【第二話】いざ転移!
「おお 杉野哲也!しんでしまうとはなさけない!」
・・・目の前に変な爺さんがいる。
この真っ白な空間にはその爺さんと俺の二人しかいない。
どう足掻いても質問はこの爺さんにするしかないようだ。
(今聞くべきことは・・・ここは何処なのか、あんたは誰なんだという事かな。ん?そういえばなんで俺の名前を知ってるんだ??)
「一つ目の質問じゃが・・・。ここはフリマアプリ『ドラカリ』の運営本部じゃよ。そして二つ目と三つ目の質問はわしは神じゃからな!ほっほっほ!!」
爺さんが朗らかに笑う。
(ん!?なんだこの爺さん。人が尋ねる前に喋りだしたぞ。ボケてるのかもしれない・・・やっぱり関わらないでおこうかな?)
「ボケてなんかないわい!!!神の力で心を読んだのじゃ!まったく、ボケ老人扱いしよって・・・。」
(俺そんなに言いたいこと顔に出てるかな・・・ポーカーフェイスな方だと思ってたんだけど。というかさっきドラカリの運営って言ったか??)
顔をムニムニと触りながら考える。
「じゃから心を読んだと言っておろう!なぜ信じんのじゃ!」
(疑り深い性格なもので・・・。)
「・・・まあ良い。そうじゃ、なんたってドラカリの創設者はこのわしじゃからな!!ほっほっほ!」
(ドラカリってあのドラカリ??俺が使ってたやつ??社長はこんな爺さんじゃなかったと思ったんだけど・・・。)
「そうじゃ、お主が使っておったドラカリじゃ。あれはわしの神力でそういう認識にしておっただけじゃよ。ドラカリの会社も認識を変えておったからの、本当はこの神界が本社じゃ。今は就業時間じゃないから、わし以外誰もおらんがの。」
(神パワーすげー!というかここ神界ってとこなのか。)
「やっと神と信じたか。じじいなどと呼びおって。」
(あ、そんなところから聞こえてたんだ。ごめんごめん。)
「ところでお主はまったく喋らんのじゃな。わしだけ喋って変な神みたいじゃろう。」
(会話できてるなら良くない??)
「まあ良いのじゃが・・・。」
(それでなんで俺をここに呼んだの??)
「ん?お主は呼ばれたわけじゃないぞ。死亡した際に魂がここに迷い込んだようじゃの。」
(迷い込んだ??)
「うむ、死ぬ前にドラカリのことを考えておったじゃろう。普通の人間ならば、死ぬ直前までドラカリの事を考えるやつはおらん。多分じゃが、それで魂が迷い込んだのじゃろうな。」
(それじゃあ俺はここから何をすればいいんだ??)
「そうじゃな、お主への選択肢は三つある。」
(三つ?)
「まず一つ目、このまま成仏する。わしが魂を天界へ送って輪廻の中に戻ることじゃな。」
(うーん、それ以外の方法があればそっちがいいかな。出来ればまだ生きていける選択肢があればうれしいんだけど・・・。)
「わかっておる。ただの選択肢の一つじゃ。」
「二つ目じゃ、このドラカリ運営神界本社で働くことじゃな。」
(え!?俺でも働けるの?神の力なんて持ってないよ??)
「うむ、人数不足での、いつでも人材募集しておる。人間でも普通に出来る仕事じゃぞ。週休二日制で保険もあるホワイトな会社じゃ。月給はなんと!30万ドラ!!」
(うん、ごめん、30万ドラで何が出来るのか分かんないんだけど。)
(あと死んでまで働きたくはないかなぁ。とりあえずは保留で三つ目の選択肢を聞こうかな。)
「三つ目の選択肢はわしの創った世界『ドラール』で暮らすことじゃな。」
(え、なにその選択肢、なんか裏がありそうで怖いんだけど・・・。)
「裏なんてないわ!」
(ごめんごめん、それでそっちの世界に行って何をすればいいの?)
「ん?特にすることはないぞ。好きに生きてよい。」
(話がうますぎるんだけどホントに裏ない??)
「だから裏なんて・・・・。もうつっこむのにも疲れたわい・・・。」
(なんか使命みたいなのとかないの??)
「使命がないわけではないのじゃが・・・。お主を転移させるとき、『ドラール』に足りなくなってきてる魔力を地球から補充するんじゃ。地球では魔力が使われてないからの。転移することが使命みたいなものじゃ。転移した時点で使命が終わってるといった方が正しいの。」
(なるほど、だからそんなにうまい話が出来たんだ。)
「どうじゃ?どれにするか決まったかの?」
(三つめが一番良さそうなんだけど、魔法がある世界なんだよね?)
「うむ、魔法がある世界じゃ。」
(戦闘とかあんまりしたくないんだけど・・・)
「大丈夫じゃ、転移者特典でそれなりのチートというもんを付ければ良いのじゃろう。わかっておる、わかっておる。安心せい。」
(いや戦闘そのものがもう懲り懲りなんだけど・・・。チートはいらないから丈夫な身体がもらえればそれでいいよ。)
「お主は無欲じゃの。本来はスキルを選ばせるのじゃが、今回は特別にこのわしがてきとーにスキルを見繕ってやろう。死なれても困るからの・・・。」
(いや、じゃあ選ばせてくれよ。)
「ほらこれと・・・・これじゃろ。お!これなんかもおもしろいの!ほいほいっとな!」
(爺さんなんか楽しんでない??心配なんだが・・・。)
「心配せんでも良い。お主が嫌がるようなスキルは付けておらん。まあ今は何を付けてか言わんがの!がっはっは!!」
(なんだこのじじいpart2。ぶっ飛ばすぞ。ほらこれも聞こえてるんだろ。)
「あー、聞こえん聞こえん。はいはい、そろそろ転移の時間じゃよ。」
俺の身体が光り輝きだす。
(ちょ、爺さん!まだいろいろと聞きたいことがあるんだが!あんたの名前も聞いてないし!)
「おおそうか、言っておらんかったな。わしの名は創造神ドラトナス。では杉野哲也よ、さらばじゃ!」
(まだ新しい世界のこととか聞きたいんだが・・・。)
俺は透けてきた身体を見て諦める。
「・・・爺さん。ありがとな。」
哲也の身体が完全に消える。
「ちゃんと喋れるではないか・・・。」
「さて配送の続きじゃ!まだまだ仕事が残っとるわい・・・。やっぱり働かせれば良かったかの??」
「・・・・・ん???」
目が覚める。今度は真っ白い空間ではない。辺りは緑に囲まれている。
「ここは・・・・・?」
こうして杉野哲也の異世界転移生活が始まったのだった。