王太子との邂逅
講堂までの広い通りをアンリと2人で歩く。
同じく講堂に向かう新入生たちは優雅に歩くティナーヴに見とれてしまっている。中には立ち止まっている人もいた。
服装で貧富の差が出ないように制服着用なのだがティナーヴは皆と同じものを着ているのに外見もさることながら内面からもにじみ出る品の良さは隠すことが出来ない為、嫌でも目立ってしまう。
注目されることに慣れていないティナーヴは普段なら慌ててしまってアンリに落ち着かせてもらったりするのだが、今は斜め後ろを歩くアンリが気になり見られていることに気づいていなかった。
学院に入学する前は無理を言って隣を歩いてもらっていた。
それ以外にも強引にお願いして最終的には呼び方以外は友達のように接してもらった。アンリは侍女らしくあろうとしていたのだがティナーヴは入学まででいいからとしつこくお願いして。
今も離れているわけではなく、すぐ後ろにいてくれるのに横にいないだけで何故か遠い人になったように感じて思わず小さいため息まで出てしまった。
浮かない顔をしてため息をしているティナーヴに気づいたアンリは
「ティナお嬢様。見てください。素敵な通りですね。正門から講堂までの大通りを学院の名と同じくアルヴィン通りと言うそうですよ。他にも歴代王族の名をつけられた通りがあるそうです。時間があればお散歩いたしましょう。」
明るく優しい声でティナーヴに語りかけた。
振り向いてアンリの優しいいつも通りの笑みを見て、彼女はどの位置にいようとも私のことを想ってくれていることが分かった。
なのに自分ひとりで辛い気になって落ち込んで・・・、隣に居ようが斜め後ろに居ようがアンリはアンリで普段と変わらないことに気づいた。
「そうね。楽しみだわ。」
いつも通りのティナーヴに戻り、笑顔で返した。
いつも通りになると注目を浴びていることに気づいてしまい、アンリになだめられながら講堂まであと少しのところまできた。
何か他と違う視線を感じティナーヴが何気なく横を向くと、その先に金髪で青い目のとても美しい青年が目を見開いて立っていた。
アンリがティナーヴの前に庇うように立ち、警戒している。
そのままティナーヴを連れて講堂へ向かおうとするのを青年は慌てて引き留めた。
「君はもしかしてアルヴィン侯爵家の令嬢ではないだろうか?」
「なぜ、わたくしをご存知なのでしょうか?あなたはどなたでしょうか?」
ティナーヴは自分のことを知る異性がいるとは思わなかったので心から驚いて問い返した。更に相手の青年は全くわからないのに相手は自分のことを知っている。何故なのだろうか。
「貴族の人間でアルヴィン侯爵令嬢のことを知らない者はいないよ。私も何度もディオルに会わせてもらえるように言っていたのだがとうとう今日まで会うことが出来なかった。
私の名前はスチュアート・アル・アルヴィンだ。」
今度はティナーヴが目を見開いた。アルヴィン、この国の王太子殿下だ。
「そうだったのですね。改めましてティナーヴ・アル・プレイシャスと申します。よろしくお願いいたします。」
少し慌ててしまったが名を名乗りお辞儀をする。
「あまりかしこまらないでほしい。ティナーヴというのか。良い名前ですね。ティナーヴ嬢とお呼びしてもかまわないかい?」
「どうぞ、かまいませんわ。」
まさか、最初に言葉を交わした異性が王太子殿下だとは・・・。ティナーヴは動揺をなるべく隠して平静を保つのが精いっぱいだった。
スチュアートが話しかけてきた時点で諦めてアンリは後ろに下がったがティナーヴと話している間ずっと前髪で目は見えないが鋭く彼を睨みつけていた。
スチュアート殿下の登場でメインの登場人物が一応出揃いました。