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24話 誘惑に負けそうだから

 拭えない寂しさを抱えたまま、ジェイクの医院を後にすると再びハードボイルド村方面にある移籍発掘場に方面に向かった。


 反対方面であり、歩くのには骨が折れたが、この村に来てから足腰が鍛えられていた様である。すっか歩く事にも慣れてしまっている様だった。それに元いた世界のように花粉が飛んでいない天気の良い春の空の下を歩くのは、悪くないと思う。


 田舎の畦道は、コンクリートの様に舗装されていないので雨が降ると水溜りができてしばらく水が引かないし、乾燥している日は砂埃が舞うし、ゴツゴツした地面は歩きにくいという不便な面もあるが、自然に近い田舎の畦道を歩いていると心は浄化されていく様である。


 生命力が溢れる木々の緑を見たり、可愛らしい小鳥の囀りを聞くのも気分がどんどん晴れていく。ジェイクと話していて寂しさは拭えなかったが、それでも心は自然を見ていたら落ち着いていた。


 そんな事を考えているとあっという間移籍発掘場につく。今日はあまり研究員もいない様で、アデルの姿も見えなかった。


 一応移籍発掘場にいる研究員達に泥棒集団や不審な魔導書を見なかったかと聞いてみたが、成果はない。ただ、移籍発掘場の近くにある郷土資料館の中には、この国が魔法国家時代の時の資料や遺跡からの産出物もあるというので、見学したらどうか?と提案された。しかもコージー村の住民なら無料で入館できるという。


 何かヒントがあるかも知れない。

 私は研究員達のアドバイスに従い、移籍発掘場の近くにある郷土資料館に向かった。


 郷土資料館は、日本にでもあるような地さな博物館と行った雰囲気の建物だった。


 日本でもこう言った施設はあまり人がいないようであるが、こちらも例に漏れず誰も人がいない。


「あら、マスミじゃないの!」


 郷土資料館に受付には、アデルが居て私の姿を見つけると笑顔を見せてきた。


「何? ここの郷土資料の興味が出てきた?」

「そんなんじゃないんだけど、事件に関係がある気がしてね」

「事件の調査を本当にしているのね。早く解決して欲しいものだわ」


 アデルはこの郷土資料館のおすすめの展示物などを教えてくれた。魔法国家である時代の生贄儀式の依り代にしていた人形や魔法の呪文が書かれた文章などが面白いと目を輝かせて説明する。


「アデル、あなたこれじゃまるで魔法に興味があるみたいじゃない?」

「別に魔法自体には全く興味はないわよ。ただ、昔のものはロマンがあって面白いわ」


 そういうものなのか。

 アデルが、元いた世界にも多くいた歴史女子という存在に近いのかも知れない。自分ではよくわからないが、歴史的なものは、確かに何か魅力がある事はわかる。


 そんな事を考えながら、一通り展示物を見て回る。

 キリスト教がこの国っで伝道される前は、この国は本当に魔法国家らしかった。


 さまざまな展示物がその証拠で昔の人は変な儀式に熱中していたようだ。


 ただ、魔法は結局悪魔からの力を得る行為で、それなりの代償が必要な事も示されていて、子供や女性などの弱者が生贄として犠牲になった事も伝えられていた。当時の生贄になった女性の日記や家族の嘆きの手紙なども展示されていて、思わず見ているだけでも目頭が熱くなる。


 やっぱり魔術というものは、そもそも人間の果てしない欲望が発端になって行われている様である。こんな酷い歴史を繰り返さないよう聖書が引用され、神様とともに歩む人生が人間にとって一番幸福になれるという郷土資料館の館長のメッセージが書かれ、展示終わっていた。


 結局事件の手がかりは、無かったようではあるが、やっぱり人間の欲望は果てがないし、そこにつけ込む魔術も恐ろしいという教訓も得られた。意外と心に残る展示物だった。


「どう?マスミ。展示物はよかった?」


 帰り際、アデルに再び声をかけられた。


「ええ。本当に人間の欲望も魔術もおそろしいものね」

「そうでしょ。やっぱり過去から教訓得る為、郷土資料館も必要だって思ったでしょ」


 アデルはちょっと自信を持ちように胸をはる。確かにアデルの仕事はとても意義のある事だと思った。


「事件の手がかりは掴めた?」

「それは全くわからないわ。アデルは、この村で魔導書の様なもには見たことない?」

「ないわね。ここでは意外と出土されていないのよ。でも、アンナが2年ぐらい前、魔導書がどうとか質問してきたことがあったね。たぶんコリンの奥さんの事件を調べてた時だと思うんだけど」


 アデルは、コリンの奥さんの事件を思い出したようで、顔を顰めていた。


「嫌な事件だったわ。犯人は奥さんを生贄にして死んだ人を生き返らせようとしてたんだから。やっぱり魔術なんて絶対に手を出したらダメね」

「そうね…」


 私も深く頷く。あの展示物を見てから、魔術など人間は絶対に手を出すべきでは無いと感じる。


 そう言えば元いた世界では、魔術を良いもののように描かれた映画や漫画、小説などが多かったが、あれも良いものだとは決して言えなくなってしまった。たぶん見ているだけでも人間の欲望に感化され、魔術と言えなくてもお呪いや占い、スピリチュアルなどにも受け入れやすくなる様な気もする。


「アデルは他に気づいた事はない?」

「うーん。そういえば最近よくコリンがこの郷土資料館に来て色々見ているんだけど、何か関係あるかしら?」

「コリンが?」


 意外な人物の名前である。


「何で郷土資料館に来てるの?って聞いたら、『誘惑の負けそうだから』って言ってた。どういう事かしらね?」


 アデルはぶつぶつとつぶやいていた。


 コリンはなぜ郷土資料館に来てるのか。私にもその理由はわからないが、『誘惑に負けそうだから』という言葉は気になる。


 コリンは何か隠している?


 事件の関係あるかわからないが、何か彼も秘密を持っていそうだ。いたずらにコリンの秘密を暴く事は抵抗があるが、嫌な予感もする。


 ・コリンに会って事情を聞く事


 事件の調査も気になるが、コリンn事も気になり始めた。

 コリンがこの事件に犯人だとはとても思えないが、何か鍵になる事も知っているかも知れない。


 嫌な予感も確かに感じるが、事件の真相に辿り着きそうなワクワクした。

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