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悪役の話を聞いてみる~話をきいてやるだけなんだからね

 目のやり場に困った俺は、アキラの身体を観察してみることにした。


 王子達の様に、経験値稼ぎをしていないアキラの身体は、どこかスポーツマンの様に、それぞれの部位が機能的に鍛えられ、目的をもった有機的なつながりを見せている。

 重い兜をつけても、頭がふらつかないように、首筋は太く、剣を掲げる為の、肩幅と二の腕。長時間の騎乗に耐えうる、太い太ももと、絞り込まれた、腹筋と背筋。


 こいつは、自分こそが指揮官だと、身体を作ってきている。

 そこには、王子の様に子犬の様なかわいさはなく、口元は笑顔だけれど、まなざしは、自分が王になろうという目標を見据えている。


 「アキラさんは何故、そのような鍛え方をなさるんですか?普段の振る舞いからも、他の方々とは少々、趣きが異なるように思えるのですが。」


 俺は少し聞いてみることにした。


 「魔物狩りの経験値のことですか?いや、違いますね。」


 アキラは少し考えるかの様な仕草をして、目元を下げ、笑顔を見せていた口元を、一文字に結んだ。いやいや、日本からの転生者なんだから、そんな、時代劇のような演出いらんねん。かわいい女の子からのフラグだぞ?フラグ!!わかっとんのか?これだから、ゆとりは!!!


 俺は、内心は表情には出さずに、つまり、女子固有スキルを駆使しながら、それでも、なぜ?という問いに向き合っていた。

 こいつが、ここで自分が転生者だという事情を打ち明けて、俺に心を開こうが、交友を結んだと思い込もうが、そうしたことは、この際いいとしようと思った。


 なぜ、日本から異世界に転生してきあた先が、王国の公爵家というチートの様な状況だった時に、なぜ、自分が国王になって、なぜ、自分が指揮官になってやろうと思ったのだろう。


 俺の場合は、単純に自分の死亡フラグをへし折る為に、領地改革をしたのに過ぎなくて、もし、飯も美味いこの世界にただ転生しただけだったなら、安穏とした生活を続けるだろうし、自分で何かをやってみようとは思わずに、優雅な王子や王女と、愉しい学園生活を過ごすのに違いないと思うわけだ。


 「だって、純粋に、格好よくないですか?」


 考えがまとまったのか、こいつはまっすぐに俺の目を見てきた。

 いやいや、お前の役割、悪役だから!何、少年の様な眼差しでこっち見つめとんねん!!


 「学園に入学する前に、私も、ジーナさんと同じように、領地の発展に尽力しました。それは、領地を豊かにし、さらに兵を集めることを目的にしていました。そうして、集めた兵を率いられるようになるって、純粋に、格好よくないですか?」


 と、なんだか、いいことを語っているかの様な笑顔だけど、こいつ言ってることは、国家反逆を企ててますってことなんだけど?


 なに?馬鹿なの?

 実は転生者なんですって言った方が、まだましなルートやんか?


 ギャルゲーやってなかったんかな?流石の俺も、たかがネット小説に出てくるキャラクターがどんなゲームをやっていたのかなんて設定までは、考えてねえぞ?


 俺は、固有スキルを全力で駆使しながら、内心を表情には出さないようにしながら、改めて、こいつに、危険人物のレッテルを張り直していくのだった。


 「あれ?ジーナ??こんな時間にこんな場所で、めずらしい。いつもなら、食堂にいる時間だろうに。今日はどういう風の吹き回しなんだい?」


 水場に、森の狩りを終えた学生達がやってくる時間になっていたようだ。

 俺の婚約者、ハイスぺ王子も、その金髪を風になびかせ、笑顔でこちらに歩みを進める。


 「僕たちは、午前の経験値稼ぎを終えて、ちょっと汗を落として、今から食堂に行こうとしていたところなんだ。食堂でジーナに会えると思っていたんだけれど、ここで会えるなんて、嬉しいな。」


 ん??待てよ。

 何これ。


 あ~~~!!!


 これが、わたしの為に争わないで!ってやつか?イケメンふた人が? 


 ちょっと。。。気持ちいいぞ?

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