎で燃えたらもったいないと思って持って帰ってきてしまった」


 「クズ」とは、昔にケイを…奴隷として買い取った貴族、ライル=ドールのことである。

「一応貴族らしいからね、あの人は。珍品のひとつやふたつ、あってもおかしくないだろう」


「(一体彼はどこで入手したのだろう…)」


 ゲリアは剣に手を当て、剣の記憶を呼び覚ました。



 それは遠い昔… ドール邸にて。

「今日も任務完了ですよ!」

「そうか、よく頑張ったな」

「あ、そういえば!」


 少女はそう言い、かばんからひとつ出した。


 彼女が出したのは、黒い鞘に入った、一本の剣だった。特殊な形状をしており、片方の刃は綺麗な弧を描き、もう片方の刃はまるでひらがなの「く」の字のようになっている。剣から放たれるどす黒い気はどんなに魔力量の少ない魔族でも感じ取れるほど強い。


「すごく禍々しい剣が城にあったんですよ! 戦利品です! あげます!」

 とてもはきはきとした声でそういうと少女は剣を差し出した。


「(【終焉】だ…どの城だろうか、一体…)」

「こんなものを保管しているとは、天界も趣味がよくないな」

「(天界か…たしか奴を殺した翼野鈴華は、ばるはらの天使だったような…)」

 そう男は言ったが、少女は共感することなく問う。


「そうですか? わたしがこの剣を手に入れたら使わずに保管したくなりますよ!」

「この剣は俺が厳重に管理しておく。絶対に使うな」

「え~? なんでですか?」

「終焉と呼ばれていた魔族を知っているか?」

「エターナルですよね! あのイケメンの! 『かんたん! クランディアの歴史』の原初の魔族一覧に載ってたので、覚えていますよ!」

「そうだ。この剣は、そいつの剣だ」

「え⁉ あの方、死んじゃったんですか?」

「ああ」

「会えるならまた会いたかったのに…」

「まだどうせ会えるから心配するな」

「そうですか!」

「この剣は、暗殺を家業とする我ら一族には、持っていて得のない剣だ。それに…」


 男が言おうとしたが、少女が先に呟いた為、男は続きを言うことはできなかった。


「そうなんですか…」

 少女がつくった悲しみの顔の中には少し、陰謀を企んでいるような色が混ざっていた。

 その晩、彼女は金庫へと赴き、男が施した結界が貼られた終焉に触れ、結界を解いた。


(やっぱり何度見てもかっこいいですね、この剣は)


 刀身を撫でながら、彼女は男の寝室へと向かった。

「どれくらいの切れ味なのか、気になりますね…」

 少女はそう呟くと、何を思ったのか眠っていた男に一突きした。


「お前が、俺の剣を拾ったのか?」

 脳内で低い男の声がして、少女は思わず男に刺した剣を引き抜く。少女は男に問い返した。

「貴方は?」

「姿を現そうか」


 低い声の男は少女の前に姿を現した。


「返してもらおうか、俺の剣を」

「!」


 少女の目の前には、エターナルがいた。


 目鼻立ちははっきりとしていて、腰まで伸ばした髪は左右対称に整えられ、真っ黒な外套に身を包んだ姿はどこか浮世離れしている。


「貴方は…終焉ですか?」

「ああ。そして、その剣は俺の剣だ。返してもらおう」

「い、嫌よ」


 少女は警戒した表情でエターナルに言う。


「そうか…では取引をしようか」

「一体…なに?」

「お前の存在を引き換えに、その剣を持ち続けてもよいことにしようではないか」


 少女はすこし悩んだようだが、剣をエターナルへと押しつけた。


「…返す」

「お前の存在価値はそれほどか。返してくれて有難う」


 エターナルがそう言うと、突如魔力の光に包まれる。魔力の光を見た少女は声を荒げて叫ぶ。


「! その光は…天使!」

「この程度の変装も見抜けないなんて、ほんとうに彼のことが好きなの?」


 エターナルがいたところには可憐な衣服に身を包んだ少女がいた。頭につけたダイヤ型の髪飾りが、彼女の身分を明かす。


「(翼野鈴華…!)」

「じゃあね~」


 そう翼野鈴華が言い剣を持ち立ち去った後、少女は呆然と立ち尽くしていた。そのとき。

「切れ味はよかったか?」

 後ろから男の声がした。少女はおびえた表情で謝る。男は「ああ。いい子だ」と言い少女の頭をなでる。


「あれが盗まれた? 安心しろ」


 そう言うと男は懐から一本の剣を出して彼女に見せた。


「お前ならあれの封印を解くだろうと思ってな。自分で持っていたんだ」

「…じゃあさっきの剣は?」

「複製品だ。…お前が盗む前に俺がすり替えた」

「よくばれなかったね」

「もともとあの剣は…おっとこれは言っちゃいけないやつだったよ」


 男はハハッと笑うと少女をベッドに招き入れた。


「寒いし一緒に寝ようか」

「えへへ…冷たい」

「お前が温めてくれてもいいんだぞ」

「その言葉、撤回しないでよね」

「俺に二言はない」


 ある日。少女はまた男の寝床に忍び込み、男にちょっかいをかけていた。

「…またお前か。今日は疲れてるからまた今度な」

「それ昨日も言ってましたよ!」

「同じ言い訳を連続して使って何が悪い」

「うう…」

 少女は男の上にかえる座りしてむくれる。男は少女を退かそうと起き上がって少女の肩を掴もうとすると、少女はそのまま男の寝間着を剥いだ。

「おい! お前! ふざけんなっ…急になんだ!」

「なにをするのかわからないの?」

「……」



 同時刻、ばるはらにて

「翼野鈴華、帰還しました!」

「終焉は奪い返せたか?」

「もち……、ってこれ!」


 鈴華が持ち帰った剣を眺めると、その剣には少女が男に刺したときについた男の血がべたりとついているだけで、青い花は咲いていなかった。つまりこれは、偽物!


「偽物掴まされちゃいました……」

「まあいい。どうせ、あの剣はエターナル本人にしか使うことはできないのだから」

「まあ、そうですね……」



 数年後、場所は戻り、ドール邸にて。

「ライル」

「ぱぱ、僕ちゃんになんの用?」


「(やっと出てきたよ…というか、こんなに幼いときから一人称は「僕ちゃん」なんだね、このクズは)」


「今日はお前の誕生日だったな、ライル。お前にひとつ、プレゼントをくれてやる」

「ありがとう、ぱぱ!」

「こっちにおいで! ライル!」


「(さっきの終焉を盗んだ少女… あれはライルの母なのか?)」


 少女はライルにそう言うと、ライルは素直についていった。


「プレゼントってなに?」


 ライルが少女に尋ねる。少女はライルに言った。


「昔にわたしが手に入れた、伝説の剣だよ。綺麗だから、ライルも気に入るんじゃないかしら?」

「そんなにきれいなの? はやく見せて!」


 ライルが急かす。少女は部屋の奥へと向かい、剣を持ってきて、ライルへと手渡した。


「(終焉だ! ここでライルの手に剣が渡ったのか。だいたいはわかった)」


 どうやら、エターナルが死んだ後、ばるはら、暗殺者の少女と男、ライル=ドール、ケイの順番であの剣は移動したのか。

 とりあえず、ケイに判断を仰いでみようか。


「この剣をどうしようか。どうせエターナルにしか使えないし。ケイはどうしたい?」

「持ち主のもとに返すのは?」

「悲しいことに、持ち主であるエターナルは死んでいてね。もう現世にはいないんだ」

「そうなのか…」

「だけど、なにかの奇跡が起こって彼と逢えたら、その時は彼に返してあげようと思うよ」

「うん。それがいいと思う」


 まあ、とりあえず今はこの剣で遊ぶことにしようかな。なにかおもしろいことが起こるかもしれないし。



 場所は戻り、宿屋にて。

「魔王城⁉」

「ヴァルフの目的地じゃねえか!」

「今すぐ行こうぜ!」

「あの、ちょっと待ってください!」


 魔王城と聞いて、沸き立つ奴らをヴァルフが急いで制止する。静かになったのを待ってからヴァルフが再び話し始めた。


「今の俺達で魔王城に行ったところで、実力不足で戦えないですよ!」

「俺が居る」


 エターナルとフェクドがそう言うが、ヴァルフは反論する。


「貴方達が強くても、まだ俺とキルアには魔王に対抗できるほどの力はないんです‼」

「そうか…」


 エターナルは呟くと皆に言う。


「とりあえず今日はゆっくり準備をして、明日から出発しよう」


 準備、と聞いたヴァルフが思い出したように言う。


「部屋……」


 ヴァルフの呟きを聞いて思い出したようにキルアが言う。


「人数が増えたから部屋を変えないと床で寝る奴が出てくるぞ」

「同じベッドで寝ればいいのでは?」


 フェクドの提案にキルアが喚く。


「お前、エターナルの身長を知っててそれを言ってるのか?」

「百八十五だ」

「身長を答えろとは言ってない、俺は安眠を得たいんだ!」

「俺が四人部屋を取っておくから、喧嘩はやめてくれ」


 エターナルが宥めてやっとキルアとフェクドは言い争うのをやめた。


「とりあえず、俺は買い出しに行ってくる。エターナルさんも一緒に行きましょうよ」

「ああ。じゃあフェクド、そいつの面倒を見ていてくれよ」


 エターナルとヴァルフはそう言って部屋を出ていった。


 俺、これでもヴァルフより年上なんだけどなあ…


 そういえば、こいつに訊こうと思って訊いていなかったことがあったな、ちょうどいい機会だし、訊いてみるか。


「そういえばお前、やけにエターナルに詳しかったよな? それはどうしてなんだ?」


 フェクドは少し動揺したようだが、覚悟を決めて一言言った。


「……話せば長くなるぞ」

キャラ・用語説明 +あとがき

トピック「甘いものと辛いもの、どっちが好き?」


【キルア=エペラー】

身長173cm

家出時17歳→洞窟からでたとき21歳

「甘いものかな… 母様が昔食べさせてくれた菓子を今でも思い出す」


【フェクド=レジスト】

身長166cm

神の使徒。理神ミレイの暇つぶしで生み出された。

どれくらい生きているのかは不明。

「どっちも好きだけど、どっちかというと俺は辛い物が好きだな」


【理神ミレイ】

神。フェクドを作ったやつ。

「辛いものかなあ。甘いものは苦手なんだ」


【ヴァルファリア=レイスギルト】

身長177cm

偽名はソルファ。

通称ヴァルフ。長いから。

「俺は甘いものが好きです」


【エターナル】

身長:185以上はある。

首の傷はおびただしい数あり、ホラーに耐性のあるものですらトラウマに残る可能性がある。

伝説の魔剣【終焉】の持ち主。

綺麗な顔をしているが、その下の首の傷が気になりすぎて、顔に目がいきにくい。

赤い目をしている。

初めは生き返ったのを嫌そうにしていたが、あきらめて事実を呑みこんだ。

「無論、甘いものだ。甘ければ甘いほどいい。だが、辛い物ももちろん食べられる! …あいつとならばな」


【ライル=ドール】

クズ。綺麗なものが大好きな割には奴隷への扱いが雑。カネだけはある。

「僕ちゃんは甘いものも辛い物も美味しければなんでもいいけど、甘い方が好きだね」


【少女】

ライル=ドールの母。暗殺者の任務での戦利品として終焉を持って帰る。

「わたしですか!? 辛い物が好きですよ!!」


【男】

ライル=ドールの父。表向き貴族としてドール家を支えていた。口が悪い。

「甘いものじゃないと口が痛くて食べられない」


【翼野鈴華】

しっかり者だが、どこか抜けている。天界にある「ばるはら」の天使。エターナルの死体と終焉を護っていたが、どちらも盗まれてしまった。

「甘いものが好きです… それよりも終焉さん盗まれちゃいました… どうしましょう…」


【ゲリア】

研究者。なんやかんやあってケイを引き取ることになった。

「どっちも好きだよ。どっちか選べ? それなら甘いものかな」


【ケイ】

元…奴隷。ゲリアに引き取られた。ライル=ドールのことをクズと呼び、軽蔑している。

「甘いものも辛いものもそれほど好きじゃない。美味しいものを食べたい」


【終焉】

伝説の魔剣。伝説の剣、とも言われる。

エターナルの愛剣。

真っ黒な鞘と剣身、くの字の刃と綺麗な弧を描く刃があり、血を吸って青い花を咲かせるのが特徴。


【魔力石】

魔力保有量が一定以上の魔族が死んだとき、たまに魔力が固まり、石となって残る。

原初の魔族は魔族よりもこの石ができる確率が高い。


【原初の魔族】

魔神ヴェルハが直々に生み出した生命体。

魔族とは似て非なるものだが、一部の魔族は、原初の魔族の子孫。


【核】

魔族の本質となる部分であり、弱点でもあり、本体である。『核』といっても俗称で、正しくは、『魂』である。


——————

ここまで読んでくれてありがとうございます!!

ゲリアとケイは夫婦てきなやつで子供までいます。魔族は人間にできないことをしでかす生物なもので、同性間でも子ができます。

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