第十一話 服屋
2025年5月23日追記:すんません、とある人物の名前修正しました。
「確かこの道を真っ直ぐ… だよな?」
「ルガスってあのクリムゾンと友達って言ってたよな」
「うん、そうだよ。唯一の友達だったんだけど、ペトラが殺しちゃったんだ」
「剣聖ペトラ=セルペード、だっけ」
「そうそう。これがちょっとおもしろくて」
「友達の死に面白いとかあるのか?」
「あるある。クリムゾンがね〜」
他愛ない雑談をしながら道をずんずん歩いていくと、どんどん周りの景色が廃れてきた。建築がぐちゃぐちゃとして、まるでスラム街のようだ。
もとの綺麗な街の面影がすっかりなくなり、周りが荒れてきたころ、ようやく行き止まりが見え始めた。
「あれが服屋… なのか?」
服屋、だと思うには難しい光景が広がる。家の壁に寄り掛かる放浪者のような男がひとり、目を伏せてゴザを敷いた地面に座っている。その手には彼の風貌とは似つかわない大きくて丸く、魔力を帯びて透き通る水晶がひとつ。
「見たことない子たちだね、何をご所望かな?」
男は目を伏せたまま、水晶を撫でて言った。まるでその水晶がこちらを見ているかのように。
「目を伏せたままなのに俺達が見えるのか?」
「ええ。ご所望の品は何かな?」
「そうかい。じゃあ、どんな感じがいい?」
目を一つも開けることなく、顔を横に動かすことなく、彼はルガスに問いかけた。
「動きやすい服で頼むよ」
「じゃあ… こんなのはどうかな?」
【クリエイト】
男は水晶を組んだ足の上に置いたあと、爆ぜた音とともに男の手に上下の服が現れた。上は袖が着脱できる、少しオーバーサイズな長袖、下は動きを邪魔しない程度に装飾が施されている。どちらも生地は上等で、噂通りの仕上がりだった。
「じゃあお代を頂こうか」
ヴァルフが懐に手を入れて金の入った袋を取り出そうとしたが、一向に袋が出てくる気配はない。懐をさぐるヴァルフの額を脂汗が垂れていく。
「あ、あ…」
「ソルファ?」
「…か、金袋がない!」
その頃、エターナルとフェクドは…
やることもとうに終わったエターナルとフェクドは、昔のことを懐かしみながらキルア達の帰りを待っていた。ある時は小石を蹴りながら、またある時は相手と服を入れ替えながら、キルア達を待っていた。
「キルア達、遅いな」
「そうか?」
「キルアはさっさと物事を済ませて戻ってくる奴だ。明らかに何かが起こっている」
「それなら急いだほうがいいな」
エターナルは帰り道にふと聞いた『あること』を思い出し、小さく言った。
「もしかしたら、『あれ』に引っかかっているのかも」
「あれって?」
「…ニュルキス=ペルの服屋だ。ついてきてくれ」
エターナルとフェクドはなんだか嫌な予感がして、走り出した。
あとがき
クリムゾンのお話はまたどこかで書きたいなあ




