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34話 探偵気取りのクラリッサ

 翌日、なんとプラムはアハブの魔導書に書かれた暗号の謎を解いてしまった。


 やっぱりアハブは自分の死を予感していたようで、自分が殺されるとしたら泥棒集団アハブの拠点のある場所に埋められると書いていた。そこは遺跡発掘場の側にあるコージー村とハードボイルド村の境にある森野の奥という事もプラムが暗号を解いて突き止めてしまった。


 またこの村の複数の箇所に泥棒集団が隠したお宝も埋めてある。その場所も全部プラムが解いてしまった。やっぱり元スパイの有能なプラムには、いくら頑張っても私は負けそうだ。


 その話を聞いてクラリッサは目を輝かせて大興奮。

 アハブが埋められていると思われる遺跡発掘場そばの森に行きたい!と駄々をこねた。


「ねえ、マスミもプラムもいいでしょう。作品のネタになるかも知れないし!」


 プラムはため息をつき、「マスミと二人でいくらなら良い」と許可をだした。やっぱりいつものプラムに比べてクラリッサに甘いようだった。


「プラムはどうするの?」


 私はその間、プラムがどうするのか気になった。


「私はアラン保安官を連れて宝を探しに行くわよ。クラリッサのティアラも必ず見つけるんだから!」


 プラムは鼻の穴を膨らませていた。本当にこの件に憤っている事が窺える。身支度を整えると、さっさと一人でクラリッサの屋敷を後にしてしまった。


 一方クラリッサは、私と一緒に事件調査をするのに浮かれていた。


 化粧もして髪もセットし、ちょっと探偵風にも見える茶色いコートを着込んでいた。


 ピクニック気分でもあるようで、私に田舎パンのサンドイッチ野菜ジュースを作る事も指示。


 私がそれを作っている間に、ノリノリでクラリッサは身支度をしていた。普段コージーミステリ小説を書いているだけあり、事件調査を逆に楽しんでいるようだった。


 そんなクラリッサを見ていると私ももっと事件調査を楽しんでいれば良かったと思わされるほどだった。


「では、いきましょう、マスミ」

「ええ」


 すっかり探偵気取りのクラリッサと私は屋敷を後にし、遺跡発掘場の近くにある森に向かう。


 クラリッサは探偵気分であるが、私はピクニック用のバスケットを持って歩いている。


 私は土を掘る為の大きなシャベルも背負っているが、どうも深刻さが薄れるというか、やっぱりピクニック気分が拭えない。


 天候もまさにピクニック日和だった。空は絵の具の一番明るい青色のような色で、風も柔らかい。日本と違って花粉が飛んでいないのが本当に嬉しくなる天候である。


 小鳥の呑気な囀りも田舎の呑気な気候をさらの演出していて、聞いているだけでもちょっと眠くなってくる。


「ところで、なんでコージー村がこんなに泥棒達の拠点になったりしているのかしらね?」


 クラリッサは首を傾けて、疑問を口にしていた。


「あのアハブの魔導書によると、この村はどうも磁場が不安定で魔術もかけやすいとか載っていましたね」

「そうなの? 嫌だわ!」


 そう言いつつ、クラリッサはかなりご機嫌だった。


「やっぱり犯人はリベアルとイザベラ? どう思う? マスミ」


 遺跡発掘場にある森まではけっこう距離がある。自然と私達の話題は、事件の事になる。


「だと思うわ。仲間のニムロデも泥棒で、逃げているんです。それのイザベラ達はあの魔導書を探してましたから」

「そうなのね。まあ、大方仲間内で揉めたんでしょうね。悪者同士が集まって団結しても碌な事にならないわね」

「団結っていうと一般的には良いイメージですけどね」


 主に日本では、人と人との和やみんなで協力する事が良いとされていた。元いた世界の職場でも「みんな仲良くしなさい!」とよく注意していた事を思い出す。まあ、誰が掃除当番するのとか誰が班のリーダーをするとか些細な揉め事の時によく言っていつ台詞ではあるが。


「バベルの塔よ。弱くて罪深い人間が集まって何かやってもろくでも無いわぁ」

「クラリッサ、バベルの塔って旧約聖書に出てきた話ですか?」


 クラリッサは頷く。


 確かバベルの塔の話は、神に反抗する人間達が大きな党を立てようとする話だ。しかし神様が「人間の言語が一つだからこんな事になる」と怒って、言語をバラバラにしてお互い通じ無いようにしたのだ。


「確かに悪い人間達が集まってもろくでもないですね」


 私はしみじみと呟く。


「そうよ。みんな集まったら、利益も綺麗に分担しなくちゃいけないけど、そんなの無理ね。強欲な人間が必ずいて、平等に富を分け合うなんれ絶対できないわ!」


 クラリッサは歳の功なのだろうか、やけに実感がこもっていた。


 今回の犯人は泥棒集団だと思われるが、やっぱりお宝の分担で揉めているとしか思えなくなってきた。


 そう思うと少し余裕も感じられた。クラリッサは小説のネタになるとワクワクしてうるのもあるだろうが、こうして思うと犯人達のチンケさをよく見抜いているからだろうと思わされた。


「さあ、マスミ。絶対に犯人を見つけましょうね!」

「ええ!」


 クラリッサと共に決意を新たにしたところ、発掘場の近くの森に着いた。

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