第十四話 知り合い
「ボルカー、だよな?」
昔会ったときと何一つ変わらない姿に幾分か驚いたが、なんとなく安心して俺は話しかける。
フェクドは一瞬ぽかんとしたが、俺の記憶を読んだのかいつもの顔に戻った。ごろつきのうちのひとりが警戒した顔で質問してきた。
「お頭と知り合いなのか、貴様は?」
「いや、別に」
肯定しようとしたとき、ボルカーが重ねて言った。おい、事実を捻じ曲げるな!
「おい」
「冗談だよ、お前らもそんなに警戒しないでくれ。こいつはあたしより強い。戦っても無駄だよ」
「お頭よりも強いのか!? コイツが?」
上等な服は着ているがどこかチャラい未熟そうな少年と、子供と同じく上等な服は着ているがそんな服を着れるほどの余裕は無いようなヒョロくて背の高い青年がスラムで問題を起こしたんだ。確かに、風貌だけ見たら俺達はちょうどいいカモだろう。
「そうだ、エターナル」
「なんだ」
「お前の友達だろう奴らがこっちに遊びに来たんだよぅ」
「どんな奴らだ?」
「皇帝に… 悪魔だよ」
「俺の友達ならひとり足りないが」
「ふぅん、それならこの子も友達なのかなぁ?」
そう言うとボルカーは一枚の紙を取り出した。そこには、転写魔法で写し出されたひとりの魔族が写ってあった。
「(…ヴァルフだ! だが、これは一体?)」
「やっぱりこの子も友達?」
「あ、ああ。そうなんだが… なんでこんな姿に?」
紙に写されたヴァルフは首から胸のあたりまでが包帯で覆われていて、胸に近づくにつれ包帯がはだけていっている。その姿は扇情的であることの他に、ヴァルフに危機が迫っていることをはっきりと教えてくれた。
「ああ、ニューちゃんがカジノの景品にどうだと言ってこの紙だけ渡してきたんだよ。だからあたしはこれに何があったのかは知らない」
「ニューちゃん… って誰だ?」
「ニュルキスだよ」
「ああ…」
フェクドに目をやると、フェクドは「ヴァルフを助けに行け。キルアは強い子だから大丈夫」と俺の頭に直接伝えてきた。
「… ボルカー、案内してくれ」
「お前ら、散れ!」
「うっすお頭!!」
―――――――
「俺は… このまま…」
首の包帯は胸に近づくにつれて少しずつはだけていっている。出口の封鎖された鏡張りの部屋の中で、枷をはめられた手をがちゃがちゃと動かして包帯を押さえようとしている。
「もういっそ、このまま…」
売られて、誰も俺の安否がわからなくなれば、いいんじゃあないか?
大丈夫、ちょっと乱暴にされたって、俺なら…
ーーーーーー
「…一体どういうことなんだ?」
「いやあ、キミたちにはちょっと働いてもらおうかなって」
「働く?」
見るからに、カジノ、だよな? ここ。
なんかジャラジャラでかい音はしてるし、カードをめくる音が至る所から聞こえる。
「ここで何をしろって言うんだ?」
「まあこれを着てから話をしよう」
あとがき
ナニを着させられるんでしょうねえ…




