表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/54

35話 お宝発見?

 私とクラリッサは森に入る前に、暗号を解いたプラムに作って貰った地図を取り出した。


「アハブが埋められていそうな場所はわかりましたけれど、この地図複雑ですねぇ」


 プラムから貰った地図は、目眩がするほど複雑で女二人で迷わずに行けるか不安だった。


 事件が発生する少し前、イースターのイベントでこの森に来た事があったが、迷っていた事を思い出す。あの時は牧師さんが助けてくれたが、今回はそういうわけにいかないだろう。今日は牧師さんは仕事のはずだ。最近はいままでの事件の犯人に面談に行き、心のケアもしている。


「そうね、迷いそうね。マスミは何か良いアイデアは無い?」

「そういえば!」


 私は、ピクニックバスケットからこんもりと丸い田舎パンを一つ取り出した。


「このパンをちぎって通った道に置いておきましょう」


 元いた世界の童話であったヘンゼルとグレーテルにそんな描写があった事を思い出す。


「でも、小鳥が食べてしまうんじゃない?」


 クラリッサの指摘はもっともだったが、ここのパンが硬く酸味もあるので小動物は食べないとミッキーが言っていたのを思いだす。なぜがその時のしょんぼりとしていたが、パン職人としてプライドがある彼は小動物にも美味しいと思って貰いたかったのかも知れない。


「だったら大丈夫ね。パンをちぎっておいておきましょう」


 その事を言うと、クラリッサもこのアイデアに賛成した。


「でもせっかくのミッキーの美味しい田舎パンをおいておくのは、もったいないですかね」

「そんな事ないわよ、マスミ。私達が迷って帰って来れない方が大変じゃない」


 こうして私達は、パンをちぎりながら森に入っていく。ここの森の中は、木の密度が高いようで中に入ると一気に薄暗い雰囲気に変わる。


 硬い田舎パンを指で一生懸命ちぎり、土の上に落としていく。やっぱりちょっと勿体ない気もした。こんな用途に使った事はミッキーには口が裂けても言えない。


 ただ、そのおかげかはわからないが地図通りにスムーズに歩く事ができた。途中でクラリッサは喉が渇いた、疲れたなどとワガママを言い始めたが、「小説の取材になるかも知れないですよ」などと励まし、何とか目的地の泥棒集団のアジトと思われる小屋につく。


 しかし、小山はすっかり老朽化していて今にも崩れそうだった。10年位は放ったらかしにされていそうだった。

 クラリッサは小山を見つめながら、咳払いをして、文句を言っていた。


「なんだ。泥棒集団のアジトだったら、お宝でもあるかもしれないと思ったのに」

「そうですねぇ…」


 確かにクラリッサがガッカリする気持ちはわかる。一応崩れそうな小山の中にも何とかは入ってみたが、何もなかrた。


 ただ、プラムが解いた暗号によればこの近くの土の下にアハブが埋まっている可能性が高いという。


「本当に死体なんてあるの?」


 クラリッサは半信半疑だったが、私も同意見だ。本当にこの汚い小屋のそばに死体なんてあるのだろうか。


「でもせっかく来たし、一応適当に掘り起こしてみましょうか」

「私は疲れちゃったわぁ。結構歩いたもの」


 クラリッサは、ピクニック用のバスケットから、レジャーシートを取り出し、その上に座って休憩し始めてしまった。田舎パンのサンドイッチをぱくつきながら、気分はすっかりピクニック気分にようだった。


「美味しいわ、マスミ!」

「そうですか。でも私は、一応この辺りを掘ってみますね」


 呑気な光景だった。


 死体なんて出てくるのが疑わしいぐらいクラリッサはニコニコとピクニック気分を楽しんでいる。


 私もすっかり気が抜けて、死体を探す緊張か感はすっかり消えている。適当に持ってきたシャベルで土を掘る事にした。


「頑張って、マスミ!」

「ええ」


 クラリッサに応援されたが、気が抜ける。頭上に飛ぶ小鳥の鳴き声も平和過ぎて、本当に死体が出てくるのか疑わしい。30分ぐらい適当に掘り続けたが、やっぱり死体は出てこなかった。


「変ねぇ」

「もしかしたら、クラリッサが座ってる場所の下にあるかも?」

「あらあら、だったらどいてみましょうか」


 ちょうど田舎パンのサンドイッチを完食したクラリッサは、満足したのかレジャーシートを片付けはじめどいてくれた。


 そこをシャベルでほじきり返す。クラリッサも手持ち無沙汰で暇なのか、時々手伝ってはミミズや小さな虫にキャーキャー騒いでいた。


「意外と虫がいるのね。作品のネタになるかもしれないわね」


 クラリッサは、メモを取り出してその事を書いていた。私はその間に一心に掘り続けた。ちょっと疲れてきて、汗ばんでも来たが止める事は出来ない。


 せっかくここまで来たので、損切りができないのだろう。日本人らしく「もったいない精神」である。


「あ! ちょっとクラリッサ!」


 私は思わず大きな声を出す。


 掘り続けてようやく目当てのお宝が見つかった。

 しかし、それはお宝と言えるかどうかはよくわからない。

 白骨死体があった。大きさや形などからみて子供でも女でも無さそうだった。もちろん犬や猫でも無いだろう。


「あら! 本当に白骨!」


 私はやっぱりショックだったが、クラリッサは大興奮。せっせと白骨の状態をメモしていた。


 そんなクラリッサに呆れてしまうが、やっぱりこの白骨死体はアハブのものとみてよいだろう。アハブが魔導書に残した遺書のような暗号は、事実になってしまったようだ。


 アハブを殺した人間とあの男が殺した男が同一人物かどうかは不明だ。


 しかし、あの泥棒集団が殺人を犯しているところである可能性がかなり高う。もしかしたら、利益の分配で揉めたら強いものが殺すというルールでもあるのかもしれない。


 泥棒集団が考える事などは想像できないが、無法地帯のような集団である事は簡単に想像がつく。


 あの男は義式殺人のようでもあったが、それもフェイクなのかもしれない。


 そんな事を色々考えていると、テンションが高かったクラリッサが急に顔を顰めた。


「ちょっと、足音がするわ。向こうから」


 クラリッサは元きた方を指さす。


 しかし人影も見えず、木々の葉の擦れる音しかしなかった。


「本当ですか? 足音なんてします?」

「するわよ、する!」


 クラリッサは特に怖がってはいなかった。むしろ子供のようにはしゃいでいる。


 しかし、私は嫌な予感をもった。


 薄暗い森を眺めていると、何か不安に襲われる。


 同時に足音のようなものも聞こえた。誰かの声のようなものもする。


「誰?」


 私はちょっと大きな声で言う。


「どなた? 怒らないから出てきて?」


 呑気なクラリッサの声響いたのと同時っだった。


 目の前にリベアルとイザベラが現れた。二人はいかにも泥棒らしい真っ黒な全身スーツに身を包んでいた。


「やあ、君たちを捕まえにきたのだよ」


 リベアルは、奇妙なまでに明るい笑顔を見せた。やっぱりこの二人が犯人のようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ