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【第四話】王都マクフリラ


 「はぁ…まあ300万でまだ人生が続けられるなら安い方か…。」

 「せっかく5年かけて頑張って300万貯まったところだったのに・・・。うぅ…300万かぁ…。」



 「・・・よし。終わったことは考えててもしょうがない、日が暮れる前には着きたいし急ぐか。」

 俺は気持ちを切り替えて、また城の方まで歩き出す。





 「・・・そうはいっても城までは結構距離あるんだよなー。」

 10分程歩いても、まだまだ遠くに見える城。幸いなのは見晴らすばかりの平原なのと日はまだ昇りきったばかりということだ。しかも街道も整備されているため危険は少なそうな場所になっている。


 「車とかチャリがくるわけでもないしドラカリでも見ながら歩くか。」

※歩きスマホは危険なのでやめましょう


 歩きながらタイムラインを確認する。

 「やっぱりドラカリは見てるだけでも楽しいよな・・・」


 アプリを眺めながら歩いていると、とあることが思い浮かぶ。

 「あ、ドラカリでチャリでも買えばいいんじゃないか??」

 思い立ったが吉日、俺はアプリの検索窓に『ママチャリ』と入力し検索する。


 「やっぱりいろいろあるなー。どれがいいかな・・・お、これなんか良さそうだ。」


――――――――――――――


【商品名】

ママチャリ 27インチ


【商品説明】

27インチのママチャリです。電動アシスト付き自転車を買ったため乗らなくなるので格安で出品します。

引き取り歓迎ですが配送でも構いません。コメントなし、即購入OKです!


【値段】4800円

【配送料】送料込み

【出品者】ゆうたん@プロフに詳細


――――――――――――――


 「うん。安くて良い評価も多いし、これ買って城の方まで乗っていこう。」

 俺はすぐさま購入ボタンを押す。

 「えっと、支払いは残りのポイントで・・・。よし買えた。」

 「あとは取引メッセージを入れておくかー。」


――――――――――――――

【取引メッセージ】


テツ

『即購入おっけーとのことでしたので、買わせていただきました。お取引宜しくお願いします!』


――――――――――――――


 ここでとあることに気付く。

 「あれ?そういえば商品っていつどうやってどこに届くんだ??」

 「アイテムボックスの中に勝手に入ってたりは・・・しないな、うん。そりゃそうだ。」

 アイテムボックスを確認しているとスマホからピロンと軽快な音が鳴った。

どうやら取引メッセージの返信が来たようだ。


――――――――――――――

【取引メッセージ】


テツ

『即購入おっけーとのことでしたので、買わせていただきました。お取引宜しくお願いします!』


ゆうたん@プロフに詳細

『購入ありがとうございます!まさかこんなにすぐ売れるなんて思っていなかったのでうれしいです。すぐにでも発送出来ますので、今しばらくお待ちください!』


テツ

『ありがとうございます!早めに欲しかったので助かります!』


ゆうたん@プロフに詳細

『今発送しました!届きましたら評価の方よろしくお願いしますm(__)m』


――――――――――――――


 「発送早くてありがたいなあ。発送したってことは今度こそはアイテムボックスの中に入ってたり・・・しないな、うん。じゃあどこに届くんだ??」

 「まあ考えてても仕方ないし、しばらくは歩いていくか。」







 「あー・・・着いちゃった。」

 城まではまだまだ距離があるが城下町が大きいため思ったより早く着いたらしい。


 「おーい!そこの珍しい服着たそこの兄ちゃん!!旅人かい!?入りたいなら門はこっちだぞ~!」

 門番と思わしき鎧を着たおっちゃんが遠くから声を掛けてくれる。

 「あっ、はーい!今そっちに行きますね~!」

 この世界に来てから初の交流だ。俺はどこかうれしくなりながら小走りで門に駆け寄った。


 「よお、初めて見る顔だな。王都は初めてか??」


 「ええ初めてです。入りたいんですけど大丈夫ですか?」


 「おう、じゃあ大人一人で銅貨三枚だ!」


 「ど、銅貨!?!?ちょっと待ってくださいね!!」


 当たり前だがこの世界に来たばかりで、こっちのお金を持っていない俺は狼狽えてしまう。

そんな俺を見て門番が怪しく思うのは至極当然の事だろう。


 「持ってないのか??さてはお前さん……」


 やばい、どうするのが正解だ?逃げるか!?正直に他の世界から来ましたと言うのが正解なのか?どうしよう、どうしよう…

数分にも感じられる一瞬の思考に終止符を打ったのは門番が放った言葉だった。


 「相当な田舎から来たんだなー。」


 「へっ!?」

 驚きから腑抜けた声を出してしまう…がすぐさま話をあわせることにする。

 「ああ、そうなんです。祖父と祖母の三人で山奥で自給自足していたもので…」


 「やっぱりか!さっきは物珍しそうに防壁を見上げながら歩いてたからな。そうじゃないかと思ってたんだ。自給自足ってことは貨幣はまったく持ってないってことか・・・」

 

 「はい…やっぱり入れないですかね?」


 「うーん…よし、街の中なら働き口はいくらでもあるからな。ここは俺が出してやろう!」


 「えっ!いいんですか!?」

俺は門番の申し出に驚く。門番のルール的にも大丈夫なものなのかということと、見ず知らずの俺に対してお金を貸してくれることに対してである。


 「ああ、悪いやつには見えないしな。ついでに泊まるための銀貨3枚も渡しておくが…ちゃんと返しにくるんだぞ?」


 「ありがとうございます。」

俺は門番から銀貨を受け取ると深々と頭を下げて感謝をする。


 「お前さん、名前は??」


 「哲也…テツと呼んでください。」


 「そうか、テツか。いい名前だな。俺の名前はダミキエス、同僚たちからはダミキって呼ばれてる。基本的にはこの西門を担当してるから、金に余裕が出来たときにでもそこにある詰所に寄ってくれ。」

 「俺が非番だったら他の門番にでも渡しておいてくれ。それで伝わるから。」


 ダミキがごつい腕で門を開けながら説明してくれる。重たそうな門がゴゴゴッと音を立てて開いていく。


 「ああそれと、ここをまっすぐ行ったら噴水がある広場に出るんだが、その近くにナコンの宿屋ってところがある。俺の紹介だって言えば銀貨3枚で7日は泊まらせてくれるはずだ。」


「何から何までありがとうございます!」


 「あの近辺に宿屋はあそこしかないからわからなくなっても住民に聞けばすぐ教えてくれると思うぞ、まあわからないってことはないと思うがな。」


 「わかりました、行ってみます。」


 「金はいつでもいいからな、泊まれる間に働き口見つけろよ~?まあお前さんみたいに真面目そうなら大丈夫だろうがな。」


 こういった世話を焼くのが日常茶飯事なのか、中にいた門番が話を聞きながら苦笑いしていた。



 俺はダミキの先導で門をくぐる。そこには長く、広い通りがあった。露店がずらりと並んでおり、近くの露店からはいい匂いがしている。遠くに見える露店も活気があることはここから見てもわかることだった。

 さらに地球とは違うことがもうひとつ。そこら中にしっぽの生えた獣人や長い耳が特徴的なエルフ、体の小さなドワーフなど地球では見たことのない、様々な種族が共存していた。

 

 「おぉ…」

 圧巻の景色に詠嘆しか出なかった。

 

 「どうだ?いいところだろ?俺はここの賑わいが好きなんだ。」


 「ええ、とても素敵なところですね。」

 俺は本心からそう思い、それをそのままダミキエスに伝える。


 うれしそうな顔をしたダミキエスが俺の肩に手を乗せて言う。



 「ようこそ、王都マクフリラへ!」







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