魔法の鍛錬~魔力?そんなもの知りませんわ
「そうです。ジーナ様。その調子です!!」
俺は、伯爵家の伝手を使って、宮廷魔術師を一人、家庭教師に雇って、魔術の鍛錬をしていた。
魔法の概念は自分で設定を作っていたけれど、剣術とは違い、前世では鍛えたことがなかったので、こちらの世界の鍛え方で鍛えた方がよいと判断した。
この世界の魔術は、体の中の魔力を現実世界に発現させる技術である。
もちろん俺の、ジーナの身体にも魔力が巡っているのだけれど、剣術と違い、いまいち俺にはその使い方というものが、感覚的には理解できないところがある。
前世に例えるなら、身体を巡っている、血液の流れを、なんとなくでしか認識できないように、魔力の流れというものも、なんとなくでしか、理解できていない。
魔術師を家庭教師に雇うのは、前世でいうところの、禅の修行を僧侶に見てもらうのと同じように、自分のなかに巡る、魔力の流れを見識のある他者から見てもらうことによって、修行の効率をよくするためだ。
今度の対抗戦で、学園の生徒、3000人弱が、トーナメント形式で試合を行っていくときに、俺は、剣術と、風魔法で戦おうと思っている。
剣に、風を纏わせ、強引に剣と体の速度を上げる。
風の力を纏った強力な斬撃を高速回転で勝負する戦闘スタイルで戦う。
ジーナが前世で爆炎魔法で自分の身を焼いてしまったことが、どうしても心に引っかかるので、炎系統の魔法がジーナに適正があるのだけれど、炎と相性の良い風系統の魔法から身に着けていく。
「ジーナ様、魔力の流れを感じますか?その流れを少しずつ大きくするようにしてください。そうです。その調子です。いいですぞ。魔力が風に顕在化しております!おお!素晴らしい才能です!!」
魔力の流れと言われても、魔力なんて、俺にはわからない。ただ、確かに自分の力でコントロールできるものがある。漫画や小説で読んだ知識でしかないけれど、力を感じることができ、コントロールすることができる。イメージが大切。コントロールできる力を、風に変えていく。作った風を右手から左手に、渦を巻くように、少しずづ、大きな風になるように回転させていく。
いやぁ、この力を使いこなせるようになったら、確かに、腕を突き出してそこから爆炎とかを発生させられるようになるって思えば、そりゃあ、すげえ力だよなぁ。
もちろん、使いこなせられればの話で、魔術を使いこなせる人間なんて少数で、魔術を使いこなせられる人間は、宮廷魔術師として、王宮に囲われてるんだから、普通は、魔力の流れを体に巡らせて、体を強くするような使われ方の方しかしていない。
早い話が、俺が転生してきた最初にしたように、剣の訓練や魔法の訓練なんかするよりも、普通はつるはしを振っていた方が、強くもなるし、他人の役にも立つってものだ。
魔術と魔法の違いは、要は、想いの使い方なんだろうな。
魔術として、魔力を顕在化させるっていっても、その技術にどれぐらい慣れているかで、違いが生まれてくるわけで、例えば、サイコパス王女が魔術を極めれば、魔術で邪神を顕在化させられるのか?っていう話になってくる。けれど、どれだけ、あのサイコパス王女でも魔術を使って邪神が復活できるとは思わない。
それよりも、魔術を使ってできることは、炎や風、水などを生み出すのに過ぎない。