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28話 牧師さんに会いたい

 翌日、ミシェルへに手紙をクラリッサの屋敷の近くにあるポストに投函すると、商店街の方に歩いていた。


 今日はコリンに会いたいものだが、特に約束はしていない。


 とりあえずデレクのカフェに行き、腹ごしらえでもしようと歩いている時、ローラに声をかけられた。


「マスミ! こんにちは!」

「ローラじゃない。元気そうね」


 ローラは、もともとハードボイルド村でキャバ嬢をしていたが、カーラの事件がきっかけにこの村に越してきて、農業で働き始めた。


 当時は派手な化粧をしていたが、今はすっかりコージー村の村娘といった雰囲気だ。


 シミやそばかすのついた頬や、ちょっと傷んだ毛先も逆に自然な美しさを感じてしまう程だった。あの頃よりだいぶ健康的になったように見える。


 ローラは、久々に休みがとれたので、村を散歩中なのだという。


 確かによく晴れた春の日。散歩するのには、ピッタリである。


「マスミ、ありがとうね」

「私、お礼を言われるようなことをした?」

「いえ、そういうんじゃないけれど昔いた世界から足を洗う事ができて本当に幸せだなって思ったのよ」


 確かにそう言うローラの横顔が、満ち足りている。

 頭上では小鳥の可愛らしい囀りが聞こえる。空は薄い水色で、風は優しく吹いている。


 何もない春の日。しれでも今、ローラが幸せを噛み締めている理由はよむわかった。


「寂しくなるわねぇ」

「ローラ、何が?」


 そんな平和な日なのに、ローラにこの言葉に少し不安が過ぎる。


「もうすぐよ…」

「何が?」

「いえ、何でもないのよ」


 ローラはこれ以上、この話題について口を開かなかった。


 おそらくこの世界についてのことを言っているにだろう。

でも、これ以上ローラに追及する気分にはなれなかった。これ以上聞いてしまったら、決定的にこの世界は夢だと思い知らされそうだった。


 現実から逃げたいわけではないが、今はまだ、この世界にいたいと言う気持ちが強かった。


「ところでマスミは、また事件の調査をしているんでしょう?」

「噂になってるのね」


 私はちょっと苦笑する。


 少し日が陰ってきた。春とはいえ、少し日差しは強かったので、雲が流れた日が陰ってきてちょうどよい。


「ローラは何か事件について知っている事ない?」

「そうねぇ…」


 ローラは、顎に手を当ててしばらく考えていた。


「転移者の男が殺されたのよね?v私、見たわよ」

「何が?」


 私は身を乗り出して聞く。


「霧の森の近くで、転移者らしき男ともう一人男と一緒に居るのを見たわね。何か慌てて探していたわ」

「どんな男だった? 小太りの男?」

「いえ、細身でメガネのクールそうな男だったわね。二人ともこの村には、いないようなタイプだったからよく覚えてる」


 その男は、エスーペラント語の団体のリベアルの特徴と合致しているではないか。


 やっぱりあの三人は泥棒集団バベルに団体で、何らかのトラブルがあり、あも男を儀式見せかけて殺したというのが妥当のようだ。霧の森にいたのも、アハブの魔導書を探していたのだろう。


 しかし確証はない。


 アラン保安官達が、それがなく捕まえられないと言っていた理由がよくわかる。


「じゃあね、マスミ。私は牧場の方も散歩してくるわ」

「ええ。今日は散歩日和ね」

「マスミ、気を落ちさないでね?」

「どうして?」

「どうしてもよ」


 ローラは、肩をすくめて、牧場の方に散歩しに去って行ってしまった。


 おそらくローラもこの世界のなぞを知っているのだろう。

 再び寂しさに襲われる。目が覚めるまでの時間は、そう長くないのかもしれない。

 その前に牧師さんには、会いたかった。

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