第十二話 信じる
魔王城にて。
「くーちゃん、体調でも悪いんですか?」
くーちゃんと呼ばれた魔族は頭を抱えて机にうずくまる。それを眺める赤髪の少女は心配するように彼女の周りでくるくると回る。くーちゃんと呼ばれた魔族は顔を上げて少女に訊いた。
「アイン、あれが再び魔界に現れたって聞いたら、信じる?」
「あれって… そんなわけあるんですか!? もうくーちゃんが殺したんじゃないんですか!?」
「それを踏まえて信じるか、訊いているの」
「そうですね… まあ悪魔って人間さえいればいくらでも増えますし… 時間の問題じゃないですか?」
あれがまた魔界に現れただなんて、信じられない。信じたくない。そう思いながら私はアインにひとりにさせてほしいと言った。
ーーーーーー
俺達は、詰められていた。
「そうか〜、お金がないのか〜… そうだねえ」
目尻をにやりと上げて笑う男は水晶を撫でたあと、水晶を持って立ち上がった。
「じゃあ、これの代金ぶん、稼いできてもらおうか」
俺達はいつの間にか、倒れ込んでいた。
ーーーーーー
「ニュルキス=ペルの服屋はこっちだ!」
フェクドを案内しながらそう叫ぶが、目当ての場所には誰もいないように見える。そのとき、ひとりの女が眼の前を横切った。
「お姉さん、ちょっといいかな」
「きゃあっ! 変態よー!!」
わざとらしく女がそう叫んだとき、廃れた建物の裏やらなんやらから沢山の魔族の男たちが這い出てきた。その中には悪魔との融合体(悪魔に取り憑かれた者のこと)や、一度死んで蘇らされた者が混ざっている。
「うちの子に手ェ出すなんていう無謀な野郎は誰だ?」
「兄ちゃんたちィ、これは責任取ってもらわねえと、割に合わねえよなあ!」
「綺麗な顔立ちだし、責任さえ取ってくれりゃあ、マトモな生活はできるぜ?」
ねっとりとした声色で男たちは口々にそう言う。エターナルとフェクドは互いに顔を見合わせ、魔法を唱える準備をする。男たちは剣やら、どこから入手したのか銃まで持って、エターナルたちに襲いかかった。
ーーーーーー
ケイとまったりくつろいでいたとき、クルーウェル氏が何故か僕の部屋まで遊びに来た。
「クルーウェル、さん」
「クルーウェル氏、どうしたの? 僕の部屋までわざわざ」
「あれが来たって言ったら、ゲリアは信じる?」
「あれって確か悪魔だっけ。それならありえなくはないね」
「…そう、ありがとう」
クルーウェル氏がドアノブに手をかけた。どこかその足は速い。僕はクルーウェル氏にひとつ尋ねた。
「どこに行くの?」
「ルシファーにも同じ質問をしに行くの」
「そんな質問、誰に訊いたって答えは同じだよ。部屋でゆっくりと休んで、力でも蓄えておいたら? また来たなら、また殺せばいいだろう?」
「それもそうね。ありがとう、ゲリア」
クルーウェル氏は振り向いて笑顔を作ってから手を振った。とりあえず僕はクルーウェル氏に手を振り返した。
あとがき
「あれ」って誰だろうなー(すっとぼけ)




