番外編短編・toast!
エディにホームパーティーに誘われた。
なんでも実家から母親や親戚が遊びに来ると言うので、招待してくれた。
「私が行ってもいいの?」
エディの家族のパーティーに何故私が?場違いでは無いだろうか。
「実は、うちの妹と私は仲が悪いんですよ。まあ、あの子は長い反抗期ですね」
「へぇ…」
意外だった。エディの性格からすると、家族仲良くしていそうに見えたが。
「だから、妹と同じ年齢ぐらいの真澄チャンがいるといいかなって。あと、日本でおススメのスイーツも教えてくださいよ」
「そういう事ならオッケーね!」
私は心よく承諾した。
日本でおススメのスイーツなどは、ネットで調べる。やっぱり便利である。
洋菓子は候補から除外し、和菓子から選ぶ。イチゴ大福が外国人に評判が良いらしいので、当日デパートで買ってエディの家に持っていった。
エディの家は、一人暮らしではあるが、一軒家だった。なんでも、伝道のために動画配信などもしていて、アパートではやりにくいから引っ越したのだという。
事故物件で家賃はかなり安いらしい。
「まあ、幽霊なんていませんよ。いてもどうせ悪霊の類でしょうから別にイエス様に頼んで追い払えますしね」
「そうねぇ。幽霊なんて私も見たことないわ」
事故物件と聞いてちょっと怖かったが、夢の中の殺人事件を思うと、この世界の幽霊などもそんなに怖く感じない。
一番広いリビングでは、パーティーの準備が整えられていた。
まだエディの家族は来ていないようだが、ピザ、チキン、パエリアなどが並べられ、センターには大きなシフォンケーキがあり、豪華だった。
「もしかてこれ全部エディが作ったの?」
「ええ。朝から作って骨が折れましたよ。新型インフルエンザが流行る前は、礼拝の後にこんなふうに料理を出してみんなで食べていたんですがね」
エディは料理好きなようだ。この点も夢の中の牧師さんと共通事項であるが、エディは凝り性らしい。最近はスパイスカレーにはまり、海外からスパイスも取り寄せているとヲタクっぷりを発していた。
持ってきたイチゴ大福を皿に盛り付け、そんな話を聞いている時、ついにエディの家族がやってきた。
私は驚いて目を見張る。
エディの母はクラリッサそっくりだったし、そのメイドもプラムそっくりだった。妹は、リリーにも似ている。名前まで同じだった。初対面なのに、懐かしいとすら思えてしまった。
やっぱり綾本は身近な人物をモデルにしていたようだった。
「なんか、真澄さんって初対面の割には打ち解けた雰囲気見せてくるわね」
リアルクラリッサは、顔を顰めていたが、イチゴ大福を目の前にすると豹変。リアルクラリッサだけでなく、女性陣は、「珍しい!」と大騒ぎで、インスタに載せると騒いでいた。イチゴ大福を持ってきたのは、正解だようである。
特にリアルリリーは、インスタに載せると写真を撮っていた。
「インスタ映えするわ!」
リアルプラムもそう言って写真を撮る。ちなみにインスタ映えはinstagrammableという単語に置き換えられる。まあ、わざわざそんな英単語を使わなくても「This would look great on Instagram!」などと言えば十分であるが、他にも「insta-worthy」とも言ええる。「It is insta-worthy.」は、文法的にも中学生レベルなので、英語学習者はインスタ映えするものを見たら、呟いてみると良いだろう。
「まあ、みんなで乾杯でもしましょう」
大騒ぎする女性陣たちにエディは、少々引きながら紙コップにジュースを注ぎ、みんなに配る。
英語で乾杯は「toast」。
なんでこんな単語を使うかは、最初見た時は謎だったが、不味いワインにトーストを入れて乾杯していたのが、始まりらしい。
完璧する時は「Let’s make a toast」などと言うと良いだろう。ここでは加算名詞。
食パンを焼いたtoastの方は不可算名詞で「a」はつかない。乾杯なのか、食パンなのかは、「a」を見て区別し、洋書を読んでいた事を思い出す。
何はともあれ、女性達も笑顔で乾杯し、パーティが始まった。
あの夢の中とそっくりな人物達に囲まれるのは、ちょっとソワソワとしてしまうが、殺人事件が起こりそうにもない平和な光景に感謝したくなった。




