【第一話】なんだこのじじい
初めての作品なので拙い文章ではありますが、是非見ていって頂けたらと思います。
「よしっ!また売れたぞ!!」
俺の名前は杉野哲也。
趣味はフリマアプリ『ドラカリ』。今もまた出品していた商品が売れたところだ。
「さっそく帰って商品の発送準備するか~。」
ホワイト企業に勤めているため、今日も仕事が定時で終わり帰路に就く。自宅近く、新築の駅構内を歩いていた。
少しばかり歩いていると前方に人だかりが出来ているのが見えた。
俺はその中に見知った顔がいることに気付き、何があったのかを聞くために声をかける。
「よっ、うえやん!これ何の騒ぎ??」
こいつの名前は上山拓海。小中高大同じ学校で・・・。まあ俗に言う幼馴染ってやつだ。
「おお、てつか。なんかおっさんが騒いでて通れないらしいぞ。この様子なら旧渡り廊下の方から帰る方が早いかもな。どうする?そっち行くか??」
旧渡り廊下はとてつもなく長い。それはもう、迷路に迷い込んでしまったかを疑いたくなるほどに。
「おいおい勘弁してくれよ、ここまで来て遠回りなんてしたくないぞ。」
俺はおっさんと渡り廊下を天秤にかけてみる。
「・・・はぁ、しゃーない。渡り廊下の方行くか。」
終わりの見えないおっさんより終わりのある渡り廊下の方が確実性があるとみて、しょうがなく渡り廊下を選ぶ。
「じゃあ行く・・・」
踵を返したその瞬間、言葉になっていない怒号と悲鳴が聞こえた。
「うわっ!なんだなんだ??」
その獣のような叫び声がした途端、おっさんを見ていた集団が歩き始めた俺たちを追い抜いて足早に去っていく。
「早く!君たちも早く逃げろ!!おっさんがナイフ取り出しやがった!!」
状況の掴めていない俺たちに、逃げているおじさんが教えてくれる。
「ナイフ!?まじでやばいなあのおっさん、てつ早く逃げるで!!」
言い終わると同時に目の前から消えるうえやん。さすがは元陸上部だ。
「よし、俺もさっさと逃げるか・・・。」
その瞬間、後ろの方から小さく可愛らしい悲鳴が聞こえた。
反射的に振り向く。その方向には小学1年生ぐらいの女の子が倒れている。
どうやら逃げている人に押されてこけてしまったらしい。足首が真っ赤に腫れている。
あれで歩くのはきついな。親らしき人物も見当たらないし、おぶってあげるか。
そう考えて近付こうとすると、気持ちの悪いおっさんがニヤニヤしながらねっとりと近付いてきた。
一目でわかる。明らかにやばいやつ。
案の定そいつがナイフを持っていた。
女の子は腰が抜けていてガタガタ震えている。逃げれそうもない。
じわりじわりと女の子とおっさんの距離が近付いていく。おっさんは鼻息を荒くして完全に女の子を狙っている。
辺りには女の子と俺とおっさんしかいない。
とてもまずい状況だ・・・。
(覚悟を決めるしかない!!!)
「はぁはぁ・・・今殺してあげるからぶふぇ!!」
俺はおっさんを刺激しないよう素早く静かに回り込み、死角からタックルを決める。
おっさんは倒れ、ナイフがカランカランと乾いた音を立てて床に落ちる。
俺はそれを見逃さずはずもなく、すかさずナイフを遠くの方まで蹴り飛ばす。
「よし、これでまずい状況は抜け出せたな・・・」
「大丈夫か!ゆっくりでもいいから逃げるんだ!!」
女の子が震えながら頷く。立ち上がり、捻った足を庇いながらゆっくりおっさんから離れていく。
おっさんがワナワナと震えながら立ち上がる。
「なにするんだてめえ!!!あのチビを殺し損ねたじゃねえか!!!ぶっ殺してやる!!!!!!!!!」
おっさんがポケットの中からナイフを取り出す。
「まだ持ってたのかよ・・・」
今逃げるとあの子がまた狙われるからなー。しょうがないけど仕事用のバッグを盾にしながら時間を稼ぐしかないか・・・。死ぬよりは怒られた方がましだからな。
そんなことを考えていると、おっさんがナイフをまっすぐ突き出して走ってきた。
「うお!あぶね!!!」
それを俺はバッグで受け止める。
おっさんはナイフを何度も突き刺す。
その度に増えていくバッグの穴。
「はぁはぁ・・・なんで・・・なんで躱すんだよぉ!!!」
「そりゃあ、死にたくないんで・・・」
(あの中には大事な書類もあったのに・・・。明日は残業確定だな。)
やけに冷静な頭でそんなことを考えながら、女の子がどこまで行ったか確認する。
女の子の方を見ると、俺がいないことを心配に思ったのかうえやんが戻ってきているところだった。
女の子を見てなんとなくの状況を察したうえやんは、俺に手を振ると女の子を担いで逃げてくれた。
近くでパトカーのサイレンが鳴っている。誰かが通報していたようだ。
「よし、あとは俺も逃げるだけだな。」
「死ねえぇぇぇ!!!!!!!!!!!!」
おっさんがナイフを刺してくるところをバッグで弾き落とす。
俺はナイフが吹っ飛ぶのを確認してから、背を向けてダッシュする。
俺と入れ替わりで警察官数名がおっさんの元に駆け寄ろうとしている。これはもう大丈夫だろう。
そう思った瞬間、俺は膝から崩れ落ちていた。
「な、なんだ・・・・・?」
膝から下の力が入らない。
警察官の怒号とおっさんの高笑い、他の警察官が駆け寄ってきたことで状況が掴めてきた。
おっさんがナイフを俺に投げつけ背中に命中したらしい。背中が燃えるように熱い。
「あんたはいつも詰めが甘い」
親から何度この言葉を言われたことか。
「てつ!!!大丈夫か!!!!!!」
「おお・・・うえやん・・・・・女の子は・・・?」
「迎えに来てた親御さんところ連れていけたよ、おまえに感謝してたぞ。お礼もするって言ってたから死ぬなよ・・・」
「無事ならよかった・・・。そう・・・だね。まだ商品発送してないし、死ねないよ・・・。」
「この状況でもドラカリの心配かよ、おまえらしいっちゃおまえらしいな。」
「・・・・・・・・・・」
「おい、寝るなよ!ほら救急車来たぞ!!てつ!!!!!起きろ!!!!!!!てつ!!!!!!」
・・・もうだめだ、反応出来る気がしない。短い人生だった。
女の子を助けれたと思うと悪い死に方ではなかったのかな。
商品を買ってくれた人には申し訳ないな。うえやん代わりに発送してくれないかな。
来世でもドラカリのようなフリマアプリを使って生きていきたいな・・・。
そこで俺の意識は途絶えた。
はずだったが・・・目が覚めた。
「・・・・・ん???」
「俺はたしか・・・帰宅途中・・・・おっさんに刺されて・・・・・。」
「あれ!?背中が痛くないぞ??死後の世界ってやつか???」
「ここはどこだ???」
辺りを見渡してみる。
真っ白な空間だが椅子や机があり、パソコンのようなものがずらっと並んでいる。
「さすがに病院では無さそうだな。」
「ん?向こうに誰かいるのか??」
奥の方でおじいさんらしき人物がせっせと段ボールを運んでいる姿が見えた。
「とりあえずあのおじいさんに話を聞いてみるとするか。」
「あの~、すみません。いきなりで申し訳ないんですがここは一体どこなのか教えていただけませんでしょうか・・・。」
おじいさんはこちらに気付くと、ハッとした顔をして奥にあった社長が座るような椅子に座る。
そして一言。
「おお 杉野哲也よ!しんでしまうとはなさけない!」
・・・・・なんだこのじじい。
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