とある芸術家の軌跡
とある芸術家は悩んでいた。
自らの作品に対する絶対の自信を持つ彼は、周りからの評価があまりに低い事に対して悩んでいたのだ。
そしていろいろと画策もした。
ある時は自らのレベルより低いと思わしき者達を誘い、勝負を挑もうとした。
ちなみに、この時他にも人気のある者達にも挑戦を申し出て、それを断るということは自分に恐れをなしたとみなす、などと誰にも出してないのにそうやって他人を陥れようとするあたり彼の心の小ささが伺える。
当然結果は周りから白い眼で見られるだけで終わってしまった。
またある時は高名な者達に見て貰った時のために、彼らが自らの作品で展覧会等を開いた時の作品の配置等についても熱弁した。ちなみにこの時、彼は周りから煙たがられているのに全く気が付かず、ここからいかに頭がお天気かを周りにしらしめた。
もちろんこの結果も高名な者など誰一人としてくることはなかった。
またある時は、呼ばれてもいないのにとあるアトリエまで赴き、自らの作品と勝負しろという名目で宣伝出張まで行った。
この時彼は、いかに素人が文句を言おうとも、見る眼がある人はそれを覆す程の評価をしてくれるだろう、などなど自らの作品がさも芸術の最高到達点であるかのように言ってのけた。
当然結果は、見る眼がある人もない人も、誰一人として彼を認めず、非難の嵐が巻き起こった。
そしてとうとう彼は、自らの所属するアトリエから追い出されてしまった。
「くそっ!なんで誰も僕を認めないんだ!!」
彼は自らの事しか考えないその性格が1番の欠点だなどと露とも考えずに、周りが認めないのが悪いのだと決めつけたのだ。
そして彼はもうこのアトリエには近寄らず、自らの部屋で一人黙々と作品を創るのだろう。
誰もがそう思っていた。
だが、自称天才の考えは一味違うらしく
「こうなったら、名を偽ってもう一度あのアトリエに行ってやる!そして奴らに僕を認めさせるんだ!」
再びアトリエへと舞い戻るのである。
だがしかし、変えたのは名前だけで創る作品の質もやる事の傲慢さも全く変えずに赴いたため即座にバレてしまった。
当然周りの芸術家達は彼を疎むのだが、管理人は彼が彼であるという明確な証拠がないために追い出す事ができないのだ。
そして彼は再びそのアトリエで作品を造り続けていたのだが、誰一人として馴れ合い以外に彼を評価する者は現れなかった。
「なんでだ!なんで誰も僕を!!」
当然である。
だがそこはやはり自称天才、発想が違う。
「くそっ!!……そうか!わかったぞ!あのアトリエの奴らは僕の才能がすばらしすぎて羨ましいんだ!だから僕に嫉妬して、追い出そうとするんだ!!」
さすが次世代を担う天才芸術家(自称)。
そしてさらに彼の妄想は加速していく。
「それにそもそも僕にはあの小さなアトリエでは狭過ぎるんだ!だから嫉妬する低脳や作品の良さがわからない四流ばかりなんだ!そうと決まれば相手はもっと広大な世界だ!よし!僕の作品を世界の市場で競りにかけるぞ!これで高名な方の目に作品がとまり、僕は一気に世界的芸術家だ!!」
しかし結果は……
「なんで!誰も!来ないん!だよ!!」
閑古鳥が鳴く程散々だった。
「クソッ!クソッ!……そうか!実は皆もう僕の名前を知っていて、僕が有名な芸術家だから皆高くなると考えて敬遠してるんだ!しかしそれならいったいどうしたら……」
持ち前の前向きさを発揮した彼は、しばらく考えた結果ふと、自らの偽名を思い出した。
「そうだ!偽名の方で有名な僕と共同作品を創ったと言って作品を出せばいいんだ!偽名ならあまり知られていないから、無名な芸術家でも手を出せるくらいの敷居の低さをアピールすれば!!さすが僕!天才だ!!」
こうして彼は懲りる事なく、再び作品を創りだしていくのである。
彼の飽くなき創作活動は、日夜続いていくのである。
周りの迷惑も考えずに………
次に私達が彼を見た時に、彼は何を思いながら活動をしているのだろうか。
そして君達は、そんな彼から一つの教訓を得るであろう。
それは……
触らぬ神に祟り無しである。
わかる人にはわかる。
わからん人にはわからん。
そしてこれは小説という名を借りた記録である。
……そしてこれをやってる俺の文章力に絶望orz