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15話 事件ノートを書きます

 あの後、珍しく事件調査にやる気を見せたアラン保安官にチェリーの家から追い出された。


 今回は私が調査をする宣言を見てしまい、プライドに火がついたようである。


 といってもギャーギャー騒ぐだけで、まともな調査をしていないようではあったが、今回は身元がハッキリとはしないという死体という事で、ハードボイルド村の警官たちも集まり、少しは遺体を調べるようだった。


 いつもは教会の死体安置室に直行となるので、たまには警察らしい仕事をしているようであった。


 クラウスが、明日から王都で学会の仕事の準備があると足早に家の方に帰っていった。


「僕は明日王都に仕事だし、マスミは事件調査頑張って!」


 笑顔で励まされたが、やっぱり強いモチベーションにはならない。


「あの男は王都にもいたらしいのよね。クラウスはその点ちょっと調べる事は出来ない?」


 事件調査をするといっても私もアラン保安官同様に無能だ。王都の情報はクラウスに頼んで調べてみて欲しいとも思う。この土地でが王都の情報を得るのにも一苦労だった。


「まあ、気が向いたら調べておくよ」

「ありがとう」

「じゃあ。マスミもプラムもじゃあな」


 クラウスはそう言い残して去っていった。

 残された私とプラムはクラリッサの屋敷に変える事にした。


 いくら死体に慣れているとはいえ、それをみた後にデレクのカフェに行ったり、アナのジュース屋に行く気分にはなれなかった。


 屋敷に帰ると、私はさっそく自室に閉じこもり、事件ノートを書き始める。


 もうノートも5冊目である。


 少しは死体に慣れてきたとはいえ、やっぱり楽しい作業ではない。だからといってもう事件は起きてしまったし、止めるわけにはいかないようだ。


 ●謎の男殺人事件発生!

 悪魔崇拝儀式の生贄のような形で殺されていた。


 ●被害者はあの謎の男


 ・転移者(日本人)

 ・王都で日本の小説をパクっていた指名手配犯

 ・名前はムーン? 自身をムーンショット男ともいう。

 ・この村で泥棒を働いていた

 ・手口は宝の地図をすり替えるなどして、手が混んでいた

 ・私には挑発を繰り返す

 ・「この世界が夢か?」という謎について知っているようだが…。


 ここまで書いてみて、あの男の素性については何となくわかってきたが、あの男を殺した人間については一人も思い浮かばない。村に住んでいる人間の顔を思い浮かべたが、誰一人同動機がある人物が思い浮かばない。


 こうして考えると、アラン保安官が自分を疑った理由はよくわかってしまう


 あの男と同じ転移者である人間は私しかいない。日本にいた頃を思い返すが、あの男と関係ある人物は思い出せない。

 ふと杏奈先生の顔も浮かんだ。


 杏奈先生も転移者だ。


 あの男と杏奈先生と何か関係ある可能性はないだろうか?

 村人に中で犯人はいる可能性は低いが、彼らは杏奈先生の事をよく知っている。


 再び杏奈先生の事について調べても良いだろう。


 ・杏奈先生について調べる事


 私も杏奈先生の情報はある。彼女が被害者になった事件の時に調べた手帳と事件ノートがまだ残っている。


 カフェが火事になったが、ポケットに入れていたので焼かれずにすんだものだ。水をかぶってしまったので、紙質はかなり劣化してしまい、インクも滲んで読めない所もあるが、全く読めない事はない。


 手帳に関しては、ジェイクへの想いが綴られた少女漫画風ポエムが多い。


『あんなイケメンがいるなんて、この世界は夢?』


 小女漫画風のポエムだと思ったが、この一説は笑えない。

『空気もいいし、花粉も飛んでない。食べ物以外は、パーフェクトじゃないかしら?』


 杏奈先生は食べ物については、こき下ろしているが、それ以外はこの村を気に入っているようだった。


 このあたりのポエムはよく読んでいなかったので、杏奈先生の印象も変わってしまう。やっぱりこの村が好きだったと思うと、彼女の死も可哀想になってくる。


『まさかこの村が●だったなんてね。ありえないわよ。早く●にたいぐらい!』


 こんな一文も見つけた。


 ●の部分はインクが滲んでよく見えない。どうやら私が来てすぐに頃の記録だった。ちなみにロブについての記録は全くない。その点はやはり用心深さが窺えるが、この一文は不気味だった。


『真澄先生もこの世界に来たけど、真実を話してあげた方がいいかしら? それともこのまま黙ってあげた方が彼女のため? 思えば、事件解決するたびに扉は開いたりしまったりするように見えていたのも…」


 そこでインクが滲み、紙の劣化もひどく読む事は出来なくなってしまった。


 こちらの世界とあちらの世界が行き来できたのは、チェリーの術が不安定だったからとロブが話していたはずだった。


 どう言う事?


 杏奈先生は何かを知っていた事は確かであるが、手帳を再び読み直しても答えが書かれている事はない。


 ただ、私が来る直前にコリンと頻繁に会っていた事がわかった。


 どうやら二人で英語や日本語について深く調べていたらしい。


 ・コリンが何か知ってる?


 今度は杏奈先生が残した事件ノートを読み漁る。コリンの妻が巻き込まれた事件と何か関係があるのかもそそれない。


 この事件は、ちょうど二年前の春に起こった事件だ。コリンの秘書の女が犯人。動機は、気分が悪い事に悪魔崇拝生贄義式の生贄殺人だった。


 犯人の秘書は、王都の大学で禁断の魔術書を手に入れ、その手順通りにコリンの妻を殺したそうだ。動機は、亡くなった恋人を生き返らせる為。犯人の動機は同情できる部分もあるが、全く関係のないコリンの妻を殺す事は自分勝手極まりない。


 この点は杏奈先生もかなり怒っていて、コリンと一緒に犯人をボコボコにしたそうだ。コリンも見た目はお爺さんだが、やる時はやるようだ。これで事件は解決したが、この事件をきっかけに杏奈先生とコリンは親しくなり、英語や日本語の勉強や研究などを一緒にそ始めたそうだ。


 きの事件については綺麗に解決している事がわかった。


 しかし、気になるのは当時の事件の容疑者だ。なんとあのエスーペラント語のイザベラ、ニムロデ、リベアルの名前があるではないか。もっともこの村にいたわけでがなく、王都で過去の魔術書の研究もやっていたようで、犯人に協力したかもしれないと杏奈先生が疑っていた。


 この事は、今回の事件と関係がある?


 特に大きな根拠はないが、何か関係がある気がする。


 ・エスーペラント語の団体も怪しい?彼らも調べる事。


 まだ何もわからないが、何も調べないよりはマシだろう。それにこの国が過去、魔法国家だった事も何か関係あるのかもしれない。


 図書館の本は情報がおかしな事になっているし、学芸員のアデルに話を聞いたり、郷土資料館にいってもいいかもしれない。


 今後調べることが決まり、少しホッとして事件ノートを閉じた。

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