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25話 容疑者に逃げられた!

 郷土資料館を後にし、移籍発掘場の側の道を歩いていると反対側から走ってきた人物とぶつかった。


「いた!」


 思わずこけてしまったが、見上げるとその人物には見覚えがあった。


 エスーペラント語の団体の一人、ニムロデだった。ニムロデはこけた私を無視して逃げるように走っていく。


 実際逃げているようだった。

 アラン保安官が走ってきて、ニムロデを追いかけているようだった。


「待て! マスミもあの男を追ってくれ!」


 私も反射的にニムロデの背中を追いかけていた。


 小太りで鈍そうな体型の男なのに、ニムロデは意外と俊敏に走っていた。肩には大きな荷物も持っているのに、疲れたところはまるで見せない。オリンピックに出たら陸上競技で金メダルでも取れそうである。


 アラン保安官と一緒にニムロデを追いかけたが、湖の方面に行った所で力尽きる。


 あとはアラン保安官に任せる事にした。


 しかしニムロデはなぜ逃げているの?


 あの大きな荷物は何?もしかしてニムロデも泥棒集団の一味?


 そう思うと辻褄が合うが、あの男を殺した証拠はない。湖の近くのベンチに座り、息を整える。


 とりあえず今は自分の身体の息を整えるのが先のようである。


 しばらくしたら、だんだん元に戻ってきた。不便なこの村の生活が慣れてきたとはいえ、男性のアラン保安官と一緒に全力疾走した事はさすがに疲れた。お腹も減ってきた。このあとデレクのカフェに行って再び腹ごしらえをする必要がありそうだった。


 そこへアラン保安官が戻ってきた。顔は全く明るくはない。


「あの男捕まえられた?」

「それが逃げられたよ!」


 アラン保安官は、髪の毛をかきむしりながら私の隣に座る。


 ニムロデに逃げられた事は相当悔しそうだった。いつもはアラン保安官のことを無能だと言っていた事を反省したくなる。意外とこの人も職業意識はあるようだった。たぶん、杏奈先生がいつも殺人事件を解決していたので、やる気や自信を失っていたのかも知れない。そう思うと、アラン保安官の事も嫌いのなれず、再び一抹の寂しさに襲われた。


「アラン保安官、あの男何? 泥棒だったの?」

「そうだ」


 アラン保安官は吐き捨てるように言い、私に説明し始める。


 王都の警察とこの事件について協力体制になり、ニムロデは泥棒集団バベルの一員であることが判明した。今回のクラリッサやダニエルの家の泥棒もニムロデが陰で糸を引いていた可能性が高い。あの男があくまでも実行犯だったそう。この事は初耳だった。やっぱり自分だけの調査は限界があると思いそらされる。ジェイクは探偵みたいと言ってくれたが、やっぱり自分にはその素質があるとは思えなくなってきた。


「だったら、ニムロデがあの男を殺したの?」

「警察はその可能性が高いとみているよ」


 アラン保安官は、ため息をつき、逃げられた事を嘆き始めた。


 目の前には綺麗な湖が広がっている。せっかくの長めのいいシチュエーションだが、相手がアラン保安官。しかも話題は殺人事件という事で、浮かれる気分には全くなれない。


「でも物的証拠は何もなく、泥棒の件で捕まえて吐かせる予定だったんだよ」


 警察も殺人事件の物的証拠はおさえていないのか。競っているわけではないが、その点についてはこちらも似たような進捗なので、少しホッとはする。


「15年前はジェイクの家族が被害者だったのね。そっちとニムロデの関係は?」

「ああ、当時もニムロデが影で糸を引いていたんだ。アハブという男が実行犯だが、盗んだものの取り分で揉めていたそうだ。アハブの行方もわからんのだよ」


 アラン保安官は、深くため息をつく。私も釣られて暗い気持ちになりそうであるが、気を確かにしなければ。


「ニムロデは、エスーペラント語の団体の一人よ。もし貸して、イザベラやリベアルも泥棒集団の一味?」


 そう思うと辻褄が合ってしまう。ただ、アハブの魔術書をなぜ探しているかは謎であるが。


「警察はその可能性が高いと見てるんだが、あいつらは否定している。まあ、証拠はないんだよ」

「魔導書の事は?」


 言った瞬間、口を滑らせてしまったと思った。アラン保安官は、アハブの魔術書については、何も知らなかったようで、どういう事かと問い詰めてきた。やっぱり自分も嘘がつけないタチのようである。仕方がない。


 私はハードボイルド村の公演会を見にいき、イザベラ達が魔導書について何か揉めている様子である事を告白した。


「そうか、魔導書か」

「心当たりない?」

「チェリーの家にあった本は全部警察が押収しているんだがな」


 アラン保安官も魔導書については全く知らないようである。


 この件についてつは自分はリードしているかも知れない。


「郷土資料館ではコリンがよく見てたそうなのよ。コリンについては何か心当たりない?」

「そうだなぁ。あんな良い人が殺人事件をするとは思えないよ。何より動悸がないだろう」


 アラン保安官の言う通りである。やっぱりコリンを疑う事はできない。


「まあ、バベルっていう集団がしょっちゅう盗んだものの取り分で揉めていてな。たぶんどこかでボロを出すだろ」

「そうね。あの三人も仲悪そうだった」

「だろ?」


 アラン保安官は、仕事があるとハードボイルド村の方に行ってしまった。


 この事件を解決すれば昇進の機会があるとも言っていた。道理で今回は事件調査にやる気があるはずだ。


 アラン保安官のこの件をもう丸投げすべき?そんな事も一瞬思ったが、やっぱりコリンについては気になる。


 乗りかかった船だ。今更この事件から逃げるわけには、いかないようだ。


 やっぱり犯人を見つけなくては。


 決意を新たにしたとき、腹の虫がなる。やっぱり全力疾走は、アラサーの身体にこたえたようである。


 腹が減っては戦が出来ぬだ!


 私は再び商店街に方に歩き、デレクのカフェに入った。


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