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42話 ただいま!

 目が覚めたとき、私はベッドの上に寝かされていた事に気づく。


 どこかの病院であるようだった。窓の外の木々は赤や黄色だ。秋のようだった。コージー村ではない事がハッキリとわかる。


 電柱や電線、コンビニやスーパーも見える。コージー村にはあり得ないものだった。


 窓に反射する私の顔は、別に老人ではなかった。げっそりと痩せこけて老け込んではいるが、ギリギリアラサーには見える。


 すぐ看護師が来て、医師もきた。二人ともごくごく普通の日本人で、日本語も通じた。


 医者はジェイクではない。全くの別人である。少し禿げかけた60歳ぐらいの男で、あの現実味の無いイケメンの事を思い出すと、逆に少しホッとするぐらいだった。


 手には玉手箱などはない。


 浦島太郎のような状況にはなっていないようだが、医師の説明では約3ヶ月眠っていたそうである。


「3ヶ月? ソンナニ?」


 私がそういうが、日本語のイントネーションがちょっと変になっていて医師は後で詳しく検査もしようと言う。


 こうなった原因は検査をしなくてもわかっていた。ずっと夢の中で英語を話していたせいで、日本語を忘れかけていたからだ。夢とはいえ、英語のスキルだけは身についているようだった。恐ろしい。


 それだけこの夢は私にとってリアルだったようである。しかし、こんな夢を見ていた事は言えない。精神科の連れて行かれるのがオチだろう。自分の精神がまともであるい自信は全くないが、投薬やカウンセリングで解決する問題にはとても思えなかった。


 しかし、医師は精神科にも受診しろという。


「え、何でですか?」


 私は精一杯正常な人のフリをして言う


「あなた、何も覚えてないの? まあ、脳の方も検査しましょう」

「何も?」

「3ヶ月前、職場の旧校舎の階段から身を投げた事は覚えていない?」


 医者のハゲかかった頭を見ながら、全て思い出す。


 受け持ちの生徒の綾本が自殺した。遺族からも責められた私は、責任を感じて自殺を図ったのだ。


 今思うと、なぜ私は自殺を図ったのかわからなかった。


 見ていたコージー村の夢のお陰だろうか?心は少し修復されている。


 ただ、何であんな夢を見ていたんだろうか。謎が一つだけ残ってしまった。


「まあ、働き詰めで過労状態だったんですよ、あなたは。身体もメンタルも少しは休めなさい」

「そうですね…」


 確かに自分は、働きすぎだったかもそれない。夢ではあるが、コージー村の呑気な生活を思い出すと、何であんなに一生懸命働いていたのか疑問に思うほどだった。過労死(カロウシ)という日本語は英語化して定着してしまっている事を思い出す。こんな自殺のような事をしてしまったのは、心の余裕もなかったからかもしれない。


 こうして夢から目が覚めた。


 コージー村は全て幻であった事は、とても淋しいが生きているだけでもラッキーなのだろう。


 夢なのに牧師さんに本当に恋をして馬鹿みたいである。それでも少し心は満たされて、リアルな恋愛をする気分には全くなれない。私は根っからのヲタク女なのだろう。


 それなのに、いいようがない寂しさが私を襲う。コージー村は、自分の一部みたいに思うほど馴染んでいた。


 その一部を奪い去られたようで、心にポッカリと穴が空く。


 これから前と現実を見て生きていかなければなら無いようなのに、コージー村の事は忘れられそうになかった。特に牧師さんの笑顔を思い出すと、心の空洞は果てしないもののように思えてならない。


 夢は終わった。


 でも、私はちゃんとこの本当の世界で生きていけるか自信がない。

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